見合う二人
隅田 天美
第一話 の前に
聖書は説く。
混沌たる闇の中で神は言った。
『光、あれ』と。
その言葉とともに宇宙が生まれた。
--だと、すりゃあ、俺は光を抱いているんだな……
薄暗い、ほのかにピンク色の部屋で二メートル以上の巨体でも耐えうるキングベットで平野平秋水はぼんやり考えていた。
彼の巨体の上には、先ほどまで一糸まとわぬ姿で乱れに乱れていた女が気絶して目を閉じていた。
小柄なながら大きめの胸が傷だらけの胸板に当たる。
快楽だけでいえば、秋水が傭兵をしていて頃のほうがインパクトは大きい。
致死量近くの薬物を飲み、一晩中、快楽に浸り、精をぶちまけたこともある。
だが、心は荒んでいた。
戦場すら虚無を覚え、一時帰国で、今、腕の中で眠る女、長谷川綾子と知り合い、恋をし、愛し、一夜を共にした。
彼女はまだ高校生で男を当然知らなかった。
だから、丁寧に、かつ慎重に散らした。
驚いた。
『女と性交渉する』ということが、これほど豊かで穏やかなものだとは、その時まで想像すらできなかった。
--あたたかい
--安心できる
--嬉しい
言葉にはできない感動を文字通り体で実感した。
まさに干上がり裂け目のできた大地に慈雨が染み渡る様に秋水の心を潤した。
やがて、平野平秋水と長谷川綾子との間に子供が生まれる。
現在、二十四歳になる大学二年生の平野平正行である。
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