ゲームでチートを使うとどうなるのか?

「ああ、また負けた……てかさっきチート使ってなかったか?前に敵がいたのに弾見えなかったんだけど……」


『残念でちた〜ww俺と同じサーバーにいたのが運のちゅきでちたね〜www』


「しかも煽ってくんのかよ……まあいい。次にこいつと当たる確率は低いだろうからな」


レイはいつも通り、部屋でFPSゲームをしていた。しかし、ここでチーターが湧いていて、嫌悪感を向けずにはいられなかった。


「仕方ない、次の対戦でも行くか……」


レイはそのまま次の対戦をする。しかし、その大戦でも今度はHP満タンの状態から弾を打たれて一撃でHPが0になって脱落してしまった。


「今度は一撃で即死かよ……このゲーム、たまにチートが湧くんだよな……にしても2回連続でチーターと当たるなんて俺も運が悪すぎんだろ……」


頭をポリポリとかき、床を悔しそうに叩きながらそういった。その様子をメリヤは見ていた。


「レイさんレイさん、チーターってなんですか?あの走るのが速い猫の仲間のことですか?」


相変わらず天然すぎるメリヤにレイはしばらく黙って何も言えなかった。


「そっちのチーターじゃない。チーターっていうのはゲームで不正行為をしたり不正なソフトを使ったりしてゲームを有利に進めようとする奴のことだ」


「そんな人たちがいるんですか?でも……ゲームをそれで楽しめるんだったらそれでいいじゃないですか!そんなことをしてまで自分なりに楽しもうとする人間さんも可愛くて好きですよ!」


(もうこいつ人間に向かって夢見すぎだろ……こいつだったら人殺しても肯定しそうだな……)


相変わらずポジティブな考え方をするメリヤに、レイは戸惑うことしかできなかった。


————


「ということがあったんだよ。お前たち、ちょっとチーターに対してどう思う?」


「そりゃあ許せねぇだろ。俺はゲームしてるより本読んでる方が好きだからなんとも言えねえが、人の趣味をダメにしておいて一人だけ笑ってるやつの気がしれねえ。もっと円滑なゲームプレイとか考えられねぇのか?」


「そうよね。私も大体シュウヤさんと同じ意見。そういうのってゲームを動かしてる人がBANしたりとかしてくれないのかしら?」


「確かに俺たちの力でネットの先の人間を懲らしめることはできない。チユトが何ができるかわからないのは置いておいてな。だからそういう意味ではネットがBANするのが一番手っ取り早いんだろう」


「ヒィッ!やっぱりチートを使って他人の幸せを奪う人って悪いから怖い……」


「悪いけど何の害もないタイプのやつだぞ。同じゲームやってるやつ以外には」


レイがキョウカを宥める。しかしその横からケーイチが割り込んできた。


「でもさー、俺たちってゲームじゃないけど現実世界でチート使ってるようなもんだよね?大多数の人は能力なんか持ってないわけだし」


「そんなこと言うな。冷めるだろ」


「あはは、ごめんごめーん」


こうして、チートに対する対策会議が続いた。結果としては、なんとか外部の助けも借りるという方針で行くことになった。


————


「あの、メイカちゃん」


ナオカは『ジェンダーチェンジャーII型』を以前貸してもらった友達のメイカに頼みに来ていた。


「なーに?」


「私の仲間がゲームでチーターに悩まされてるんだけど、どうにかしてくれないかな?メイカちゃん、前に色々作ってくれたから機械は得意だと思うんだけど」


ナオカがメイカに頼ると、彼女は二つ返事で了承してくれた。


「うん、得意だよー!だって私は発明家だからねー!でも具体的に何が欲しいの?」


「チーターの位置を特定するアプリとか、作れる?」


「ちょっと待っててねー!2日くらいかかるよー!」


そのままメイカは意気揚々と開発に取り掛かったという。ナオカはその時の笑顔を見ていい気持ちになった。


————


2日後、またレイはチーターに悩まされていた。


「このゲームチーター湧きすぎだろ……もう色々とやめたいよ、俺。でもゲーム性とかは面白いんだよな」


ため息をついているレイの横に、ナオカが現れる。


「レイ、これを使って。これはゲームのアカウント名とゲーム名を入力すると、そのアカウントのゲーム機がある場所を特定してくれるツール『特定マシーン』」


「サラッととんでもないモンを生み出すな、お前の友達。まあ背に腹は変えられないから使ってやるけどな」


そう言ってレイはゲームで自分を倒したアカウント名を入力する。


「SaikyouGod99999……っと。なんて頭悪い名前なんだよ、自分で言っててなんだけどさ」


そのまま画面に地図が表示される。ここから500mほど先、まだこの街の圏内のところにそのデバイスが表示された。


「なるほど、ここにあるのか……ちょっとシュウヤ呼んできてくれる?あいつのテレポートで俺を搬送してほしい」


「わかった。私は一人でこの場所に行けるから、先に行ってるけど」


そのままナオカは猛ダッシュで外に行ってしまった。相変わらずの高スピード(チーターと同じくらいらしい)にレイは苦笑いすることしかできなかった。


しばらくすると、シュウヤが入ってきた。相変わらず苛立った表情だった。


「おう、来賀に呼ばれてきたけどよ、テメェ……俺に転送してもらいたいんだったな?」


「ああ、そうだよ。俺にチート使って挙句煽ってきたやつに復讐したいんだよ。ナオカもそこに行ってるらしい」


「わかったが、座標わかんねぇと飛ばせないぞ?」


「ああ、それならナオカの友人が作った機械に載ってる地図を参照すれば飛べるぞ」


そう言われたのでシュウヤは特定マシーンの地図に載っているSaikyouGod99999の位置をチェックする。


すると渋々了承してくれたようで、慌てて勇者の剣を取り出したレイごと自分をそのゲーム機がある一軒家の敷地に転移させた。


そこにはすでにナオカが到着していた。どうやらレイとシュウヤのことを待っていたらしい。


「ここにあのチーターがいる。だから私たち3人で一緒に倒そう」


そのままレイたちは一軒家の中に入る。その中はゴミ屋敷と化しており、悪臭が漂っていた。


シュウヤはゴミに触りたくなかったので、サイコキネシスを使ってゴミを退ける。ついでにドアも開けておいた。


その奥にいたのは、ガンを飛ばすような顔つきの女性。意外にも女性だったことに驚いていた。


「まさかお前がSaikyouGod99999か?」


「そうだけど、何か?まさか私がチート使ってるの止めに来たわけ?」


「あっさり白状するんだな。まぁでも、チート使われるってのがどんな気持ちか教えてやる」


ナオカはSaikyouGod99999からゲーム機を取り上げると、それを掴んで粉々にしてしまった。


続いて、レイはテレビに向かって聖剣を振り下ろす。すると、テレビは一刀両断される。


最後に、シュウヤがサイコキネシスを利用してパソコンを持ち上げると、それを打ち付けて破壊してしまった。


「あ、ああ……どうしてこうなったの?」


「これが、お前が俺や他のゲーマーたちにしたことだ。わかってくれたか?これに懲りたら二度とゲームでチートなんか使わないことだな。お前のことは通報しておいたぞ」


「ご、ごめんなさい……」


目には目を。歯には歯を。そしてチートにはチートを。


レイたちは彼女を警察に通報して、いち早くテレポートでその場を去った。例は心なしかとてもスッとしていた。


————


「メリヤ、チーターは無事警察に通報したぞ」


「まぁ、人間さんのことですからちゃんと更生してくれるでしょうね」


「チート行為は最悪法に引っかかるからな」


レイの言う通り、ゲームでチートすると犯罪になることもある。


ゲームは著作物であるため、そのプログラムを書き換えるチート行為は同一性保持権の侵害として罰せられる。


また、刑法234条『電子計算機損壊等業務妨害罪』に抵触する可能性もある。読んで字の如く、コンピュータに対してハッキング等を用いて虚偽の情報や破壊などで影響を与えることで業務を妨害した際に罰せられる法律である。


「まぁ、あんなもんスポーツでドーピングするようなものだろ」


「……そう考えると一刻も早くなくなればいいですね。人間さんにも時々、悪いことをする人がいるのは知ってます。それでも、メリヤはその人間さんたちが一刻でも早く罪を償えることを信じてますよ!」


「相変わらずお前の楽観的に考える癖は変わらないな。まあ、だから俺も少し元気になるのも事実だ」


「さて、ゲームでもするか」


レイは再び同じゲームをした。

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