転生の革命家

みおゆ

序章・召喚されて(?)革命軍入りしました

0-1 いきなり「革命」とか言われましても!?

『次のニュースです。本日、政府より検討されていた消費税増税ですが、来月より適用することを決定したことが公表されました。今まで消費税が10パーセントだったところ、来月からは――』


 テレビの中のニュースキャスターが話している途中で、突如画面は黒く染まり、音が途絶えた。


 説明するまでもなく、テレビの主である青年がリモコンを介して、電源を切っただけに過ぎない。


「クッソ、また税金上がんのかよ……これじゃあ庶民は、どんどん生活が苦しくなるばかりだぜ」


 青年はリモコンをベッドの上に投げ捨てながらひとり呟いた。


 それから、部屋をぐるりと見回す。狭い六畳ワンルームのその部屋は、床が見えないほどに物が散乱していた。


「やってられねぇよなぁ……。俺だったら、絶対そんなことは言わねぇ。この世の中、ほんと腐ってやがるぜ」


 青年は言いながら、ベッドへ上り立ち上がった。


「……もし、俺が今総理大臣になったってぇなら、全国民の前でこう言ってやるのにな」


 青年は右腕を高らかに上げ、見えない国民へ届けるかのように、こう宣言する。



「俺が一からこの国を――世界を変えてみせよう! 誰もかもが苦しまず、明日に困ることもない、幸せな世界を作り上げてやらぁ!」



 ……ってな、と語尾に付け加えたところで、青年は気づく。


 ――


 ここは木造のアパートなんかではない。石壁に囲まれた、弱々しい青い光のみで照らされた、無機質で冷たい空間だった。


「……へ?」


 混乱と困惑を隠しきれず、冷や汗が吹き出る。


 そんな中、青年はあるものに――に視線が釘付けになってしまっていた。


 青年の目の前には、白と黒が入り交じった髪色が特徴的な一人の女が、自分を見下ろした形で立っていたのだ。


 自分よりも頭二つ分背の高いその女に圧倒され、何も言えずにただ見上げていると、彼女はその薄い唇を静かに開いた。


「……ふむ。一から世界を作り変え、幸せな世界を作り上げる――その心意気、とても気に入ったよ」


 青年は「えっ」と声を震わせた。


 それから、足元を見る――青年の足元は何やら紋章のようなものが刻まれており、それは光り輝いていたため、青年は図らずして下からライトアップされた状態となっていた。それは一見して、まるでゲームの演出でいう、召喚された側の立場になっているかのようだった。


 女は戸惑う青年を構うことなく、淡々とした口調でこう尋ねる。


「――思想の一致、ともいえるねぇ……。さて、そんな君は、なんという名を持つのかな?」


 青年はこの状況に飲み込まれるがまま素直に、


掬等繋きくひと つなぐ、です……」


 と、答えていた。


 女は二回頷き、「ツナグくんかぁ……」と囁いた。


「……おっと、わたしの紹介が遅れたねぇ。わたしはヒトリ。ヒトリ・アイリスさ。して、早速だがツナグくん……」


 女性は膝を屈め、青年――ツナグと目線を合わせてから、こう言う。



「――君、わたしとともに、この世界に革命をもたらさないか?」



 ツナグはヒトリが何を言っているのか、理解できなかった。否、理解できないというより、理解が追いつかなかった。


 なぜ、自宅にいたはずの自分はこんなよくわからない場所にいるのか。


 この目の前の女は誰なのか。


 革命とは――なんの話なのだろうか。


 すべてがわからなくなり、パニックになったツナグの次の行動は、これしかなかった。


「……あの! ウチ、勧誘は基本お断りなんで!!」


 ツナグはそう言ってヒトリの横をすり抜け、その場を逃げるように駆け出していった。


「……ほう」


 残されたヒトリは逃げていくツナグの背中を見つめながら、ニヤリと口角を上げる。


「なんの気なしにわたしの横を通り抜けていくなんて……ますます欲しくなるねぇ……」

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