第77話 魔物討伐訓練2
私達は馬車を降りると、クラスごとに集まった。
「皆集まったな」
マルタン先生が皆を見渡した。
「ここからは班長を中心に行動するように。基本的には騎士団が2日前にこの辺りは討伐しているから、危険な魔物はいないと思うが、十二分に注意しろ。何かあれば、直ちに信号弾で連絡するように。良いな!」
「「「はい!」」」
全員元気に返事した。
「では、各自の進むルートは渡してある地図通りだ。各班に別れて、行動開始だ」
「「「はい!」」」
「ようし、一班集合」
コンスの合図に一班は全員集合した。
班長は当然学園最強の剣士のコンス。
前衛は文官志望のベルナールと騎士でコンスと同じ剣術部のエグモント
その前衛の補助がヘレナと私だ。
ポピーはコンスの補助。
他に4名の男子が後衛として待機している。
この布陣で行動するのだ。
ルートに沿って2時間歩き、そのまま帰って来る。
途中休憩入れて5時間の想定だ。
「前衛はどこに魔物がいるか判らないからな。十分に注意してくように」
「「はい」」
コンスの注意に全員頷く。
「よし、行くぞ」
「「おう!」」
私達はコンスの合図に歩き出したのだ。
前衛の二人ベルナールとエグモントが抜剣して先頭を歩き出す。
森の中といっても、木々の間は歩けるスペースが有り、結構歩きやすかった。
当然、森だから木々が生えていたが、ある程度の間隔が空いていて前方もよく見えた。
魔物の接近は判りやすかった。
私はエグモントの5メートルほど後ろを歩く
私はいつ魔物が出ても良いように、四方に注意しながら歩いた。
その私の5メートル横を後衛の一人が歩いて、私の5メートル後ろにはコンスがいた。
2、4、4の陣形だ。
前衛が見つけて戦っている間に、後衛含めて襲いかかるという戦法だ。
初めての魔物討伐という者が大半なので、皆とても緊張して歩いていた。
しかし、私達は30分かけても、何にも出会わなかった。
「うーん、騎士団が全部退治してしまったのかな?」
私が言うと
「そんな訳ないんじゃないかな。もう2日も前の話だし、本来ならば魔物の1匹や二匹出会っているはずなんだが」
エグモントが首をかしげた。
「まあ、いないことは良いことじゃないか」
ベルナールが能天気に言ってくれたが、
「それじゃあ訓練にならないじゃないか」
不満そうにコンスが言った。
「まあ、コンス、まだ歩き出したところなんだから」
ポピーがコンスをなだめてくれた。
「そうだな。この奥に古代竜が一匹いて、他の魔物が恐れていなくなった可能性もあるからな」
なんかコンスがとんでもないことを言ってくれるんだけど……
「コンス、流石に古代竜がいたらいくらコンスといえどもやばいでしょ」
エグモントが言うと
「やってみないとわからないではないか。手に汗握る戦いになると思うぞ」
不敵な笑みをコンスは浮かべてくれるんだけど、流石に私は遠慮したかった。
私達はそこから更に30分歩いたが、魔物は出てこなかった。
「一体どういうことだ? 1時間も歩いて魔物に出会わないなんて」
流石にコンスが不機嫌になる。
「コンスを恐れたんじゃないですか」
ベルナールが言い出すが、
「そんな訳無いだろう。いつもならこの森を1時間も歩けば10匹は魔物がいるぞ」
コンスは首をかしげた。
更に30分歩いても出会わなかった。
「誰かが先に歩いて討伐したのかな?」
「それならばそ奴らは私が許さん」
ベルナートルの言葉に、今にも剣を抜きそうな構えでコンスが言い放っていた。
「クラウ、あなた、わざわざ魔物に出会いたい?」
コンスの様子をみてヘレナが聞いてきた。
「んなわけ無いでしょ。いなければいないほうが良いわよ」
「だよね」
コンスに見つからないように私達二人は頷きあったのだ。
そして、更に30分歩いても何も出てこなかった。
「ど、どういうことなのだ。絶対に許さん」
もう、コンスは不機嫌極まりなかったけれど、私は知らない地をハイキング出来て、魔物にも襲われずにホッとしていた。
「さあ、ご飯、ご飯」
私はうれしそうにそう言うと、大きな岩の上に座ってお弁当を広げようとした。
下に敷く敷物を広げて、ランチボックスを広げると中にはサンドウィッチが入っていた。
「ああああ、たまごサンドとハムサンドだ」
私は上機嫌で呟いた。
「な、なんだ。クラウはご飯さえ食べられれば幸せそうだな」
「だって、お腹が減っては戦は出来ぬっていうでしょ」
「なんだ、それは知らないぞ。流石に食い意地の張ったクラウが作ったのか」
ベルナールに言われて
「ええええ、皆知らないの? 有名なことわざなのに」
「クラウ、それ、前世のことわざよ」
私の言葉にヘレナが小声で教えてくれた。
「えっ、そうだっけ?」
私は少し慌てた。
「まあ、クラウらしいよね」
「いいよな。クラウはお弁当を食えれば幸せなんだから」
ベルナールとエグモントの言葉に私は少しムッとした。
「まあ、ノーコンのクラウに後ろから攻撃されなくて助かったけれど」
「何言っているのよ。私はノーコンではないわよ」
「明後日の方しか飛ばないだろう」
私の火の玉を知っているベルナールらは言ってくれるんだけど、
「何言っているのよ。私の水魔術は精度はぴか一なんだから」
「本当かよ」
「じゃあ見ててよ。あの木に当てるから」
私は50メートルほど離れた木を指差して言った。
「そんなの当たるわけ無いだろ」
馬鹿にしたようにエグモントが言ってくれたので、私はムッとした。
「スクリューウォーター」
私はトイレ掃除で使った水魔術を発動したのだ。
これはルードに何回も付き合ってもらって、遠距離でも結構精度が上がったのだ。
当然これくらいの距離ならば当たるはずだ。
でも、半分の距離でいきなり何かにぶつかったようにその先に行かなくなったのだ。
「やっぱり届かないじゃないか」
馬鹿にしてエグモントが言ってくれた。
「あれっ? 変ね」
私が再度やろうとした時だ。
「ちょっと待て、クラウ。何かいるぞ」
そう言うと、コンスが宝剣を抜いてくれた。
「えっ、そうなの?」
私は驚いた。
「喰らえ」
振りかぶるやコンスが剣を一閃した。
バチバチバチバチ
その瞬間スパークが走った。
それはみるみる姿を表したのだ。
「ギャオーーーー!」
そこには怒り狂った1つ目の巨人が仁王立ちしていたのだ。
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