第9話

「俺は優しいからね。

あの男に免じて直接君に聞きに来たんだよ」


「……私、に?」





その場に立ち尽くして涙を流す私を見据えながら、彼は目を細めて私にそう言う。




……思えばおかしな話だ。



ここ一帯を取り仕切る極道の家に彼が1人でいることも、組の人間が総勢揃っているのに関わらず誰もが静観していることも、その場に私を早退させてまでここに連れてきたことも。




今目の前で私に日下を殺したと断言している彼を、敵討ちに殺しにかかろうという人間はこの場に誰1人としていなかった。



日下を深く信頼し長年側においていた父でさえ、微動だにせず私と彼のやり取りを静かに見つめている。






………あぁ、そうか。

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