第10話

『今朝大量の荷物を乗せた車に逢沢結寧が乗っていったのが確認されてます』


「……」


『念の為あの女の実家を見に行ったんですが、すでに売却された後でした』




……その言葉を聞いて茫然とする。



闇に飲み込まれたかのように視界が真っ暗になって、果たして今自分が息をしているのか本当に分からなくなった。



そして途端に胸の奥から込み上げた黒いもやが心を支配していくのを感じる。





──────ドクッ、ドクッ、ドクッ





痛いくらいに強く鳴る、心臓の音。


血はまるで逆流してるんじゃないかと思うほど脈立っていて、暴れ回るかのように身体中を激しく駆け巡る。



……体内の動きがリアルに伝わって気持ち悪い。




現実を拒むかのように酷く悲鳴をあげる

体に、息が詰まりそうになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る