とびら

 やっぱりあの二人って…

 

 

 …

 

 

 オレが呆然としているとドアの向こうから

「コンコン、コンコンこんにちは〜」

 と、柚穂の声がした。

 

 

 …

 

 

 なにがコンコンこんにちはだよ…

 

 楽しそうじゃねーかよ!

 

 まったく

 

 

 コンコンうるさい柚穂にオレは、

「ワンワン」

 と言ってやった。

 

 

 すると

「にゃんにゃん」

 なんて言いながら入ってきてさ、猫みたいにオレのベッドに入ってきたんだよねー。

 

 

 彼氏いるくせに他の男のベッドに入り込むとは、なかなかいい度胸してるじゃねーかい‼︎

 

 

 だからオレはわざと

「あ〜、かわいい猫ちゃんですね〜」

 って言いながら柚穂を抱きしめてスリスリしてやったんよ。

 

 

 もう、これでもかってくらいにさ。

 

 

 猫ってしつこいの嫌うよね。

 

 だからしつこくしてやったんよ。

 

 でさ、もうオレの部屋にこなきゃいいって思ったんよね。

 

 

 だって…

 

 好きな人がただただ暇つぶしでオレといてさ、時間が来ると彼氏のところに行っちゃうなんて…そんなん地獄の時間だろ…。

 

 

 あー、もう少しでこの人は彼氏のとこ行くんだー…それでイチャイチャするんだろうなーって考えたら、もうしんど過ぎってなやつですよ。

 

 豆腐の上に乗っかって大騒ぎしたいくらいです。

 

 

 あ、豆腐の上だとオレ沈んじゃうかもな…

 

 

 …

 

 てかさ、なんで柚穂…

 

 オレに抱きしめられてんのに、嫌がらんの?

 

 

 むしろ…

 

 

 グルグルいいながら、喜んでいる猫みたいなんですけど⁉︎

 

 

 めっちゃからだあったかいし…

 

 

 だからオレは頭をナデナデしてしばらく遊んでいた。

 

 そう、ヤケクソってやつですね。

 

 …

 

 すると少しして、スースー聞こえてきた。

 

 あ…

 

 …

 

 こいつ…寝てやがる。

 

 

 クッソー…

 

 やばいくらいにかわいいんですけど⁉︎

 

 

 でも…柚穂は、兄貴の彼女なんだもんな。

 

 人様の彼女にこんなことしていては、いけませんっ‼︎

 

 

 なのでオレはベッドから降りようとした。

 

 

 そしたら、まさかの

「すきぃ〜」

 と言われ抱きしめられた。

 

 

 くっ…クソッタレ〜‼︎

 

 ただの寝言だし、間違えてオレに言ったんだろうけどさ…オレはめっちゃドキッとしちゃったじゃねーかい‼︎

 

 

 オレだって大好きなんだよ‼︎って柚穂に抱きしめられながら思ったよね…。

 

 

 でも…でもいけませんっ‼︎

 

 寝ぼけた柚穂の手を解いてオレは椅子に座って大きなため息をついた。

 

 

 この部屋が二酸化炭素まみれになるくらい、はぁーーーーーーーーーってね。

 

 

 もう、なんなんよ…

 

 

 この幼馴染さんは、ほんっとにわけわからんよ…。

 

 

 そんな幼馴染女は、それから一時間もオレの布団で眠りころげていた。

 

 …

 

 いい加減起きてもらいたい。

 

 だからオレは眠り女に話しかけた。

 

 夕飯一緒に食うだろ?って。

 

 そしたら一瞬にしてムクっと起き上がり、リビングへと直行したのである。

 

 かと思えば、

「ベッドメイキングせねば」

 と、オレの部屋に戻ってきて布団をきれいにしていった。

 

 

 …

 

 ベッドでお菓子は食うのに、そこは几帳面かよって思ったっすよね。

 

 

 そんなこんなで食卓を囲んでお食事中、オレは思ったよね。

 

 兄貴の隣に柚穂が座って、その向かいにオレと母さん。

 

 

 父さんは、まだ仕事でいないけど…

 

 もう柚穂がフツーに家族の一員みたいになってんよ。

 

 

 なんなんよ、これ?

 

 

 …

 

 

 てか、二人って付き合っているんですよね?

 

 いつからなんですか?

 

 どっちから告白したんですか?

 

 もう、やっぱり…キスしたんですか?

 

 

 …

 

 どこぞの記者ですかってくらい色々、質問したくて仕方ありません。

 

 そして…

 

 ご飯を食べながら、モグモグも、悶々も止まらない。

 

 

 だれだー‼︎

 

 オレの心の、悶々門もんもんもんの扉を勝手にあけたやつーー‼︎

 

 

 てか、悶々門とかやだな…

 

 そんな門だれがくぐるんよ?

 

 

 てか、そんな門の名前ダサくね?

 

 フツーに心の扉でいいんやない⁇

 

 って…

 

 

 そんなことは、どうでもいいのです。

 

 

 

 このお二人さんは、しれーっと並んで座っておりますが、いったいどういうおつもりなのでしょうか?

 

 

 オレが柚穂を好きだっていうことを兄貴は、薄々気づいているような気がしていたのですが、オレの気のせい…でしたかね?

 

 だって、弟が好きな相手を彼女にしたらさ…なんか一言、言ってくれたり…しないのか…な?

 

 

 むしろ言いにくい…のかな?

 

 

 だからって、そんな並んで座ってさ…

 

 オレに見せつけているのでしょうかね?

 

 

 兄貴…

 

 どうなんだい?

 

 

 オレに見せつけているのかい⁇

 

 

 しかし、一向にイチャイチャとかないんだよなー…

 

 

 みてると、普通に見えるけど…

 

 

 てか‼︎

 

 

 前から彼女いたって言ってたな。

 

 てことは…

 

 前からこやつらは…

 

 

 …

 

 

 知らんかったわ。

 

 

 てか、こんな普通にしてたらわからんな。

 

 

 まんまと騙されていたんやね、オレと母さんは…。

 

 

 で、部屋で思いっきりイチャイチャしてるんだ?

 

 

 へー…

 

 

 … 

 

 

 楽しそうですねー…

 

 じゃ、さようなら〜

 

 

 ギー、バタン‼︎

 

 

 と、少し錆びた心の扉を閉めたオレなのでありました。

 

 

 

 続く。

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