ジュルネ〜一度は諦めた演者の夢をもう一度〜この学校の芸能科にはあまりに有名人が多い

青天

プロローグ

雨、この音を聞くとあの日のことを思い出す、だから僕は、雨が嫌いだ。


 だけど、その日も雨が降っていたんだ



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5月6日

 ゴールデンウィーク明け、俺はいつも通りリモートで授業を受ける、数理なのに英語の授業がある、全国でも一般的らしい、俺は、英語は嫌いだ、英語を聞くと伝説の公演を思い出す、俺はあの公演が一番好きだけど、一番思い出したくない。

ちょうど4時限目、スマホがジリジリと音を出す、消音モードなのであの呑気な音はでない、どうやら妹からのメールだ。

『詩、やばい、午後の実習授業に使う台本忘れた、たぶん机の上にあるから、学校まで取ってきて。』

 バカすぎると双子ながら思ってしまった、まあ、よく1ヶ月持ったと言いたいところだ。あいつは同じ高校の芸能科に通っている、俺は特待で数理科だ。

 そして、あいつの台本を取って外へ出る、何やら文化祭でコンテストがあり、そのコンテストのための練習を午後の授業でしているようだ。家を出ると雨の音が聞こえてくる。

 ザーーザーー

 いつになってもこの傷は言えないんだなと改めて実感する。傷であるのに、その奥には泡沫の楽しい記憶、思い返すと、可惜夜のような日々。


 『詩は、俺なんかよりもすごい役者になれるよ。』

 

   歩けば歩くほどに精神が蝕まれる

 『約束だ、俺は詩を見守るから、詩は立派な役者になるんだ』


   発作が起こる、やはり無理だったか、PTSDだ、校門に入れたから、誰かに助けを求められる、あれ、体が動かない、目の前にはあの日の景色が広がっている、そして、意識が遠のく


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眼を覚ます、どうやら、保健室に連れ込まれたらしい、

「大丈夫ですか?」

 そこには、妹でも、保健の先生でもない美少女がいた、たぶんこの子が運んでくれたんだろう、安堵と感謝と同時に彼女の美貌から俺は、妹の台本の件を思い出す、

「保健室まで運んでくれてありがとうございます、僕はもう大丈夫です、それと、いま何時ですか?」

「それはよかった、16:30だよ」

 終わった、ベットの傍らにある机に置かれた台本を見て、絶望する、奏がきれてしまうと、癇癪を起こしたあいつは、1週間ウザくさるのだ。その考えに至ると同時に、美人さんに声をかける


「1年b組に連れて行ってくれませんか?」

「えっ、教室の場所もわからないぐらいの状態なの?先生呼ばなきゃ「待って、僕は理数のリモート生なんです。だから知らないだけなので、症状がそこまでひどいんじゃないです。」

「そうなんだ、台本持ってるし、とってもかっこいいから、芸能科の隣のクラスなのかなって思った。じゃあ、私がこの学校を案内してあげるね。」


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「そして、これが放送室と収録スタジオだよ、ここでは声優を目指してる子達が練習をしたり、声優ラジオ風の校内放送を行ったりするんだよ。」

  彼女はこの広い敷地にある多くの施設について丁寧に説明してくれる。そして、彼女と話していて一つ気づいたことがある、彼女はとてもフレンドリーでその声はハキハキしている。十中八九、芸能の何かで成功を収めているだろう。その証拠に周りの目が俺に突き刺さる。その上で俺は、彼女がアイドルか声優であると考察する。なぜなら、彼女は可愛い系の顔をしているのだ。16~18の間だと、可愛い系の顔は事務所の意向でアイドルを行うことが多いし、彼女らもアイドルをしたくて事務所に入るのだ。だが、彼女の話し方を聞いていると、声優の線も拭いきれない。

 俺はあまりテレビを見ない、なので俺は彼女の名前すらも知らない。しかし、彼女は俺が彼女のことをよく知っているように俺に接している。彼女のことを知らないと不都合なことがこのあと起こる(主に妹関連で)予感がするので、彼女が声優であることにかけ、今いる収録スタジオで彼女の名前と活動内容を聞いてみる。

「失礼なことを聞いても良いですか?」

「いいよ、私そんなことは慣れてるんだ。」

「自分、芸能人に疎くて、なので名前を教えてください。」

  収録スタジオが凍りつく、周囲の声優の卵からの視線がとても痛い、まじかよって顔をしている。しかし、彼女は笑っていた。

「私の名前は、明星天音、声優をしてます。うちは芸能一家って言われてて、有名どころだと明星瑠璃とか、私の従兄なんだけどね、男だよ瑠璃って名前だけど。」

 

   俺は衝撃で固まってしまう。だって、この子は俺の===なのだから。


「そうなんだ、従兄さんのことも知らなかったです。芸能一家なんてすごいですね。」

「でしょ、で君の名前は?」

「宵月詩です。」

「ねえ、宵月ってあの双子姉妹アイドルの親戚なの?妹が芸能科に居るって言うし。」

「はい、母がそうです。」

「やっぱそうなんだ、詩くんイケメンだしね〜、なんで芸能科じゃないの?」

「性格に合わないからです。」

「そうなんだね、性格は十人十色だから、双子でも違うこともあるしね。」

「なんで、双子だと思ったんですか?」

「勘だよ、あとは私の妄想かな、親子どっちも双子で、みんなアイドル級の顔って萌えるなーって」

「そうなんですね、なんで声優を目指したんですか?」

「それはね、瑠璃兄(るりにい)に憧れたからなの、だけどね、兄が死んじゃって、師匠がいなくなってさ、親がいろんな先生呼んでくれたんだけどさ、うまく私には響かなくってさ、でも演じることは諦めたくなくて、声優にしたんだ、私さ、文化祭の演劇コンテストに出ないからこうして君を案内しているんだよ、『本当は出たかったんだよね』」

 その言葉が俺の耳に響く、そして、互いに沈黙してしまった。俺は俺に問う、また逃げるのか?、しかし言葉が出ない、結果、彼女が先に言葉を紡いだ

「ごめんね、初対面の詩くんにこんな重いこと言っちゃって、今のは忘れて、切り替えていこう。」

 彼女は笑っている、だが俺には分かる、これは偽りの笑顔だ、どうにかしないと、



「天音さん、僕と一緒に演劇コンテストに出ませんか?」


これが禊になるなら、これで彼女を救えたら、俺はそんな思いを溢さないように、発作を抑えながら彼女に言った


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 アイドルやバンドをする特殊な形態のアイドルグループ"East Moon"のリーダーである私、宵月奏には、双子の兄がいる、そして、その兄に台本を取ってくるように頼んだ、だが、16:30になってもまだ台本が届かない。一見兄が悪いように見えるが、私は兄をこの大雨の中外へ出したことを後悔している。兄はいろいろあってPTSDなのだ、あの日が大雨だったために、兄は大雨だと発作が起こるのだ、普段なら怒るが私は理解のある妹、兄のことをとても心配しているのだ。

 そして今、気が気じゃなくて練習に身が入らなかったので、兄を探しに保健室へと向かっているのだ。なのだが、私は放送室で足を止めてしまっている、ありえんくらいの人だかりができているからだ。この学校で人だかりができるのは珍しくない、私だって芸能科以外に行くと人だかりができる。が、こんな人だかりは見たことない、普段の私なら突っ込んでいき、人だかりの真ん中にあるものを確認するだろう、だが、そんなことをするのは妹失格、というか苦しむ兄を置いて、娯楽に身を投じる、人間失格だ。人間失格と頭の中で繰り返す、すると、さっきまで選択を悩んでいたのが嘘のように、保健室へと足が進んでいく、さすが私、妹として当然だよね、こんなところで止まる妹は妹の風上にも置けないよ。

さっきまで止まってた、なんのことやら、私の頭からは都合の悪いことは消えるし、私の耳は私が欲しい情報をいち早くキャッチするんだよ。いつも通り頭の中で会話していると、私に取って都合のいい情報が入ってきた

「詩くんすごくかっこいい」

「あんなイケメン家にいるなら、幸せだろうな」

 聞き捨てならない情報だ、どうやら兄は発作が治ったのにも関わらず、私のことまで来ずに、放送室でなにかしているようだ。この人だかりも兄によるものであると捉えると、納得がいく。

 これは激オコ案件だ、心配していたというのにこの兄は、私は怒るため、兄がいるであろう群衆の真ん中へ突き進む、すると兄の声が聞こえてきた。


「大丈夫、天音さんは天才だと俺は信じてるから、俺と一緒にステージに立とう。」

「でも「天音さんは観客を見惚れさせる力があるよ、だって、この俺が見惚れたんだから、たしかに、いままでのことがあって心配かもしれないけど、俺を信じて。」


 あろうことか、兄はあの明星天音に告白していた、衝撃すぎて怒っていることがどうでもよくなった。





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みなさん、はじめまして、青天です、ジュルネのストーリーを楽しんでいただけてますでしょうか?

さて、この最後は奏と詩、天音の今後を大きく変えるシーンです、一人は本当の夢へと駆け出し、一人は自身のが経験した過去のある出来事に向き合い、一人はかわいい義姉ができたと喜び、先走り、今後あるトラブルを巻き起こします。拙い文章ですが、これから面白くなっていくので是非、最後までお付き合い願います。


コメントで第1回好きなキャラ投票を行います。まだはじまったばかりですが、妄想とともに、好きなキャラを書いていただけると幸いです。


 

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ジュルネ〜一度は諦めた演者の夢をもう一度〜この学校の芸能科にはあまりに有名人が多い 青天 @aotenjo

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