愛、地球外家族物語

堀川士朗

第一話

 

 「愛、地球外家族物語」

       (第一話)


          堀川士朗



登場人物


おじいちゃん。

ミリオ。75歳。

何かの工作機械の特許をいくつか持っていて大金持ち。


おばあちゃん。

セイナ。75歳。

浪費家。独り旅が好き。


父親。

ハルキ。38歳。

働きもせず戯曲ばかり書いている。昔何かの賞を取った事がある。


母親。

マスミ。38歳。

マルチ商法の代表取締役。


僕。

ハルト。10歳。

小学四年生。

この物語の主人公。

タバタバとビーチューを嗜む。

辛辣な性格。


妹。

ハルコ。10歳。

小学四年生。

おとなしい。


僕とハルコの二人は双子。



ガイリッツィ。

我が家の飼い犬。

二歳のオスの黒犬。


佐藤ぼん

僕の同級生。貧乏。母親の経営するスナックを手伝っていて学校にあまり来ない。


海苔香さん

僕の同級生。貧乏。

ハルトは惚れている。


戸座山すみれ

僕の担任。26歳の女教師。

僕に対して悶々としている。おっぱいが大きい。



●●●●●●●●●●●●●●●



学校の帰り道、何枚も厚着をした汚い男とすれ違った。

男はなんか、焼酎のペットボトルを大事そうに抱えてた。

男は何がおかしいのか、口を大きく開けて笑っていた。

歯が三本ぐらいしかなくて醜い。

何とも言えない匂いが鼻をついて、ものすごく臭かった。

やだな。

あいつはきっとものすごい孤独で、これから河川敷のビニールハウスにでも帰ってあの抱えた焼酎を飲むのだろう。

絶対あんな人間にはなりたくないな。



やあこんばんは。

僕の名前はハルト。

アシッド星人だよ。

あ、宇宙人と言っても地球人と何ら姿、形、体組成は変わらないんだ。

空気に触れたら赤い血も、ちゃんと流れているしね。

ただ、ちょっと肌の色は白いかな。

日本の都内で小学校に通っている。

四年生。

僕らには苗字がないので日本では鈴木を名乗ってる。

別に鈴木でも渡辺でも上運天でも構わないんだけどね。

僕と僕の家族は全員宇宙人だけど、おじいちゃんの代から日本にいるし、立派な日本国籍だ。

僕はふるさとのアシッド星に行った事はないし、行きたいとも思わない。

僕たちは偉いんだ。

おじいちゃんのミリオはいくつも加工機械の発明をしていて、国から勲章だってもらっている。

僕たちはセレブだ。

大きな一軒家に住んでいる。


僕の月のおこづかいは90000円。

月にたった90000円でこの消費税25パーセントのインフレ日本をやりくりしている。

偉いな僕は。

ベストオブ小学四年生だよ。


でも不安だってある。

最近では、もはや日本は明らかに戦前で、いつ戦争が始まってもおかしくなかったし、たとえ始まったとしても僕たちは毎日学校に行くだろう。

学校にミサイルが墜ちたら草も生えないけどね。

でも授業はするだろうな、日本人だから。

昔は学童疎開ってもんがあったらしいけど、うちは実家が都内だから疎開も出来ないし、田舎暮らしは絶対いやだ。

ネットニュースを観る。

暗いニュースばっかりだ。

黒いニュースばっかりだ。


一日が過ぎるのがとても短い。

多分、一生が過ぎるのも同じで、僕らはやがて終末を迎える。

人生はあっという間。

でも、逆に死ねない身体を手に入れてしまったらこれほど不幸な事はない。

無限は無間なんだ。

僕は死ぬだろう。

死ねて良い。

だが、その前に愛すべき家族の形だけは残したい。

僕は与えられたこの有限の命を使って人生を楽しみたい。

この家で。

僕は、この家が好きなんだ。

離れなくない。

僕は、この8LDKの家にとりつかれているんだ。



            続く


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