ガラクタ町の何でも屋
中田の刀な鷹
前編
プルルルルプルルルル
ガチャ
「はいもしもし。こちら何でも屋秋野でございますー。お仕事の御依頼ですかー?…あっシンゲンさんじゃん…なになに?あぁ明日?了解センセとレイに教えとくね。はーいじゃまた明日」
ガチャン
「教えに行くかぁー」
電話を終えシンゲンさんからの依頼を伝えるためまずは工房にいるセンセの元へ歩いていく。
「えーっとここ右に曲がって…んでこんなに複雑なんだろうなぁ道」
ここは左で真っ直ぐ行って…これだな。
工房と書かれた部屋の扉を開ける。
「センセー?仕事のお話だよー?」
「ん?マジで?この時期来る依頼もう終わらせてなかった?」
「シンゲンさんからだよ」
「あぁまた湧いたのか…」
よいしょとおっさん臭いことを言いながら工房の主が腰を上げこちらを見据える。
「依頼いつなん?ソラ」
「明日らしいよセンセ」
この人は
「んじゃ今日はまだ暇ってことかぁ…レイでも誘ってナツミさんとこのパンでも食べに行くか?」
「良いね。センセの奢り?」
「しゃーねぇなぁ…」
「やった」
さっすがセンセ、太っ腹で助かるよ。
「にしても…」
「どしたの?」
「お前今日もどっちか分からん見た目してんな」
「一緒に風呂入って裸の付き合いした仲じゃん。分かってるでしょ?」
「分かってるからこそなんだよ」
まぁ確かに中性的な見た目をしている自覚はある。レイにも良く言われるし…どちらとも取れる良い顔してるからね。
身長も程よいのが行けないのかな。足切り落としてやろうかクソがとかレイによく言われるし。
「まぁいいかレイ何処居るか分かる?」
「分かんないけど多分家にはいるでしょ」
それもそうかと言うセンセと工房を出てからレイを探す。この町では家の殆どがガラクタと化してしまっているためスペースが無く俺たち3人は会社兼家になったここで一緒に暮らしている。
「今日は何作ってたの?」
「叫び声を出せるボール」
「相変わらず変なものばっかり作ってるねセンセ」
「意外と皆から好評なんだぞ?特にパンダとマトリ」
「彼らはねぇ…好きそうだねぇ…」
目をキラッキラさせてるのがすぐに想像出来るよ。
そんなこんなで話をしながらセンセと家を巡り回っていると厨房でレイを見つける。
「おっ何だぁ?飯でも作ってくれんのかレイ」
「そんな訳ないです。運動してお腹が空いたから食べれそうなのを探してたんですよ」
何を馬鹿なことをみたいな顔をしてるこちらの幼女…やべ睨まれた。何で考えることが分かんのかね…野生の勘ってやつ?とにかくこの女は
「言ってくれりゃパッと作ったんだが」
「機械弄りしてる博士の邪魔はしたくなかったからしょうがないです。この女男も料理は出来ないですし」
「何か言ったかツルペタ幼女」
「何も言ってないですよ女男」
火花が散りそうなほどツルペタ幼女とバチバチ睨み合う。
「ほら喧嘩すんなお前ら。飯作ってやるから座ってろ」
「博士が言うならしょうがないです」
「まぁセンセが言うなら」
「お前ら俺の言うことだけは聞くよな」
「「当然(です)」」
「仲良いな」
センセの言うことは何よりも優先されるからな。センセが喧嘩すんなと言ったら喧嘩はしないのだ。ツル…レイの方も同じ気持ちだろう。
─5分後
「ほら出来たぞ野菜炒めだ。まぁパッと作った割には良い出来だろ。んじゃいただきます」
「「いただきます」」
センセが作ってくれた野菜炒めを噛みしめながら味わう。朝からご飯を食べれるなんて昔からは考えらんないなぁほんと。
「あってかそうだ言うの忘れてた」
「どうしたんです?」
「明日仕事入ったからよろしくなレイ」
「了解です」
あぁそういや言ってなかったな。言った気になってたすごい。
「昼はナツミさんとこのパン食べ行くからレイは運動すんなら汗流しとけよ」
「了解…博士も一緒に入るです?」
「いやぁ俺は…」
「センセがお前と入ることはねぇから諦めろレイ。お前は1人寂しく汗でも流しとけ」
「ソラは一緒に入ってるのに…性別の壁が憎いです…」
「お前らは俺の裸に何を見出してんの?」
残念だったなレイ。センセと風呂入れんのは俺とかパンダたちだけなのさ。
野菜炒めを食べ終えた俺たちは皿を洗ってから各々好きなことを1時間半程してから玄関先に集まる。
「よーし行くぞーお前ら。…何いがみ合ってんだ」
「こいつが私の事幼女体型すぎて少年と間違われてるお前に何言われても効かんわw…って言ってきたです」
「その前にこいつが女々しくて男らしさの欠けらも無い女男は博士の1番にはなれないです…って言ってきたんですよ!」
「どっちもどっちだがギリレイが悪いな。謝っとけよ後で」
「ぐぐぐ…」
レイが悔しがってる顔って何でこんなに素晴らしいんだろう。この光景だけでご飯3杯は行ける。
「おら行くぞー」
先に靴を履きいつもの杖を持ち家から出るセンセに慌てて追いつく。レイに鍵なんて任せたら二度と見つからなくなるのでしっかり俺が鍵をかける。
「おっ博士さんたちこんにちは!どうだい買ってかないかい野菜でも」
歩き始めて少しで八百屋のおばちゃんから声をかけられる。この町で何でも屋として活動し始めてもう既に5年経っているので町の人は全員顔見知りである。
「いやぁ今からナツミさんとこ行く予定でよ…帰り寄るわ」
「そりゃ助かるねぇ待ってるよ」
「おう、じゃあなカレラさん」
「2人もまたね」
「またですカレラさん」
「まったねー」
それからも同じようなやり取りを繰り返しながらようやくナツミさんのパン屋へと辿り着く。
「こんちはー」
「おっ博士じゃん!こんにちは!」
「おーパンダー元気ー?」
「すっげぇ元気だぜ!姉ちゃんもレイもこんにちは!」
「いや俺は姉ちゃんではねぇんだけどよ。まぁこんにちはだなパンダ」
「何で私は呼び捨てなんです?舐めてるんです?」
舐められてんだろ普通に。身長も同じだし。
「何か言ったですかソラ」
「何も言ってねぇよ」
口に出してないのに察知してくんのやめろい。
「あぁーごめんなさいね遅くなっちゃったわ」
「いやいや急いでねぇから大丈夫だよナツミさん」
そんなやり取りをしていると店の奥の方からナツミさんがやってくる。
「ごめんなさいね博士さん、この前もうちのパンダに発明品もらっちゃって」
「いえいえ、目を輝かせて使ってくれるんでモチベーションに繋がるんですよ」
「このシンプルに重くなる金属バットは最高だぜ博士!いい訓練になるしシンプルに使いやすい!この前の笑い続けるイチマツ人形?って奴も良かったけどこれも最高!」
パンダが利き手の左腕でセンセから貰った金属バットをかかげる。レイが羨ましそうな目で見ているがレイも俺も結構有用な発明品貰ってんだよなぁ…。まぁ羨ましいのはわかるが。
「喜んでくれたなら博士冥利に尽きるってもんだ」
「でも俺ヒーローが使う武器って言ったんだけど博士が知ってるヒーローと俺の知ってるヒーローってもしかして違う?コスト削減?」
「コスト削減とか言ってんじゃねぇぞパンダ。後良いだろ金属バット使うヒーロー居ても。結局その力で大切なもん守れるかどうかなんだよヒーローは、得物なんて関係ないない。お前もヒーローなりてぇなら守りてぇもんをしっかり考えろよ」
「まぁ確かにいい武器持ってても守れなきゃ意味ないもんね」
「そうそう。てか普通にそのバット強いからな?重量の制限がかなり高めに設定されてるから大人になっても使えるはずだ」
「流石博士!天才だね!」
「手のひら返しのプロかな?」
寸劇のようなやり取りをセンセとパンダが交わしている間に欲しいパンを注文しナツミさんに持ってきてもらう。
「じゃまた来ますわ」
「またなー博士ー!」
「おうまたなパンダ」
その後センセもパンを買ってからナツミさんの所を後にし帰路に着く。帰る頃には色々なものを抱えて歩くレイの姿があった。
「ぐぬぬ…何故私がこんな事を…」
「じゃんけんに負けたからだろ。しかもお前発案」
「まさか負けるとは…」
レイがその辺の石に躓いて転ばないように辺りに気を配りながら家まで帰りパンを食べ好きな事をし、夜ご飯を食べてから皆で川の字になって寝た。
もちろんセンセが真ん中で。
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