第60話 公爵家の嫡男が会いに来て強引に雲の上の公爵家に連れて行かれました

ルードは嵐のようにやってきたと思ったら、お母様を連れて嵐のように去っていった。

私はあっけにとられていた。


でもそのあと、今度は鬼気迫る勢いでアデライド先生の挨拶講座が始まることになったんだけど……

カーテシーのやり方だけは徹底的に叩き込まれたのだ。

なんか食事時間までなくなってしまった。


私はなんで急にここまで厳しくされなければいけないんだろうと泣きそうになった。


結局、その日も食事にはありつけず、私はヘレナの部屋に直行したのだ。


「えっ! あなた、エルザ様にお会いしたの?」

私が今日の事を話したらヘレナが食いついてきた。

そういえば昨日の事は忙しくてあまり話していなかった。


「そう、結構素敵な方よね」

「まあ、若手の社交界はあの方が中心だから」

「そうなんだ」

そんな方が親類ならば私が社交界でつまはじきになることはないみたい。

もっとも私が社交界に出るのは難しいと思うけれど……


「ああん、私もお会いしたかった」

というヘレナに、またお会い出来たら紹介すると約束させられたんだけど、もう会うことなんてしばらくないと思っていたのだ。



次の日はまた、令嬢たちの視線が厳しくなっていた。

少し収まったと思っていたのに……


なんか所々でピンク色の髪を見たからデジレがいろいろ暗躍しているみたいだ。

本当にしつこい。

私は不安になった。

その不安は放課後的中したのだ。


私はヘレナとポピーが部活に行った後でアデライド先生の補講に行こうとしたら、ラーラ・キューネルト侯爵令嬢の呼び出しを受けてしまったのだ。


出来たら避けたかったが、5人くらいの令嬢に取り囲まれて強引に連れて行かれたのだ。

E組の皆は遠巻きに見ていた。

さすがにコンスに釘を刺されたのが効いたのか、イルマもユーリアも私を連れて行く連中の中にはいなかった。


そして、10人くらいの令嬢に囲まれて、水をぶっかけられたんだけど、そこに学園長が現れて皆唖然としていた。


そのあとアデライド先生が現れたのだ。E組の誰かが呼んできてくれたのだろう。

先生を見て令嬢たちは青ざめていたが、更に学園長についてきた人がライゼマン公爵家の嫡男だと聞いて、みんなもう蒼白になっていた。



「オイシュタット男爵家のクラウディアと申します」

私はその後、応接で再度、その令息オイゲン様にカーテシーであいさつしたのだ。


まさか、昨日特訓させられた事が今日生きてくるとは思ってもいなかった。

さすがアデライド先生は凄いと私は改めて先生の慧眼に感嘆したのだ。

お互いに挨拶して、私は席についた


「クラウディア嬢、カッセルでの、あなたの扱いについて、あのようなことをアロイス等にさせていたこと、本当に申し訳なかった」

そう言うとオイゲン様は私に頭を下げられたのだ。

「えっ、オイゲン様、私なんて男爵令嬢に頭を下げるのはやめて下さい」

私は慌てて、立ち上がると、手を振った。

「クラウディアさん」

アデライド先生が注意してくるけど、そんな事言われても私には帝国の公爵令息に頭を下げさせるのを黙ってみているなんて、無理なのだ。

「オイゲン様、クラウディアさんが困っています。公爵令息ともあろうお方が頭を下げるのはどうかと存じますが」

「アデライド先生、そう言われるが、聞くところによると、クラウディアさんは奴隷に近い扱いを受けていたとか。公爵家の縁者が、そのような状態になっていること自体を私は知りもしなかったのだ。お前は何をしていたと姉からも怒られた。本当に申し訳なかった」

改めて、オイゲン様は謝られたんだけど、

「えっ、いえ、そのような事は、お気持ちだけでも十分です」

私は首を振った。

「そう言っていただけると嬉しいが、この事については改めて謝罪させていただく。

もう聞いているかも知れないが、あなたのおばあ様、私の叔母は、元々姉の今の義父と婚約していたのだ。それを当時、流行った真実の愛に出会ったとかで、カッセルのオイシュタット伯爵令息と駆け落ち同然で出奔して、結婚したのだ。姉の義父は激怒したが、してしまったものは仕方がない。ライゼマン公爵家はおばあ様を勘当、属国に過ぎないカッセル国王は恐縮し、オイシュタット伯爵家を子爵に降爵、最後は勝手に忖度して男爵位まで降爵したのだ」

オイゲン様は詳しく経緯を説明してくれた。

その後、その子供のお母様が学園に通うときにオイゲン様のお姉様も同じクラスで、いとこだったこともあり、親しくしていたそうだ。お姉様がその義父様の息子であるエーリック様と結婚するときも、また、真実の愛に目覚めるのではないかと、エーリック様はとても心配されたとか。そして、エーリック様の家にお家騒動が起こったときに、その息子のルードを我が家で匿ったのだとか。

「だから、我が家としても、あなたの家にはとても感謝しているし、本来、あなたが奴隷のような生活をしていたと知り、驚愕しているところだ。それで、大変急な話で、恐縮だが、これから、私と一緒に公爵家に来ては貰えないだろうか?」

オイゲン様がとんでもないことを言ってこられたんだけど、

「はい? そんな、属国の男爵家の者が公爵家にお邪魔するなんて、無理です」

私は必死に頭を振った。


「何を言ってくれる。あなたは私の叔母の孫だ。親類なのだから、無理ではなかろう。

公爵家に関わるものが奴隷のような扱いを受けていたことを父も母もとても憤っていたし、あなたに直接謝りたいと言っているのだ」

「でも」

「あなたを連れてこないと、私が姉にどやされるのだ。ルードも今我が家にいるし、知らないものばかりではない。ここは私を助けると思って一緒に来てほしい」

そう言われてしまって、アデライド先生もそう言うことなら仕方がありませんね。練習した通りにちゃんとしてね。とまで言われたら、私には断りようもなかった。

私は不安だらけで公爵家に強引に連れて行かれてしまったのだ。

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別にカクヨムコン10異世界冒険部門

『婚約破棄されたので下剋上することにしました』

https://kakuyomu.jp/works/16818093090691950432


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