男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです
第59話 公爵家嫡男視点 夫婦喧嘩して帰ってきた姉に言われて学園に迎えに来てみれば、その子は皆に囲まれて虐められていました
第59話 公爵家嫡男視点 夫婦喧嘩して帰ってきた姉に言われて学園に迎えに来てみれば、その子は皆に囲まれて虐められていました
俺の名前はオイゲン・ライゼマン、ライゼマン公爵家の嫡男だ。
そう、帝国でも皇帝陛下の皇家を除いて、最高位の公爵家の嫡男なのだ。
基本は我が家では父の次に偉いはずだ。
いや、母がいるからその次か。
でも、我が家には姉がいて俺様は未だに力の強さで言うと4番目のドンケツだ。
嫡男なのに……
普通は他国なら、いや、帝国内の他の家では当主の次に跡継ぎである嫡男が偉いはずだ。
しかし、我が家では父の次が母でその次が姉。俺はどうあがいても4番目の走り使いだ。
この姉は忌々しいことに、帰ってこなくても良いのに良く我が家に帰ってくるのだ。
大体、夫婦喧嘩して返ってくることが多い。
そして、大抵は夫が謝りに来るのだ。
都合が悪いことにこの夫が俺の上司に当たるのだ。
その度に俺は上司と姉の板挟みにあって悲惨な目に合うのだ。
今回は姉は息子まで連れて帰ってきたのだ。
「姉上、流石にルードを連れて帰ってくるのはまずいのではありませんか」
俺が諌めたのだが、
「オイゲン、その前に私、あなたに言いたいことがあるんだけど」
姉は最初から怒りモードなんだけど、何故に?
「いやあ、姉上、私は仕事で上司に呼ばれていて」
俺はすぐにこの部屋から出ていこうとして、むんずと姉に襟首を掴まれてしまった。
「あなたの上司はエーリックでしょ。良いのよ。あんなやつの言うことなんて聞かなくて」
「いや、姉上は良くても俺は良くないので」
「それよりも、オイゲン、あなた私に頼まれたこと、ちゃんとやってくれていたの?」
俺の言葉はあっさりと無視されて俺は姉に睨まれたんだけど……
俺は何のことか判らずにその息子のルードを見るがルードは首を振ってくれた。
これはまずいやつだ。
俺は即座に逃げようとした。
「だから、座って居なさいって」
姉はまた、俺の襟首を捕まえて椅子に座らせたのだ。
姉は見た目は非力に見えるのに俺は勝てた例がなかった。
「私、立場上、エレオノーレの葬儀には行かないほうが良いとオイゲンに言われたわよね」
「ええ、まあ」
それは姉の夫にそういえと言われていたのもあるし、姉の義父を刺激するのもまずいと思ったからそう言ったのだ。
「その私の代わりにあなたが葬儀に出てくれたのね」
「えっ、いや、姉上の代わりというよりは俺は我がライゼマン公爵家を代表して出たんです」
俺は必死に逃げようとした。
「どちらにしろ一緒でしょ」
俺は違うと思ったが、姉にしたら同じことらしい。
「私ね、その時あなたにお願いしたわよね」
姉が猫なで声で言ってくれたが、
「エレオノーレさんの娘のクラウディアちゃんがちゃんと生活できるようにカッセルの国王と男爵家当主のアロイスに頼んでこいっていうあれだろ」
俺は頷いた。
「本当にちゃんと頼んだの?」
「頼みましたよ。くれぐれもクラウディアさんの件は姉が気にしていましたので、宜しくお願いしますと国王とアロイスには頼みましたよ」
俺はそう答えていた。
「あなた本当にちゃんと頼んだの?」
しつこく姉は聞いてきたので、
「やりましたよ。国王も男爵も判ったって頷いていましたよ」
「そう、じゃあなんでクラウちゃんは奴隷みたいな生活していたのよ」
「いや、それを俺に言われても」
「そうだ。エルザ。カッセル国内の事はカッセル国王に任せないと」
横で父が援護射撃をしてくれた。
俺はほっとした。
「はああああ! お父様、何をおっしゃいますの。クラウちゃんは8歳の時からそのアロイスの平民の継母に、何かにかこつけて鞭打たれていたんですよ」
「まあ、鞭打ちなんて本当なの?」
母が口に手を当てて驚嘆していた。
俺は聞いて知っていたが、怒った姉がカッセル国王にブチギレて、既に継母らを鉱山送りにしたのだ。
それで終わったものだと思ったのに、また、姉が蒸し返すなんて! 義兄は一体何をしてくれたのだ?
「ルードに聞くと奴隷のようなボロボロの服を着て、食事も満足に与えられていなかったそうなの。このライゼマン公爵家の一門の者がそんな目に合っているのを知っていたのにお父様は黙っていたの?」
涙まみれで姉が言いだした。
「いや、流石にそんな事になっているとは知らなかったんだ」
「でも、お父様はこのライゼマン公爵家の当主ではありませんか。少しはどうなっているか様子を探らせても良かったのではありませんか」
「いや、儂も毎年、カッセル国王には聞いていたのだ。きちんと生活しているかどうかを。国王は『健やかに暮らしている』と言っていたから信じていたのだ」
「又聞きなんてするからでしょ何故直接使者を差し向けなかったのですか」
「いや、それはだな、その方の義父に遠慮があったと言うか」
「確かに、叔母様はお義父様には悪いことをしたと思います。でも、その孫に何の罪があるのですか? 可哀想にクラウちゃんは奴隷として鞭打たれていたのですよ」
「いや、それは確かにそうだが」
父もたじたじになっていた。
「で、その子は今はどうしているの? 学園でちゃんとやっているの?」
母がルードに聞いてきた。
「ええ、一応きちんとやって」
「そうおっしゃい。せっかく学園に来たのに、また虐められているんです」
「それは良くないわ。我がライゼマン公爵家としても何らかの手を打つ必要があるのではないかしら」
母が言いだした。
「そうね。お母様。一度その子をこの館に呼びましょう」
「いや、しかし、それは義父様にまずいのでは」
父が言いづらそうに言うが、
「どこがまずいのです?」
「そうよ、あなた。その子はれっきとしたこの公爵家の親類ではありませんか。呼ぶ段には問題ないでしょう」
「しかし、姉はこの公爵家を勘当されて」
「お父様。でも、血は繋がっているでしょ。それにその孫に何の罪があるのよ」
「そうよ。あなた。そんな目に一門の人間があっているなんて、公爵家としても見過ごせませんわ」
「早速、オイゲン、明日の放課後でも呼んで来て」
「明日ですか?」
「早いほうが良いでしょ。あなたもクラウちゃんにちゃんと謝っておくのよ」
「はい」
余計なことを言って長引かせる事もないと俺は翌日、放課後にその子を迎えに行ったのだ。
学園長に挨拶して、そのまま、校舎の中を案内してもらった。
俺も久々の学園で、姉たちが無茶やった後始末をエーリックやピザン家の嫡男とさせられたことを思い出していた。
俺は廊下で教室の中を見ているピンク髪の女の子が目についた。
女の子はなにか楽しそうだ。
その子は俺達を見ると慌てて去っていったのだ。
「なにか揉めているようですな」
学園長がそう言った時だ。
その子の見ている空き教室から声が大きな音が聞こえてきたのだ。
バシャン
「ちょっと、そこのあなた。属国の男爵家の令嬢のくせに、最近態度が生意気なのではなくて」
「そうよ。コンスタンツェ様やルード様に目をかけられているからって許されないわ」
「いい気味よ。本当の濡れ鼠ね」
女たちが言っている。
「ちょっと君たち、何をしているんだ」
学園長がガラリと扉を開けた。
そこには銀髪の女の子が魔術かなにかで頭から水をかけられたみたいで濡れ鼠になっていた。
俺は姉が釘を刺してきたと言っていたから大丈夫になっていたのかなと思ったのだが、なっていなかったみたいだ。これを聞いたら姉がまた切れそうだ。
俺は頭が痛くなった。
「えっ」
俺達を見つけて慌てて逃げようとした女たちだが、入り口は俺と学園長がいて逃げられなかった。
「何をしているのですか!」
そして、そこに遭いたくないアデライド先生がやってきたのだ。
俺は在学中も結構この先生に怒られて最悪だった記憶がある。
怒られる女たちに少し同情しながら、俺はとりあえず、水を頭からかけられた女の子に温風魔術を当てて乾かしたのだった。
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