いじめの一環で抱かれた私、初めてを奪った貴女に恋をする。
水瀬
事実は時に小説よりも奇なり。
「ねぇ、泣くほど気持ちよかった?」
下品で耳障りな笑い声を背景に、透き通った綺麗な声音で言われる言葉。
嬉々とするその声主達とは反対に、ベットに横たわる私はただひたすらに流血する下半身の痛みに耐えるように泣いていた。とても声が出せる状態じゃなかった。
「奴隷の分際で無視?…いい度胸」
それが彼女の機嫌を損ねた。
私はまだ脱がされていなかった上着を剥がれる。ブレザー、リボン、そしてボタンを弾き飛ばして乱暴に開けられるワイシャツ。
「うわ、デッカw」
「あそこまで大きいと逆にキモいw」
「つうか下着まで地味w」
「さすが地味子w」
また聞こえてくる背景達の声。
「光栄に思いなさい。この私があんたの全部貰ってあげるんだから。」
それに混じって聞こえるから、より一層際立つこの美声。
私はおかしくなったのだろうか。
気付けば私はその美しい声を持つ美しい存在に手を回し、邪魔で不快な笑い声を掻き消すように必死に喘いでいた。
◆
のり子。
地味で地味で地味な私にはぴったりの名前だ。
人付き合いも苦手で、他人と目を合わせる事も出来ない。鼻先まで伸ばした前髪が私の最強装備。
そんな私が、いじめにあうのは必然だったのかもしれない。
私立の高校に入学してたった1ヶ月。
そんな短い期間で私は、あらゆるジャンルのカーストで上位の存在、
七星グループといえば、世間に疎い私でも聞いたことがあるほどのビッグネーム。
七星さんはそこのご令嬢らしい。ようするに超がつくほどのお嬢様。
その強力な後ろ盾があるおかげで、学校でもやりたい放題。
ピアス、ネックレス、メイク、地毛なのか染めているのか分からないが派手な金髪、胸元まで大きく開けたワイシャツ、ぎりぎりを攻めたスカート丈。校則違反の全部乗せだ。
それでも咎められないのは、この私立高校が七星グループのバックアップを受けているからだという噂。
現に七星さんに注意できる人間は、先生を含めてこの学校に誰1人としていない。
この学校は完全に彼女のテリトリーだった。
そして地味で根暗な私は、そんな彼女のテリトリーに裸でネギだけしょってノコノコやってきた格好の
最初、私を襲ったのは言葉の暴力だった。
『地味』『キモい』『ブス』…
私個人に対して言っていたその言葉達も、気付けばクラスメイトや先生がいる場所で見せしめのように言われるようになった。
当然誰もそれを咎めることはしない。助けてなどくれない。
ただただ私は大衆の面前で尊厳や小さなプライドをズタズタにされ続けた。
それでも不幸中の幸いというべきか、暴力によるいじめはなかった。
見えるところに傷はない、両足で立って歩ける。
それならば、私に学校に通う以外の選択肢は無かった。
…何度嫌がらせを受けようとも登校してくる私。
でもそんな態度がついに七星さんを本気で怒らせた。
「ねぇ、あんた。あれだけいじめてあげたのになんでまだ学校にこれるの?…不快なんだけど。」
ある日のホームルーム中。
先生がまだ朝の挨拶をしている途中で、私の席の周りに集まる七星さんと取り巻き達。
そんな状況でも、クラスは気に留める様子はない。
私はいつものように、無言でただ頭を下げた。
それを笑われて、終わるのが日常だ。
「むかつく。…立ちなさい。」
しかし、その日はそれで終わらなかった。
胸ぐらを掴まれて、勢いよく立たされる。
「あんたさ、処女?」
そして、何の脈略のない質問を投げかけられる。けれど、七星さんにとってそれは普通の事。私はどんな質問にも答えなければならない。
…コクリ。
私は小さく頷き、肯定する。
するとドッと湧き上がるのは、七星さんをとりまく名前も知らない女達。
「まぁ、そうだよねw」
「こんなキモい奴に興奮する男いるわけないよねw」
「おっぱい大好き星人のキモヲタ君ならワンチャン?w」
「あ〜確かにwそこのガリガリメガネ君とか好きそう!wキモいしお似合いじゃね?w」
「ふは!2人がヤッてる所想像したらキモすぎw」
「はいはいみなさ〜ん!四ノ宮のり子は処女で〜す!w」
汚い笑い声が七星さんの機嫌を取ろうと私を極上の餌にしようとする。いつものことだ。
もう慣れた。こんな辱めも、もう慣れたんだ。
私は俯いて、七星さんが満足するのを待った。
「先着で1名!四ノ宮のり子ちゃんの処女、欲しい人にあげちゃうよ〜w」
あぁ。そっか。今日のいじめは少しだけ過激な物になるんだ。
女の子にとって大事な物のそれ。
けれど、私は別にそれに価値を見出しているわけではないから、避妊さえしてくれるのであれば…仕方ないと割り切れる。学校にさへ登校できるのならば、何でもいい。
心の底で、私は受け入れる覚悟をした。
けれど、とりまきの1人が大きな声でその言葉を言った瞬間、七星さんはそのとりまきの方へ歩きだして胸ぐらを掴んだ。
そして、七星さんはそのまま綺麗なフォームで勢いよくとりまきの1人を投げ飛ばす。
とりまきはガシャんと大きな音を立てて周りの机に身体をぶつけながら床につっぷした。
きゃあっ、と一瞬だけクラスがざわめいてから、すぐにシーンと静まり返る。
場が凍りついた、とはこの事だ。七星姫乃によって完全にこの教室内の時間が静止した。
「…あんたたち、今なんて言った?」
そしてその時を動かすことができるのは、時を止めたこの人だけ。
七星さんが冷たい声音で言うと、とりまき達がびくりと肩を震わせた。
「え、…え?」
「あ、あの…」
「これは私の
「え、あ…」
「も、申し訳ありません…」
「…ねぇ、勝手なことしないでくれる?」
びくびくと震えるとりまきたち。
私はその人達にはいっさい目をくれず、ただただ七星さんを見つめていた。
するととりまきたちに言いたい事を言った七星さんは、再び私に視線を移した。
「安心しなさい、あんなブサイクに私の奴隷は抱かせないから」
クラスの名前も知らないメガネ君はとんでもないとばっちりを受けているが、私は気にならない。
それよりも、七星さんのその独占的な視線に胸が大きく跳ねた。
「この私があんたの全部、奪ってあげる」
そしてその言葉に、私は無意識に首を小さく縦に振っていた。
◆
さすがの七星さんも、教室で私を犯すことはしなかった。
授業中にもかかわらず、七星さんちが管理する別荘のような所に連れられて、大きくて真っ白なベットに転がされて。
所謂大人の道具というやつを使ってひたすらに汚された。
無機物により処女はあっけなく散らされ、最初は痛くて痛くて声を殺して必死に泣くことしか出来なかった。こういうことははじめてだから普通を知らないけれど、多分酷い抱き方だった。
けれど最後の方は、私に覆い被さり、私の全身に舌を這わせながら腰を動かす七星さんに謎の感情を覚えて、私は七星さんを必死に抱きしめて、彼女を自分から受け入れていた。
とりまきたちは、そんな私を見て『キッモw』と汚い笑い声を上げ続けたが、七星さんは違う。
私を見下しながらも熱をくれる。こんな何の取り柄もない私を抱いてくれる。汚いと罵りながらも舌を這わせてくれる。
何よりも、七星さんはとりまき達に一糸も纏わない私を絶対に触らせなかった。ベットに上がる許可も出さなかった。
きっと自分の手で私を汚したかっただけなんだろうけど、ある種の独占欲であることには変わらない。教室での言葉と相まって、私はどこかそんな七星さんに愛しさを感じてしまっていた。
こんなに酷い事をされているのに、今はただ七星さんだけを求めていた。
誰からも必要とされなかった私、だけど七星さんは私を必要としていた。己の欲求を満たす奴隷として、私を必要としてくれていた。
それに気づいたら、ダメだった。
事実は時に小説よりも奇なり。
私は私をいじめる酷い貴女に恋をした。
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