男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです
古里@3巻発売『王子に婚約破棄されたので
第1話 継母に引っ叩かれて前世の記憶を取り戻しました
このお話見つけて頂いてありがとうございます。
カクヨムコンテスト頑張ります
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「クラウディア! お前との婚約を破棄する」
私はパーティー会場でみんなの注目する中、金髪のイケメンから婚約破棄されてしまった……
何これ! こんなの許せない!
その瞬間、私はハッとして目を覚ました。
ええええ!
何なのこの夢は?
正夢?
でも、クラウディアは帝国の属国のしがない男爵令嬢なのよ。婚約破棄されたって、それ以前にあんな凛々しいイケメンが婚約者なわけないじゃない!
そもそも、クラウディアは継母とその妹によって、男爵家の中では虐められていて、メイドのような雑用をさせられているのだ。こんな婚約者がいるわけない。
私はクラウディア・オイシュタット、この国、帝国の属国のカッセル王国の男爵令嬢よ。
そう、高々男爵令嬢なのよ。
ラノベの世界で、男爵令嬢なんて、モブにもなれないじゃない!
なんて言われるかもしれない。
確かに、男爵家は貴族の中では下だけど、我が国カッセル王国では貴族は全人口の0.1%もいないから、メチャクチャ恵まれているのよ!
何しろ、一応お貴族様なんだから。
まあ、でも、男爵令嬢の私が、あんな白馬に乗った王子様みたいな凛々しい人の婚約者に将来的になれるなんて信じられないのだ。
何しろ私は貴族令嬢の中では最悪の部類だと思う。
お母様が生きている間は、私はちゃんと男爵家の長女として、優遇されていた。
いえ、花よ蝶よと大切に育てられていた。
私は透けるような銀の髪で、目は緑眼だった。
貴族の中では平凡な容姿なのだと思う。
小さい頃、一緒に遊んでいた男の子が「ちび」とか「ガリガリ」とか「地味顔」とか言っていじめられていた覚えがあるから。
その子は金髪で碧眼、見た目はとてもきれいな顔をしていた。
女心にこんなきれいな男の子もいるんだと思ったくらいだ。ただし性格は最悪だったけれど……
「そんなに平凡な顔じゃ、嫁の貰い手もいないぞ」
って言われて、幼心に傷ついた記憶があった。
そんな私の8歳の時にお母様が流行病で死んでしまった。
私が最初に流行病にかかって、お母様が看病してくれていたらお母様自体がかかってしまって、私は治ったのに、お母様はあっさりと死んでしまったのだ。
お母様が死んだのを知ったのは私が全快してからだった。
私は嘆き悲しんだ。
そして、私がお母様の死を忘れられない間にお父様が新しいお母様と妹を連れてきたのだ。
「さあ、クラウディア、今日からお前の新しいお母様と、妹のカミラだよ」
「えっ?」
私は父の言った意味がよく判らなかった。
お母様が亡くなってからまだ1年も経っていないのだ。そんな時に新しい母親なんて連れてくるか?
それも妹まで。
更にその妹はお父様によく似ていたのだ。
「さあ、クラウディア、ご挨拶なさい」
父の言葉に私は絶句した。
そんな母親を亡くしてショックを受けている子供の前に、いきなり継母なんて連れてくるか?
私は涙目で何も言えなかった。
「さあ、どうした、クラウディア」
父が挨拶を促す。
「どうしたの? お口は付いているでしょう」
その女が父の尻馬に乗って言ってきた。
何か嫌な女だ。
こんな継母は嫌だ
「嫌よ、こんなお
思わず私は正直に言ってしまったのだ。
パシーン
次の瞬間、私は頬に痛みを感じて吹っ飛んでいた。
ガン
そして何かを頭に打ち付けたのだ。
その瞬間だ。私は頭に大量の記憶が入ってきて気を失ってしまったのだ。
私は前世、ブラック企業に勤めていた。その企業はノルマが全てで毎日毎日ノルマに追われていた。
朝は始発電車で出勤して、夜は終電まで。どれだけ必死に飛び込みセールスしても、ノルマは中々達成しなかった。そして達成しないと、くず、バカ、アホと言われるのは日常茶飯事。特に月末は異常で、ノルマを達成しないと延々と怒られ続けるのだ。今日もそのハゲの課長に延々と怒られて、帰りは終電だった。
もう生きてても仕方がないと思い詰めて、思わず入ってきた電車の中に飛び込もうかと思った。
でも、その瞬間に田舎の母の顔が思い浮かんできたのだ。
私は母のことを思うと、とてもそんな事は出来なかった。
そして、その日もアパートに帰ると、そのまま布団の中に入って寝てしまったのだ。
そのあたりから意識が朦朧としている。
そう、覚えていないのだ。
恐らく過労死かなにかしたんだと思う。
過労死するほど働くなんて、なんてバカなことしたんだろう。
でも、氷河期の就職組なんて、就職先がなかなかなくて運悪くブラックに入ることはよくある事だ。
特にくじ運が悪い私は……
でも、早くに死んで、親には本当に悪いことをしたと思う。
私はやっと目を覚ました。
後で聞いたところ、3日3晩寝込んでいたらしい。
寝ていた場所は立派な寝室ではなくて、場所は離れというか、母屋の横の掘っ立て小屋だった。
倒れた私は、適当に手当てされて、この離れに放り込まれたのだ。
父の連れて来た継母を見て、こんなの要らないと言ってしまったからだと思う。
我ながら馬鹿な事を言ってしまったものだ。
まあ、後悔しても仕方がないけれど……
その事に怒って、継母達に文句を言った使用人達はあっさりと首になったそうだ。
起きた時には私の知っている使用人はほとんど残っていなかった。
皆、見知らぬ新しい使用人になっていた。
そう、オイシュタット男爵家は完全に継母の采配のもとになっていたのだ。
食事も最初の頃は使用人の食事が与えられていたが、いつの間にか、その品数がどんどん減っていって、いつの間にかほとんどなくなった。継母達は私に食事も出さないらしい。
恐らくこれは、前世の記憶で異世界転生というやつじゃないかと私は思いついた。
私は仕事や勉強で忙しすぎて出来なかったけれど、高校時代の友人でラノベゲームや小説が好きな子がよく話してくれていた。
そんな話の中で良く聞いていたのが、継子いじめだ。
でも、待てよ! これはひょっとして私はゲームの世界のヒロインという者に転生したのかもしれない。
ラノベとかゲームに詳しい友だちが良く言っていたけれど、ヒロインって平民とか、貴族の中でも身分の低い男爵家出身が多いらしい。
「それも父親が再婚して、やって来た継母やその連れ子にいじめられてめちゃくちゃ可愛そうなのよ」
そのラノベ好きな友人の塔子は嬉しそうに何も知らない私に教えてくれた。
「その虐められているところに白馬に乗った王子様が助けてくれるのよ」
塔子は喜々として語ってくれたが、それって白雪姫とかおとぎ話の世界の話ではないのだろうか?
まあ、ラノベもおとぎ話と言えばそうだけど……
私はそれを思い出して、少しだけ嬉しくなった。
そうよ。ブラック企業で悲惨な目にあったから神様も私のことを憐れんでくれて、この異世界にヒロインとして転生させてくれたのよ。
私は有頂天になった。
でも、待てよ。
何しろ私は運が悪いのだ。
旧帝大の入学試験は一点差で落ちた。センターの倫理の最後のカンでやった問題が間違っていたのだ。
と滑り止めで受けた有名私大は名前を書き忘れて落ちたし……商店街のくじもティッシュ以外当たったことがなかった。
やっと後期入試で受かった三流大学だったけれど、就職するときは氷河期で、就職したところがブラックだった。それもいわくつきの。
友人たちはブラックに入ったって言っていたけれど、22時には帰れてた。
毎日始発終電なんて私くらいだ……それも休みなんてほとんどなかった。
それほど運のない私がヒロインに転生できるなんて幸運な事がありうるだろうか?
そもそも、オイシュタット男爵家なんて平凡な名前なんて本で読んだ記憶はない。
最もほとんど読んだことはなかったけれど……
カッセル王国? うーん、ゲームでも聞いたことはない。
それに、銀の髪なんておばあちゃんの白髪と殆ど変わらないんじゃないのか?
ふうっ、私は大きくため息をついた。ため息をつくと幸運が逃げるって言うけれど、ここは本当にため息を付きたかった。
もともと私はくじ運が悪いのだ。
そんな私がヒロインなんかに転生できるわけはないのだ。
どこかのゲームの世界のモブ以下の存在か、ゲームと全く関係ない異世界かどちらかだ。
私は自分で結論付けたのだ。
そして、そんなモブ以下の私が継母に虐められて死んでも誰も気にしてくれないだろう。
現実に私はここで餓死しようとしているのだから。
本来は私のお母様が男爵だったから、それを引き継ぐのは私のはずだったけれど、未成年は力はないのだ。今は入婿のお父様が仮に継いでいて、私が成人したら本来は私が継ぐのだけれど、私がいなくなれば、妹のカミラに婿を迎えて、継がすのも可能になるのだ。そう、私さえいなくなれば……
わたしに有力な親戚がいたら別だったけれど、我が家はあまり親戚付き合いをしているなんて聞いたこともなかった。唯一、昔、遊んだ男の子は確か遠い国の貴族の息子だったような気がしたけれど、どこの誰かは判らなかった。このままでは私は餓死させられて、殺されかねない。
どうしよう? 私は命の危機を感じた。
空腹で死にそうになっていたときだ。
ダアーン!
大きな音共に鍵のない私の部屋が蹴り開けられた。
「いつまで寝ているの?」
慌ててそちらを見ると、継母のフリーダが侍女長のゲルダと妹のカミラを伴って仁王立ちしていたのだ。
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次の更新予定
2024年11月29日 19:00
男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです 古里@3巻発売『王子に婚約破棄されたので @furusato6
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