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「それで?とは?」


「呼吸器の勉強は進んでるのか?」


「あ、さっきまでずっと消化器してました」



イレウスの種類が多くて~…と笑う優子に

秀頼はまた一つ大きなため息をついた。


そしてマグカップを片手に立ち上がった。



「やるぞ」


「はい?」


優子が首を傾げて見上げると、

いつも以上に冷ややかな目が降り注がれた。



「特別に教えてやるから」


「え、でも、先生もお仕事が…」


「いいから。

 俺の患者が呼吸器で再試なんて

 ごめんだからな」


「大丈夫ですよ、今からやりますから。

 お仕事の邪魔はできません!」


慌てて優子が立ち上がると、

マグカップの中身が激しく揺れた。



秀頼は口元に小さな笑みを浮かべて言った。



「間質性肺炎で聴取される副雑音は?」


「…え?」


「はい、5、4…」


「待って待って!なんですか⁉」


「3、2…」


「ちょっ、先生?」


「1…はい、お勉強決定」



秀頼は持っていたマグカップを

優子の額にコツンと当てた。


そして片手で眼鏡をかけて

ソファの方に向かってしまった。


優子の頬が、ほんのり赤くなったことに

気づくこともなく…。

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