p.5

街から少し離れた高台にある、

東都南大学病院。


藤原秀頼ふじわらひでよりは、そこで勤務する呼吸器内科医だ。


そして、隣接する東都南大学の看護学部で

看護師になることを目指しているのが、

隣に座る、水城優子みずきゆうこ


今年2年生になった優子は、

現在試験期間真っ只中だった。



「呼吸器、私一番苦手です」


優子のその言葉に、思わずゴホッとむせた。


「…ッ、なんだと?」


「な~ぜか全然覚えられないんですよね。

 根本的に理解していないから

 だと思うんですけど」


「根本的に理解しなさい。

 気道と肺しかないんだから」


「それができないんですよ!

 苦手意識があるんでしょうね~」


「でしょうね~じゃないだろ。

 喘息なんて、むしろ得意分野じゃないのか?」


「それはまぁ、そうですけど…」



秀頼がそう言うのには、

もっともな理由があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る