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秀頼はソファの前に座って、

早速優子が使っていた授業資料に

目を通し始めた。


背中に挟んだクッションに寄り掛かり、

あごに指を当てて資料を読むその姿は、

あまりにも様になっていた。


それはまるでドラマのワンシーンのように…


「おい」


「…はい?」



優子はうっとりするのをやめて

小走りに秀頼の隣に駆け寄った。


秀頼が少しずれて空けてくれたスペースに、

飼い主に懐く猫のように座り込んだ。


「ちゃんとやってるじゃないか」


優子の文字で書き込んである資料と、

文字が敷き詰められたルーズリーフを

交互に見ながら、秀頼が言った。



「間質性肺炎だってちゃんとしてある」


「だから、大丈夫ですってば」


「じゃあどうして答えなかったんだ?」


「唐突でびっくりしたからですよ!」



「ふーん?」と言いながら

また秀頼の表情が和らいだ。


こうも間近で見ることが新鮮で、

思わず引き寄せられてしまいそうだ。



「近い」


「あ、すみません…」

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