第6話 風に乗って山の中へ
祭りでの騒動を後にした妖精は、強い風に乗って港町を離れ、どんどん遠くへ飛ばされていった。下には広がる田畑や森が見え、夜空の静けさが心地よく感じられる。妖精は風に身を任せ、漂い続けていた。
「次はどこに行くのかな? 風まかせだと何が起きるか分からなくて面白い!」
そう思いながらも、妖精は少し眠くなってきた。風に揺られる心地よさに、彼の瞼はだんだん重くなり、気づいたら眠ってしまっていた。
どれくらいの時間が経ったのか。ふと目を覚ますと、妖精は風の勢いが弱まり、ゆっくりと地面へ降りていくところだった。辺りは深い森。木々が生い茂り、静寂に包まれている。
「ん? ここは……どこだ?」
妖精は森の中に降り立ったことに気づき、周囲を見渡した。しかし、森の中はとても静かで、人の気配はまったく感じられない。彼はふわふわと浮かび上がろうとしたが、風が止んでしまい、再び地面にポトリと落ちてしまった。
「困ったなあ……また風待ちか……」
妖精はしばらくじっと待っていたが、森の中はほとんど風が通らないようで、動ける気配がなかった。仕方なく、彼は地面の上を転がるようにして進むことにした。森の中を転がりながら、妖精はさまざまな植物や動物たちに目を向ける。
「へえ、こんなにたくさんの生き物がいるんだな……」
その時、小さな動物たちが妖精に気づいて寄ってきた。リスや小鳥、そして森の虫たちが妖精を囲み、不思議そうに彼を見つめている。
「おお、君たちも遊びたいのかい?」
妖精はニヤリと笑い、近づいてくる動物たちにちょっかいをかけ始めた。リスの尻尾をふわっと動かしたり、小鳥の羽を軽く揺らしたりと、またしてもいたずら心がうずいてきた。
「きゃはは! みんな驚いてるな!」
リスたちは驚いて木の上に逃げ、小鳥たちは木陰に隠れてしまった。妖精はそんな様子を楽しんでいたが、ふと気配を感じて背後を振り返ると、大きな黒い影が森の奥から現れていた。
「うわ、なんだこれは……」
その影は大きなクマだった。森の王者ともいえる存在に、妖精は驚きの表情を浮かべるが、同時にいたずら心も沸き上がってきた。
「これは大物だな……どうやって驚かそうか?」
妖精は、クマに近づき、そっとその大きな背中をふわりと揺らしてみた。クマは突然の感触にびくりと動いたが、誰もいないことに気づいて不思議そうな顔をしている。
「ふふ、もう一回!」
妖精は今度はクマの耳元に風を送り、少しだけくすぐった。しかし、その瞬間、クマは大きな声で唸り声を上げ、あたりに響き渡った。
「やばい、怒ったかも!」
妖精は慌ててその場を転がって逃げ出したが、クマは何も感じていないかのように、再び静かに森を歩き出した。妖精はほっと胸を撫で下ろし、木陰に隠れて様子を伺った。
「ふぅ……危なかった。でも、やっぱりいたずらって楽しいな!」
妖精は笑いながら、再び風が吹くのを待っていた。そして、しばらくするとようやく微かな風が吹き始めた。
「よし、今だ!」
妖精は風に乗って再び空へ舞い上がり、森を後にした。新たな冒険が待つ場所へと向かいながら、次はどんないたずらをしようかと考えていた。
「次はもっと大きな騒ぎを起こしてやるぞ!」
そうつぶやきながら、妖精は風に乗って次の目的地へと飛び去っていった。
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