第32話 聖女が勝手に落ちたのに、私が落としたことにされてしまいました
ルードにペンダントをつけられた私はほうけたようになって寮に帰ってきた。
そのまま、私はヘレナの部屋に連れ込まれたのだ。
「ルードは何故これをくれたんだと思う?」
私がヘレナに聞くと
「あなた達がどんなふうに日頃を過ごしているかわからないけれど」
「どんなふうにってあんな感じよ。覚えてきたかズバズバ質問されて、覚えていないと叱られたり、デコピンされたり、本当に大変なんだから」
「なんか男と女がイチャイチャしながら勉強しているとしか聞こえないんだけど……」
ヘレナが呆れて言ってくれた。
「んなわけ無いでしょ。本当に宿題が大変なんだから。そう言えば帰って勉強しないと」
私が慌てて立ち上がろうとして、ヘレナに手を引かれて、留め置かれた。
「えっ?」
「少なくても、そのペンダントをつけろって皆の前で見せたのは、どう見てもあなたに対する独占欲の塊よ」
「えっ、なにそれ?」
「少なくても、女に自分の色を纏わせるのは周りに対しても牽制しているのよ」
「ルードの色?」
「その金のロザリオはルード様の髪の色を表して、青いサファイアはルード様の目を表しているのよ。
この世界では、好意を寄せる異性に自分の色を纏った装飾品を送るのよ。少なくとも今までにルード様が誰かに送ったということは聞いていないわ」
「えっ、そうなの?」
私はヘレナの言葉に頷いた。
顔だけは良いんだから、色々と遊んでいるんだと思っていた。
「ルード様がヒロインに対して仲良くなったら渡すのがそのロザリオよ」
ヘレナが教えてくれたんだけど、
「へっ」
私はその言葉に固まってしまった。
だからデジレは自分の物だと主張したのだ。
ゲームでは自分が受け取るはずだと……
「それが私に贈られたってどういうこと?」
「それはルード様に聞きなさいよ」
冷たくヘレナが言ってくれたんだけど、
「でも、ルード様がレセプションであなただけとしか踊らなかったり、金のロザリオをあなたに送ったりしたことからも、あなたの立ち位置が今は悪役令嬢の位置じゃなくて、ヒロインの位置にいるのは確かよ」
帰りしなにヘレナが言ってくれたんだけど……
それって、ルードが私を好きだってこと?
あの宿題を山のように出して、していないと怒るルードが?
「ありえないわ」
私は自分の部屋で呟いた。
勉強を必死にしようとしたけれど、中々頭には入らなかった。
次の朝の目覚めは最悪だった。
夜もルードのことを考えて私はよく眠れなかったのだ。
幼馴染の意地悪ルードのことを。
小さい時はよく振り回されたし、いろんな意地悪をされた。
こちらに来てからも、きついことを色々言われたし、山のように宿題を出された。
でも、それは私のことを考えてくれた結果じゃないだろうか?
いやいやいやいや、それはない。私を連れてきたルードの立場上、私がこの成績では不味いのだ。自分が叱られるから教えてくれているだけだ。
でも、お守りにこんな自分の色のついたものをくれる必要はないんじゃない?
いや、多分たまたまこれしかその場になかったから、私にくれたのだ。
とこんな事を繰り返し考えていたら寝れなかった。
意地悪ルードと優しいルードが交互に私の頭の中に現れて、寝れなかったのだ。
寝不足の顔で皆の前に出ると、
「どうしたの? その顔は」
皆驚いてくれた。
早速ポピーが癒やし魔術で私の目の下の隈を治してくれた。
「恋する乙女は大変ね」
ポピーが笑って言ってくれるけど……
私はそれどころではなかったのだ。
昨日の食堂で私がルードからペンダントを贈られたことを皆聞いたみたいで、女性人からは冷ややかな視線が突き刺さるが、コンスが私の傍にいてくれるのであからさまな態度を私に取るものはなかった。
なんか空気が重い。
私は、気分転換のために少しだけ、外に出ようとしたのだ。
ついてきてくれようとした、ヘレナが友達に会って、足を止めたが、私は問題ないだろうと、階段を降りようとしたのだ。
ダン、
私の後ろで大きな音がして、私に少しだけ衝撃が走った。
「キャッ」
そこに悲鳴が聞こえて、ピンク頭が階段を転がり落ちるのが見えた。
「えっ?」
私は何が起こったか、判らなかった。
「キャー、聖女様が、この女に突き落とされました」
私の後ろから大きな声が聞こえたのだ。
「はい?」
慌てて、私は後ろをふりかえると、いつもデジレと一緒にいる、女が私を指差して叫んでいるんだけど、
ええええ! 私は何もしていないわよ!
そう叫びたかったが、飛んできた物理の先生らに強引に職員室に連れていかれたのだ。
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