瑞々しいことば
海野わたる
見せるためのことばではないもの
自分の心に残る言葉は、生き生きとした日本語である。名言はもちろん好きだが、創作の登場人物が披露する名言は大抵心に残らない。飾り付きの言葉はいらない。一体一で話しているのに、スカしたようなことをいうやつは好きになれない。会ったこともない偉人の言葉を説教臭く話すのはくだらない。
わかってくれるでしょう。ちょっと自分をよく見せようと頑張る子より、どこかわがままで、愚痴も言って、機嫌がいいときはたくさん笑うような子と一緒にいたいと思いませんか。アイシャドウも口紅も付けなくったってその子の魅力は変わらない。
いずれにしても、 僕は、友人や家族、恋人に本音で話してほしいのだと思う。婉曲表現もユーモアが効いていれば好きだが、本当に伝えたいことは正面から話して欲しい。
警備員でバイトしていた時、アルバイト先の、頭でっかちで口うるさいおっちゃんに言われた、「知識はかさばらんけえ。」という言葉。語尾に「けえ」とつく広島の訛りで、「かさばる」という単語も、何とも埃のかぶったような日本語だが、これから一生忘れないと思う。
その人の性格や気質、人生の轍がこもっているように思えて、同じような教訓の言葉は何度も聞いたことがあるが、彼だけの言葉だった。その言葉は正に生きていた。
一心に伝えようと、本心からでた言葉には価値がある。装丁は汚れていても構わない。偉人の言葉のコピー品では誰も耳を貸そうとは思わない。
本音で話せないやつはいくじなしだと、どこかで思ってしまう。もちろん伝え無くていいことや、悪口でも言ってしまえ、と声を挙げたいわけではない。
わかった風なことを言わず、自分をよく見せようとせず、とことん自分の言葉で話したいし、暮らしを共有する人にもそうして欲しい。もちろん強制はしないし、そうでなくても大好きだけど。そうあればいいのになあ、と思うくらい。
瑞々しいことば 海野わたる @uminowataru
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