第14話

予備で銃をもう一丁持っていたのだろうか、先程日下に撃たれた腕とは反対の───聞き手ではない方の腕で光流は難なく発砲した。


私を見ながら。


銃弾は私の体を掠ることなく通り過ぎる。




……今の、何?




一瞬の出来事に頭が混乱する。けれど、頭では理解できずとも体は何が起こったのか分かっているようで、激しく震え出した。


自分のすぐ真横を通った銃弾。通り過ぎてどこへ向かったのかと考えた瞬間、サァッと血の気が引いた。





…………何で、どうして、





「ぁ……ぁ……ッ…」





怖くて声が出ない。


光流は不気味に笑ったまま、腹部を銃弾で撃たれているはずなのに、ゆっくりとその場から立ち上がった。




「あー、痛いなぁ……

こんなに痛いの久しぶりかも」




そう言って私の瞳を捉えると、彼は撃たれた足を引き摺りながらこちらへ近づいてくる。



……一歩、また一歩。



そうして目の前までやってくると、口角を上げたまま私を見下ろして。





「俺を捨てるなんて許さないよ、由奈」





そう言って目を細めた。

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