僕が もっと桜を嫌いになった理由
悠真
1
先週の花見デートの約束が仕事の都合で飛んでしまい、仕切り直しで臨んだその夜。
僕はもともと地味に咲く菜の花派で、桜は派手すぎて、それが白々しくもあり、多くの人々にやたらともてはやされるところが、どうも好きになれなかった。
よって、もしデートという名目がなければ、あえて花見をすることもなかったはずだった。
アサミを家のそばまで車で迎えに行き、桜祭りがあるという比較的近所の桜の名所を訪れた。
丘の上にある神社に至る坂道の脇に、ライトアップされた桜がたくさん咲いているという。
例年4月中旬がピークで多くの地元客でにぎわうらしい。
なぜかそばに専用駐車場がないので、僕らは互いに仕事上がりで疲れているのに、けっこうな道のりを歩くはめになった。
それでも道中、神社のものに違いない燈籠がいくつも並んでいたためか、歩を進めれば進めるほどに、ふくらむ期待に僕もアサミも満面の笑みを浮かべ息を弾ませた。
いよいよ丘のふもとまで来て、坂道になった。
ネットのガイドでは燈籠に火が灯り、提灯もぶら下がる幻想的な桜並木を眺めて登るはずだったが、明かりは一切なく、真っ暗闇が大きな口を開けているきりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます