バター&トースター&キャット
あげあげぱん
第1話 月の地下世界
地下世界はべらぼうに暗い。僕たちは暗闇だらけの世界で、天井の隙間から漏れ出る光を頼りに生きている。地上はとても明るい場所らしくて、地下暮らしは惨めなもんだ。
どうして僕たちが地下に暮らしているのか。それは過去の地球の環境汚染と、お金が無かったご先祖様たちが理由だ。大昔に地球はもう人が住めない程に汚染されて、ご先祖様たちは新しい星にやってきた。ここは月というそうだ。新しい土地は地球程に広くはなかったんだよね。どうしてか、地下の方が土地が安くて、お金がない人たちは地下にしか土地を買えなかった。ご先祖様を恨んだりはしないけど、もし地上世界に生まれていたらと考えることはあるよ。
僕は光の漏れる隙間を眺めてる。あの隙間からは毎日ゴミが落ちてくる。臭いものや、要らなくなったものは地下の僕たちに押し付けられるって訳だ。それは、暗い世界に住んでることと合わせて惨めな気分にさせられる。だから、僕はいつか地上へ行く。絶対に、あの明るい世界へ行ってやる。
今、故障して使われなくなった大型エレベーターの修理を友達と試みてる。機械の修理には、地上から捨てられる部品が必要だ。今日も、ゴミ捨て場に必要な部品を探しに行こう。そうすれば頼れる友達がエレベーターを使えるようにしてくれる。きっとね。今は、それが僕の希望だ。
友達が言うには、大型エレベーターを動かすためのエネルギーが足りないらしい。なんでもバター猫というパーツが必要なんだとか。バター猫……どんな形のパーツなんだろう? 聞く話によると足が四つあって香ばしい匂いがするらしい。それらしいものを見つけたことはないけど、今日も探す。頑張るぞー。おー!
さ、行こう。僕は拾い物屋の期待の新人。根気よく探せば見つけられないものはない。ゴミ捨て場に落ちてくるゴミに潰されることさえなければ地上へ上がれるチャンスはいくらでもあるんだ。でもゴミに潰されるのは想像するとやっぱり怖い。なんて考えているうちに目的地に到着した。臭い、きたない、危険。三つのKが揃った要注意地点だ。気を引き締めていかないと!
ゴミ捨て場を探索する。まともな足場なんてなくて、何度もふわりとジャンプを繰り返しながら移動する。月は重力が地球よりは弱いらしくて、こういう移動の仕方は地球の人たちには出来なかったらしいね。変なの。
見慣れた機械部品……腐りかけの食べ物……古びた衣服……よく見るものは沢山落ちてるけど、バター猫は落ちてない。たまに売れそうな物を拾いながら、目的の物を探して回る。んんー、根気よくやるしかないねー。
僕は上を向きながら延びをした。その時、天井の隙間から落ちてくるものが目に入った。大きくはない。むしろ小さい。けど、隙間から漏れる明かりの中で、そのシルエットは結構目立つ。それはこっちに落ちてくる。そう思った時には僕の体は回避動作を終わらせていた。それは回転を繰り返しながら程なくして、僕の近くに着地……しなかった。着地することはなく地面の少し上の場所で回転を続けている。足が四本あって、ゴミ捨て場では分かりにくいけど、香ばしい匂いをしている。つまり……!?
え? えぇ!?
これって!?
「バター猫だ!」
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