ディスカバリー作戦
五月山 明夫
第1話 ヴァニー・J・ハーグ
男は戸惑っていた。連合宇宙軍のSF(スペースファイター)パイロットのヴィニー・J・ハーグ中尉に下され命令は、不可解なものだった。彼の率いる編隊と共に、ネビュラ級宇宙空母アトラスに乗り、木星圏への派遣であった。連合軍では、旧時代の米軍の色が強く、空母に艦載されるのは海軍機(とはいっても、宇宙には海がないが、前時代からの分類上そう呼ばれている。地球にいる海軍とは別の組織である。)であって、ヴィニーのように、月や火星の地上基地、それらの人工衛星に置かれるのは空軍である。月面のグラビウス基地に所属する空軍パイロットの彼に、このような命令を受けた経験はない。そして、もう一つの要素に、ヴィニーは、より違和感を感じていた。それは、作戦の目的地が木星圏であるということだ。そこには、資源採取や、調査と資源採取を行う開発団が居るだけである。そのようなところに、空母と巡洋艦でむかうなど、あまりにも過剰である。東側の大きな動きも見られないし、命令書にあったのは「開発団の調査」のみである。この戦力でいったい何を調査しろというのか。彼は頭の中に浮かんだ、武装蜂起の文字を追いやり、休むことにした。それでも疑念は消えなかった。
「なにかあるな」
とにかく行ったら分かることだ。命令が出た以上従わなければならない。ヴィニーはこれ以上あれこれ考えるのをやめた。
火星の赤道直下第三マスドライバー
アトラスに搭乗したヴィニーの小隊は落ち着かない様子だった。空母に乗ることなどなかった彼らなのだから仕方ないであろう。
「隊長、これが俺達の機体ですか?」
チームのムードメーカーのマイケル・ハワード少尉が一番に声を上げた。ハンガーに集まった彼らは、乗ることになるであろうSFを始めて目にした。"XF-2B"スターランチャー、第二世代型のSFである。空軍で使用されている"XF-1"ギャレフリーよりも先鋭的になり、小型の宇宙船のような見た目だったものから、「戦闘機」然としたものになっていた。海軍機ということもあって空母からの離着艦に適したものになっているのだろう。だが、彼ら5人の編隊に対して、それは4機しか用意されていなかった。近くにいた技師にも聞いたが、詳しいしいことは、彼らも知らないようだ。ますます、ヴァニーの、この作戦に対する疑念は大きくなった。
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