ボクら廻る

@oinari10ma10

第1話 境目

 千九百二年、とある高校に巨大な生物が降ってくるという奇妙な事件が起きた。加えて、その巨大な生物は鯨のような見た目をしながら、所々に猫や犬、ハムスターのものだと思われる部位も存在している。この事件は未解決事件として処理され、今も解明、解決には至っていない。この事件をきっかけとして、国にはキメラの様な不可解な生物が多く発見されるようになる。国直属の機関はその奇妙な風体から、キメラ体を「ウィアード」と名付ける事にした。


 その事件から約二年、少年は憧れ続けた高校の門へと足を踏み入れようとしていた。少年の名は皇竟。少し童顔な顔つきに黄色がかった癖のある髪が特徴的な好青年だ。


 彼も二年前の事件の被害者であり、高校の近くにあった家は跡形もなく吹き飛んでしまった。家族に被害は無かったものの、ウィアードにいい気がしないのは当然だ。

 

 そこで彼は、ウィアードに対抗しうる人材ーー通称、ウィアード討伐隊員を創り上げる為のプロジェクトを始めた、この「高天原高校」に入学することを決意したのだ。


「君、新入生だよね? 部活に興味ある?」

 後ろを振り向くとどこか薄っぺらく感じる笑顔を貼り付けた男が立っていた。高天原高校の制服を着ている。


「新入生だよねって、今日入学式だぞ。新入生以外立ち入り禁止。他に何があるんだ」

 男の掴みどころの無い立ち振る舞いに警戒し、皇は強めに返答をする。男は手厳しい、と冗談っぽく言うとニヤリと笑い手を叩いた。


「いやぁ、実はね、ボク高校三年生なんだ。新しい部員探しにここまで乗り込んできちゃったんだけど……。キミ、いいね」


 どこか大人びているかと思えば、まさか年上だったとは。あからさまに動揺する皇に男は苦笑していた。


「別に気にしなくていいよ、ボクが悪いんだし」

 優しく皇にそう声をかけると、男は学校とは反対へと歩いて行った。頭のいい奴ほど頭のネジが壊れてると皇は思い込んでいるが、あながち間違いでは無いのかもしれない。


 不安を胸に抱きながら、皇は学校へと歩き始めた。

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