道化師カーツのものがたり

まーくん

プロローグ

1万人にひとりといわれる不遇職『道化師』




この世界の住人は10歳になると誰もが等しく『職業スキル』を与えられる。そしてそれは彼等の一生を決めてしまうほどの力を持つ。


鍛冶師の職を告げられた者は火の精霊に愛され、鍛冶師としての卓越した能力を与えられる。


戦士の職を告げられた者は、卓越した剣技の素養を持ち、冒険者や騎士として大成する者が多い。


このように職業スキルにより自らの進む道が決められた後は、本人の努力次第でその能力は大きく成長するのである。


そのため、この世界においては、10歳で与えられたスキルで将来の職業を決定されてしまうのであった。



不遇職『道化師』


その職業についてはほとんど知られていない。


『道化師』を告げられる者自体が非常に稀有なのである。


1万人にひとりと言われるこの不遇職。


身体能力が普通よりも少し高いだけで、何らかのずば抜けた力を持たないこの職を宣告された者は絶望にうちひしがれ、自ら命を断ってしまうか、もしくはその僅かばかりの身体能力を使って悪事を働いてしまうのが大抵であった。


そう、不遇職のほとんどは、まともに職につくことすら出来ないのだから。



そしてその不遇職『道化師』を宣告された少女がいた。


赤子の頃に親に捨てられ、教会に併設されている孤児院で育ったその子の名はカーツ。


道化師の職業スキルを与えられてなお、彼女は前向きに生きようとしていた。


そして孤児院を出ていくはずの15歳になったある日、彼女は旅芸人のフリーダム一座に拾われることになったのだった。


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