第11話

聞き取れたその言葉を脳裏で繰り返すと、今度は「……クッ」という喉から漏れ出たような笑い声が聞こえた気がした。


聞き間違いかと思いながら、つい足を止める。


すると、




「…………っ、はは」


「!」


「ははっ、あははッ!」




聞き間違いではない。今度ははっきりと聞こえてきた笑い声で身体の動きが止まる。




…………何……?




私が聞こえてきた方向───すぐ背後を振り返ると、壁に背を預けて座る光流が顔を俯かせながら肩を揺らしていた。



まるで笑いを堪えるように、ふるふると震えている。





…………おかしい。





「っ……ぷ、くくっ……あははははッ!」





何かが、おかしい───。



私は息を呑んで目の前の光流を見下ろす。

彼はこのありえない状況下で狂ったように笑い始め、大口を開けながら私を見上げた。





「み、つる……?」


「くくっ、はぁ……馬鹿馬鹿しい」





先程までとの変わり様に動揺する私達に構わず、光流は独り言のようにそうを呟く。


……笑っていた声とは大違いの、低い声だった。



こちらを見ているはずのに、空虚を見ているような真っ黒い瞳。そこに私は恐らく存在していない。



思わず息を呑んだ。


まるで何かが彼の中に憑依したかのように、この一瞬で彼は別人のように豹変していた。



そして次の瞬間、彼が不意にこちらを見たかと思えば瞳孔の開いた瞳と目が合って────

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