焚べられ少年、ほんわか農家
@hukussnn0810
第1話
もう数日で雪が振ろうかとゆうある日。
少年は煤に塗れた姿で、寝転んでいた。
いや、正確には左腕が炭化し全身に大火傷を負った状態で、か。
オルシディア王国の王都オルシディス、オルシディスの西端の一角での話。
どこにでも普通にある話、よくある悲劇。
少年は貧しい家に産まれた。
最初から産まれるべくして産まれてなど居ない、貴族が仕込んだ種が、たまたま気付かれる事もなく降ろせないような大きさまで育ってしまっただけの、哀れな少年。
他の子供より成長が遅く、体が小さかったがゆえに起きた悲劇。
生まれてしまっては仕方ないと育てられてはみても、やはり愛されることなどあるはずがない。
穀潰しがひとつ増えただけ、それだけでも大きく家計を圧迫した。
そして5歳の時、妹が産まれてしまったせいで、あっさり奴隷にされてしまった、実に呆気なく、家族の情も少しはあるだろうと信じたがった少年には残酷なほど、ただ埃を集めてゴミ箱に捨てるのと変わらない顔で。
女の子なら、まだ幼女趣味の変態貴族に売れるだろうとか、そうゆう考えがあったのだろうが、少年には関係の無い話だ。
捨てられた少年の扱いは酷いものだった、奴隷と言ってもピンからキリまである。
環境の良い奴隷商と言えば貴族向けに建てられたものだろう、健康に気を使い、できる限り綺麗で色気のある程度には肉付きのいいどれ位が求められる、目が死んでいてはいかに顔や体が良くてもなかなか売れず、そのため彼らは絶望することが許されない、それはそれで生き地獄ではあるものの、環境だけを特筆すれば悪くなかろう。
少なくともその辺の平民と同程度の生活はできる。
ただ、少年はそんな高尚は所には売られなかった。
大通りを三本ほど超えた、誰も通らない裏通りの、奥の奥にある、寂れた奴隷商。
彼はそこに銅貨2枚、小さな小麦のパンが4つ買える程度の値段で売り払われた。
顔も頭も悪くは無いけど、環境が悪ければなんの価値もなかったのだろう。
少年は叩かれた、奴隷1人食わせるのも大変な寂れた奴隷商でまともな食事など期待できない、やたらとやせ細った子供や体の欠けた大人の多い小さな小さな地下室で、肩寄せあう友もいぬままに、生かされ続けた。
そして2年ほどで、少年はとある夫婦に買われた。
銅貨6枚だった。
買われた少年は、それ以降それまでも少なかった食事にあり付けなくなった。
与えられなくなった、とかでは無い。
むしろ勝手よりふんだんに食事を与えられた。
でも取られるのだ、飢えた他の奴隷に全部。
少年が買われたのは、飢えて仲間を蹴落としてただ生きる為だけに必死な、哀れな子供を見て興奮する、そんな変態夫婦の家であった。
生存競争に敗北した少年は惨めなものだった、いや元々惨めではあったが、部屋の隅を走る虫なんかを掴んで食べ、溜まった埃を胃に流し込み、あま漏れだけが唯一の飲水、そんな生活だ。
それでも少年は1年生きた、でもそれら数少ない資源も、いつしか見つからなくなる。
虫だって食われたくない、雨だけば今になってもたまに入ってくるが、胃に入れられるものが埃しかないのでは生きれるはずもない。
飢えて倒れて、少量胃に残った雨水を泡にして吹き少年は倒れた。
そんな少年を、夫婦はつまらなそうに見ていた。
そして、外が寒くなっていることに気づいた、いや、もともと死にかけた子供をこうしてやろうとか決めていたのかもしれないが、夫婦は秋も終わりかけ冬になろうとする寒い部屋の中、干からびた様にカサカサの肌になった少年を、少しだけ憐れむように見下ろし、その軽い体をヒョイと掴みあげた。
掴みあげると、そのまま煤で埋もれた汚く小さな暖炉に放り込む。
火をつけて、暖を取ったのだ、ほのかに香る鉄の匂いと、その光景に恐怖で泣き出す子供たちを楽しみながら、薄笑いを浮かべて。
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