『街角 no.134~140』Ema & bros.(2003)シルクスクリーン
最後にご覧いただくのはこちらの絵画たちです。
こちらのアーティスト、Ema & bros.をご存知の方も多いのではないでしょうか。2000年頃から顔出しをせず、匿名で活動していたストリートアーティスト集団です。
2000年から2010年にかけて、世界中の公共の場で作品を描き、社会に対する鋭い視点とメッセージ性の強さから、若者を中心に大きな支持を集めました。
特に、ステンシルを使ったストリートアート作品は、その独創性と社会への問いかけから、オークションで高額取引され、2000年代を代表するアーティストとなりました。
シルクスクリーン作品も数多く残しており、日本でも展覧会を開催するなど、幅広い層から注目を集めました。
しかし、2010年以降、彼らの活動は突然途絶えてしまいました。
長らく謎に包まれていた彼らの素性は、2018年4月に起こった事件によって明らかになります。
オーストラリアのメルボルンで、約8年ぶりにEma & bros.の新作が発見されたのです。
ただし、それは未完のまま。
描きかけの絵のそばには、メルボルンで長らく行方不明者として捜索されていたメンバーの一人が、瀕死の状態で見つかりました。
一命を取り留めたメンバーの証言により、Ema & bros.のメンバーは5人で、その全員が行方不明であることが判明しました。
彼らの活動拠点であるアトリエに警察の捜査が入ると、そこにはおびただしい数の街の風景を描いた絵が乱雑に置かれていたそうです。
そのうちの5枚が、今皆様の目の前にあります。
この絵画はいずれも実在の街が描かれています。
ロンドンやニューヨーク、ケープタウンといった首都や大きな都市の雑踏が、建物だけでなく人物まで緻密に描写されています。
ここにあるのは、東京、名古屋、大阪、札幌、福岡といった日本がモチーフになったものです。
皆さまぜひ近くに寄ってよく見てみてください。
馴染みのある風景が描かれているのを見るのは大変興味深いと思います。
さて、この絵画はEma & bros.のメンバーがそれぞれ描いたものでした。
「みんな気が付けば描いていた。なぜこんなに増えたかはわからない」
事情聴取でメンバーは震えながらそう言いました。
そして、「一人ずつ、絵に喰われていなくなった」と。
200枚以上あったこの絵にはすべて買い手がつき、全世界の美術館やギャラリーに展示されました。
絵を取り巻く謎が人々を惹きつけ、現在でも多くの観客を魅了しています。
この絵を見ると、ごく稀に自分の姿によく似た人物を見つけることがあるようです。
そして、これは単なる噂なのですが、自分の姿を絵の中に見つけると近いうちに行方不明となってしまうそうです。
実際に捜索願が出されている例もあると聞きますが、単に偶然かもしれません。
あら、おひとり青ざめている方がいらっしゃいますが、ご自身の姿を見つけてしまいましたか。
あくまでも噂ですのでどうかご安心を。
でも、お帰りの道中は気をつけてくださいね。
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