第6話 穴とケース

 バター猫の入ったケースを機械から外し、僕たちはエレベーターの外へ出る。柵は付いているけれど、下を覗き込むと地面はだいぶ遠い。心臓に悪いなあ。あまり、何度も下を見ないようにしよう。


「ラビット。俺は後ろからついていくぜ」

「僕に先を進ませるのかい?」

「だってお前がずっと来たがってた上の世界だからな。それに前から危険が迫ってもお前なら、すぐに反応できるだろ」


 なるほど。僕に盾になれってんだな? まあ、良いよ。そういうことは僕の担当、機械に関することはメカニックの担当ってわけだ。別に構わないさ。


「……了解。ちゃんと、ついてきなよ」

「分かってる。お前を信頼してついていくぜ」


 エレベーターはそのままにしておく。僕たちは暗い道を進みながら、前方への警戒を怠らない。暗いけれど、先が全く見えないというほどではないね。とくに問題はなく通路の先にある扉まで到着した。一本道であってくれて助かったよ。で、問題はこの扉が開くかどうか。見て、触れて確かめる……カギはついてないみたい……困ったな。どうやって扉を開けよう。


「ラビット。こっちだ」


 声をかけられて後ろを向くと、メカニックが壁をトントン叩いていた。壁を注意深く観察してみる。あ! 壁に穴が空いてる。


「ここにバター猫のケースが入るんじゃねえのか?」

「でかした! 流石はメカニック!」

「でかしたかどうかは、試してみなくちゃ分からんぜ。とにかく、穴にケースが嵌められるかを試してみよう」


 メカニックの提案を試してみる。壁の穴にケースは上手く入った。ゴゥンと音がして仕舞っていた扉がゆっくりと開いた。その先には緑色のランプが並ぶ通路。緑色のランプの光は優しくて、眩しいとは感じない。僕たちが下の世界からやって来たのを静かに歓迎してくれているみたいだ。


「おー思った通りだ。先に進むぞ。ラビット」

「ちょっと待って。ケースを持っていかないと」

「お、おお……そうだな。つい興奮してしまった」

「なんだかんだメカニックも乗り気じゃんよ」

「ば、馬鹿。乗り気で悪いか」

「悪くはないよ。ただ、君と一緒に冒険できるのが楽しい」

「……ふ、ふぅん。そうか」


 メカニックが鼻の頭を掻いている間に僕はケースを穴から外す。扉は、すぐには閉まる様子はない。このまま空きっぱなしなんだろうか? ま、別に何か困るわけでもないし良いか!


「よし、行こう。僕が先に進むからね」

「ああ、俺は後ろからついていく」


 そうして僕たちは扉の先へ、緑色の灯りに照らされながら進んでいく。地上への入り口はきっと近い。ワクワクしてきたぞ!

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