ティーンエイジブルー
功琉偉つばさ @WGS所属
身勝手な僕ら
僕たちは本当に身勝手だ、いや、僕は本当に身勝手だ。
後先考えずにただ、前に向かって走ってる。立ち止まって後ろを振り返ることもせずに走っている。
進んでいる向きなんて気にしない。そう、ただどこかに向かって走るんだ。なにも考えてはいけない。考えてしまったら思い出してしまうから。
◇◆◇
僕はこの気持ちをずっと胸の奥に閉じ込めていた。
腫れ物みたいに、この気持ちがなくなったらどれだけ良いかと思いながら、胸の奥に閉じ込めていた。
春に咲く桜のように、夏の暑さのように、秋の紅葉のように、冬の雪のように・・・・・・
なければこんなに苦しくはなかっただろう。いつかは消えてしまう。そんな儚さがずしっと心に重くのしかかる。
忘れてしまおうと何度も思った。でも、忘れるなんて無理だった。だから自分を思いから何度も遠ざけた。
でも、ついつい思い出してしまう。なにも考えていないときとかにふとやってくるし、音楽を聞いたり、小説を読んだり、写真を見たりするとこの思いは出しゃばってくる。そして、思い出すたびに苦しくなる。
「どうせ・・・・・・いつかは・・・・・・」
「結局・・・・・・なるなんて夢だったんだ」
「・・・・・・ことは僕には起こらない」
なんて自分の心に対して言い訳ばかりして、そして無理に諦めさせてきた。そうしないと溢れてきてしまうから。
自分の心に嘘を付くのはすごく辛かった。でも、そうするしか他に方法がなかっんだ。
そう思いながらまたこの思いを心の蔵に入れる。そしてしっかりと鍵を閉める。何重にも何重にも。
もう、開けれなくてもいいと思いながらしっかりと鍵を締めて、鈎を大海原へと投げる。
でも、この思いは蔵から出てきてしまう。もう、閉じ込めることなんて出来ないんだ。
◇◆◇
君はどう思ってたんだろうか。こんな僕のことを。完璧でない僕のことを。
「完璧な人間はこの世界にはいないんだから」
そう思って君に近づきそうになる。そして、君の髪や瞳をみるだけで一気に自信がなくなる。
勇気がほしい。自身が欲しい。思い切りがほしい。こんなふうに神様にも仏様にも、サンタさんにも頼んだ。
でも、そういうものって自分で身に着けないといけないものだってとうの昔から知っていた。
君には僕よりふさわしい人が居るだろう。だってこの世界には何十億人と人間が居るのだから。
でも、そう思うたびに僕の心はもっと痛くなる。ガラスの破片が刺さったみたいに、炎に燃やされているみたいに、痛く、苦しくなる。
自分を諦めさせることって本当に辛いことなのだと知った。
表面上ではいくらでも諦めることは出来る。だって苦笑いして平気なふりしていれば良いんだから。
でも、心のなかでは憤りや怒り、悲しみ、悔しみがこみ上げてくる。この負の感情を閉じ込めているのが一番大変なんだ。
忘れようとしてベットに潜る。たいして眠くもないのに寝て忘れようとする。でも、寝ようとしてなにもしていない間に人間の想像力って覚醒されるものだ。
目を閉じると、君の風になびいて、太陽に輝く髪、光が反射して世界で一番きれいとも思える瞳、どこまでも透き通った笑い声、そんな君が居る何気ない日常・・・・・・
そんなものが現実よりも鮮明に思い出されてくる。
◇◆◇
時が経つと、この気持ちは色褪せるんじゃないかと思った。そして、君とは会うことが無くなった。
でも、この気持ちは色褪せることはなかった。いつまでもいつまでも、僕の心のなかで暴れようともがいている。その気になれば心の蔵なんて一瞬で破壊できるような力をも持っていた。
青い春の思い出も、黄色い夏の思い出も、赤い秋の思い出も、白い冬の思い出も・・・・・・
毎年毎年、四季は繰り返す。そして、色は消えることがない。
「もう無理だ」
そう思った頃には走り出していた。なにもかも忘れて、ただ身勝手に走っていた。どこかを目指しているわけでもなく、宛があるわけでもなく、駆け出していた。
この小さな地球の上で、この大きい空の下で僕は走っていた。
なにがあってこうなったのかなんてもうわからない。でも、君のことをどうしても忘れられない。
たった二文字の言葉を伝えるだけなのに、こんなにも月日が経ってしまった。
「やっぱり僕はまだ青いな・・・・・・」
どれだけ走ったかわからなくなってきた。 でも、太陽が沈んできたことだけはわかる。
そして、一回深呼吸をして前をしっかりと見てみると、神様が巡り合わせてくれたかのように、いつの間にか君が眼の前にいた。
そしてなにも考えずにこの思いを口に出していた。
「・・・・・・・・・・・・」
◇◆◇
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