おっさんの、取捨選択の人選法

白鷺(楓賢)

本編

人間関係は、誰もが避けられないテーマです。日々の生活や仕事の中で、多くの人と出会い、付き合い、時には衝突し、また別の道を選ぶこともあるでしょう。私もこれまで、さまざまな人との出会いや別れを経験してきました。その中で感じたこと、それは「誰と付き合うかが、自分の人生を大きく左右する」ということです。


私は、発達障害を抱えながら生きてきました。そのため、障害が理由で理不尽に馬鹿にされたり、無視されたりすることも数多くありました。社会の中で、他人との関わりを避けて生きることはできません。職場や学校、地域社会など、どこにいても人と人とのつながりがあり、その中で自分の居場所を見つけなければならないのです。しかし、そうしたつながりの中には、必ずしも良好なものばかりではなく、時には自分を傷つけるものもあります。


ある時、私は決心しました。「もう、誰とも関わらずに、一人で生きていこう」と。自分を守るために、他者と距離を置くことが最良だと考えたのです。けれど、その考えはすぐに限界を迎えました。人と関わらずにいると、孤独が心をむしばみ、やがて自分の中の負の感情に飲み込まれてしまうことに気づいたからです。孤独には、多くの弊害があります。孤立することで、冷静な判断ができなくなり、誤った選択をしてしまうこともあるのです。


そして、私は悟りました。人と付き合うこと自体を避けるのではなく、「誰と付き合うか」を選ぶことが重要なのだと。世の中には、残念ながら他人を利用しようとする人や、支配しようとする人、攻撃的で傷つけてくる人が存在します。こうした人々と無理に関わることは、自分の精神をすり減らし、結果的に孤独以上の苦しみを味わうことになるのです。


過去に、私は「誰とでも平等に付き合うべきだ」と意見されたことがありました。しかし、私はそうは思いません。誰とでも仲良くすることは不可能ですし、無理にそれを目指すことは、自分自身の負担にしかなりません。特に、いじめや心の傷を経験した人にとって、他者と接することは大きな勇気が必要なことです。それでも、差別や偏見を持たずに「誰となら付き合えるか」を冷静に見極めることは、自分を守るためにも、心の健康を保つためにも必要です。


人間関係において大切なのは「区別」です。差別とは違い、区別はお互いの違いを理解し、尊重することです。相手がどのような価値観を持っているのか、自分にとって良い影響を与える相手なのかを見極め、必要であれば適切な距離を保つことが重要です。時には、自分が今所属しているグループから抜ける勇気も必要でしょう。新しいグループに飛び込むことで、新たな価値観や経験を得られるかもしれません。


もちろん、どんな人と付き合っても、意見の違いから衝突が起こることは避けられません。同じ考えを持たなければならないというわけではなく、むしろ違う意見を持つことが自然であり、健全なのです。重要なのは、その違いを認め合い、尊重し合うことです。もしも意味のある衝突であれば、それを通じてお互いの理解を深めることもできるでしょう。逆に、意味のない衝突であれば、そこから離れることが自分を守るための選択になります。


発達障害を持つ私にとって、他者との関係は時に大きな壁になります。それでも、障害の有無にかかわらず、自分を理解し、支えてくれる友人は必ず現れると信じています。だからこそ、私は人間関係を恐れず、少しずつでも前向きに向き合っていきたいと思います。


私たちは、自分の人生の時間をどう使うかを考えなければなりません。どんな人と付き合い、どんな価値観を共有し、どのような未来を共に描いていくのか。それを見極め、選び取ることが、豊かな人生を生きるための大切なステップだと、私は信じています。人間関係は簡単ではありませんが、少しずつ、自分にとって大切な人たちを見つけ、その関係を育んでいくこと。それこそが、本当の意味での「生きる力」なのではないでしょうか。

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おっさんの、取捨選択の人選法 白鷺(楓賢) @bosanezaki92

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