第4話 私をひどい目に遭わせてくれた継母と義妹をルードが引っ叩いてくれました

「お待ち下さい。ルード様。クラウディアは私の娘でもあります。勝手に連れて行かれては困ります。このカッセル王国では父親が賛成しない限りは勝手なことは出来ないはずですよ」

父の言葉に私は固まってしまった。

それではこの最悪の家を出て帝国の学園に行けない。

私は唖然とした。


「残念でしたわね。ルード様。この娘は家から出しませんわ」

にこやかに継母が笑ってくれた。

「そうよ。お義姉さまだけが帝国の学園に行けるなんて許されないわ。お義姉さまはこの家でずうーとメイドとして働いてもらうんだから」

義妹は喜々として言ってくれた。これからますます私をこき使うつもりなんだろう。

特に継母の目が異様に暗く澱んでいた。


私は私の人生が終ったのを知った。

あの継母の目は異常だ。

後でじっくりと鞭打たれるのだ。

悲鳴を上げて許してと私が頼んでも許してもらえないだろう。

私は目の前が真っ白になった。



そんな時だ。

「あは、あはははは! お前らは本当に面白いな」

いきなりルードが笑いだしたのだ。

こんな時に何で笑えるんだ?

私には理解できなかった。


「な、何を笑われるのですか?」

「そうよ。いくら帝国の偉い方でも、とても失礼ですわ」

「本当に許せませんわ」

親娘三人がむっとして文句を言ってくれた。


「忙しい俺様がわざわざ時間をやりくりしてここに来てやっているんだ。

俺様が、そのような父親の反対などという下らない理由で引き下がるとでも思っているのか?」

馬鹿にしたようにルードは吐き捨ててくれた。


「何を仰っているのです。この国では娘の行動には父親の賛成がいるはずで」

「黙れ! 貴様はそもそもこの男爵家の当主ではないだろうが」

敬語で話すのをルードは止めたみたいだ。なんか、それにとても怒っていた。


「何を仰います。私は現にこのオイシュタット男爵家の当主で」

ムッとして父が言い返すが、

「そもそも貴様はクラウディアの母のエレオノーレ殿の入り婿のはずだ。違うか外務卿」

ルードは父ではなくて外務卿に振っていた。

「それはその通りです」

外務卿は仕方なく頷いた。


「では正当な男爵家の跡取りは誰だ?」

ルードの問いに外務卿は少し考えていたが、

「当然、エレオノーレ殿の実の娘のクラウディア嬢でしょうな」

「な……」

外務卿の答えに父は固まっていた。


「ただ、クラウディア嬢はまだ成人なさっていらっしゃいませんから、それまでは仮の当主として、アロイス殿が男爵を継いでいらっしゃるだけです」

「……」

その言葉にアロイスは完全に黙った。

事実だから仕方がない。でも、そうするつもりがこいつらにはなかっただけなのだ。


「そんな馬鹿な、あなた嘘よね」

「そんなのあり得ないわ。そうでしょう。お父様。クラウディアはメイドとして飼い殺しにして、この男爵家は私に婿を取って継がせるって話をしていらっしゃったじゃない」

もう妹の話はめちゃくちゃだ。私が生きている限り、そのような事は通らないのだが、私を殺すか追放するつもりだったんだろうか?


「カミラ、黙っていなさい!」

父は慌てたが、

「だってお父様がそう言っていたじゃない」

義妹は本当に馬鹿だ。それじゃあ、当主をすり替える計画を立てていたと取られても仕方がないじゃない!


「おいおい、外務卿。この家では男爵家の簒奪が計画されていたみたいだが、どうするのだ?」

「いえ、そのような事はないでしょう。オイシュタット男爵」

ルードの言葉に外務卿は慌てた。

それはそうだ。それが発覚すれば厳罰は必死だ。


「さようでございます。娘が勘違いしていただけで」

父も慌てて、めちゃくちゃ苦しい言い訳をしていた。


「何を言っている。現当主のクラウディアをメイドにしている段階で、証拠は十分だろう」

厳しい視線でルードは父を無視して外務卿を睨みつけた。


「いや、あの、まあ、そうですな」

必死に逃げ道を探したが、外務卿には見つけられなかったみたいだ。


「この状態をどうしてくれるのだ。外務卿は?」

ルードが最後通牒を突きつけた。


「いえ、直ちに陛下にご相談してしかるべく対応させて頂きます」

外務卿はもはやそう答えるしか道はなかった。


「そ、そんな」

「嘘!」

継母と義妹は蒼白になった。

やっと自分たちのしていたことがとんでもない事だと気づいたのだ。


しかし、今更遅いのよ!

私が思った時だ。


「そうだな。十分吟味して処分してくれ」

そう言うとルードは立ち上がったのだ。


「ルード様。お許しください!」

驚いた事に継母が高貴なルードに縋りついたのだ。


「この身はルード様に捧げますので何卒お許しください」

義妹はどさくさに紛れてなんかとんでもないことを言っていた。



「ええい、気やすく触れるな」


パシーン、パシーン


「キャッーーーー」

ルードは縋りついて来た継母と義妹を思いっきり引っ叩いてくれたのだ。

頬を押さえて二人は床に投げ出されていた。

私は少しスカッとした。


「こいつらを拘束しろ」

二人は直ちに騎士達に拘束されていた。父と外務卿は唖然とそれを見ていた。


「少しだが、クラウの仕返しをしてやったぞ」

ルードは私に小声でささやくとウィンクしてくれた。

やっぱりわざとやってくれたんだ。

私はルードの心遣いが嬉しかった。

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