クラスの陰キャ女子が急に猛アプローチを仕掛けてきた。え、俺と付き合うためにタイムリープして青春をやり直してるってマジですか?

かごめごめ

第1話 どっちが素?

 学校からの帰り。

 いつものように終着駅で電車を降り、改札口を抜けて少し歩いたところで。


 ――ちょんちょん。


 肩をつつかれた。


「え?」


 立ち止まって振り返ると、そこには俺と同じ高校の制服を着た、見知らぬ女子がいた。


「おっ、同じクラス、だよねっ」

「え?」


 予想外の言葉。


 高校に入学して約三週間、クラスメイトの男子の顔と名前は全員覚えた。

 女子もある程度は覚えている。特に、目立つタイプカースト上位の女子は話す機会も多く自然と覚えた。

 が、地味でおとなしいタイプの女子とは接点がなく、いまだに覚えられていない。


「あっ、覚えてないよね!? あの、わたし、白浜しらはまです! 白浜紗友海さゆみっていいます!!」

「あ、うん、よろしく……」

「は、はいっ! よろしくお願いしますっ!!」


 テンションの高さに少し気圧される。

 こんな子が教室にいたら嫌でも覚えると思うけど、俺の記憶にはない。

 ということは、白浜さんは教室では地味でおとなしいタイプなんだろう。


 本当はこっちが素なんだろうか?

 それとも……


「そ、それでそのっ! あのっ! 今、お付き合いしてる人とかっていたりするっ?」

「……え、俺が?」

「う、うん!」


 はじめて話して、いきなりそんな質問をされるとは。

 そんなことを訊くってことは、もしかして俺のこと……なんて考えもよぎりはするが、早合点はよくない。


 白浜さんは少し長い前髪の隙間から、じっと俺を見あげている。

 どこか、なにかを期待するような眼差しにも感じるけど……だからって「俺のこと好きなの?」なんて訊くわけにもいかないしな。


「いや、いないよ」


 俺は正直に答えた。


「そ、そうなんだっ、ふーん」


 自分から訊いておきながら、白浜さんはそっぽを向きながら興味なさげに言った。


「俺になんか用事でもあった?」

「う、ううん! ほら、同じクラスなのに話したことなかったでしょっ? だから話してみたいなって思っただけ! それだけだからっ!」

「そっか」

「じゃ、じゃあわたし、あっちだからっ」

「あぁ、うん」

「また明日ね! ばいばいっ、せ、千羽せんばくんっ!」


 白浜さんはぎこちなく笑って、腰の位置で広げた手を控えめに振りながら去っていった。


「白浜さんか……」


 なんだか忙しい子だったな。

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