迷宮《ダンジョン》は歌う
山茶
プロローグ
プロローグ
『私たちの宝』
「ねぇ、父ちゃん」
「ーーーーーーーん?なんだ?」
暖炉の火が弾け火花が空に舞い消えた。
外は雪が積もり厳しい冬が訪れている。少年は窓に息をふきかけ白くなったガラスに可愛らしい絵を描きながら問いかけた
「えいゆーってどうやったらなれるんだ?」
そんな幼い息子の質問にフッと白い息と共に椅子が軋み笑みが零れる。
少し父は考え視線を少年から暖炉へと落とす。
「そうだなぁ、アルは英雄になりたいのか?」
「うん!」
食い気味に答える少年。
「そうかぁ、英雄にかぁ」
「だってかっこいいじゃん!父ちゃんがよく寝る前にえいゆー話を聞いてると俺いつもいい夢をみるんだ!だから俺もえいゆーになって父ちゃんや母ちゃんを守る!」
鼻息を荒くし、少年は大きく誇らしげに宣言した。
「そうか、アルが英雄様になってくれるなら父ちゃんも母ちゃんも安心だ」
幼い息子の夢物語
それは有り触れた夢のお話
王であれ貴族でも庶民、奴隷誰にでも等しく唯一平等に与えられた極めてごく普通の権利。
初めての息子。愛しい我が子の夢。
あぁ、なんて美しいんだろう。なんで愛らしいのだろう。最初は父になることにどれほど自信が無かったのか。
そんなことどうでも良くなってしまうほどに我が子の成長を見守ることは楽しいことだ。幸せなのだ。
「アルーー、あなたーー、ご飯が出来ましたよーー」
呼ばれた方向に向かい2人は椅子から立ち上がり
飛び降りて歩く。
「今日はアルが5歳になりましたからね、奮発してみました」
「うおおおぉーー!母ちゃん!コレ!肉!いいのか!今冬だよ!びちく?とかいつもムダはダメだって俺に言ってくるじゃん!」
食卓に広がるスープにステーキ、みずみずしく青々とした野菜に思わずテンションが上がる。
「いいんですよ、今日はあなたの誕生日じゃありませんか」
「しっかり食べて大きくなったら英雄様になって俺たちを守ってくれよ」
息子の健やかな成長を願い、そんなに偉大になるとかではなく、ただの1人の
そんな普通の生活ができることを祈ってるよ
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