情報研究部


「見てくれよ、ゲーム作った」



 峯本先生はプロジェクターでパソコンの画面を写して、ゲームを動かしていた。



「簡単なシューティングゲームなんだけど、当たり判定の設定とか、作っていて結構楽しかったよ」

「うわー、凄い……」




 ある日の放課後。

 情報研究部は勉強もせずに盛り上がっている。



「ほら誰か、やってみなよ」

「あ、じゃあやる」



 星乃部長が実際にプレイすることになった。


 スタートボタンを押すと、画面奥から火玉が跳んでくる。

 自分のロケットに当たらないようにキーボードの十字キーで操作をして避けるようだ。



「え、火玉早くね!?」



 瞬きをしている間に消え去る火玉。


 当たりそう!

 そう思って避け始める時にはもう遅く、ロケットに当たってゲームオーバーの文字が出た。



「鬼すぎない!?」

「星乃の反射神経が無い」

「そういう問題じゃないと思うよ!?」



 キャッキャとみんなが楽しそうな情報研究部。

 先生の作ったゲームで盛り上がるなんて、平和すぎる。



「紗奈、私たちもやってみよ」

「うん」

「あ。渡里と白石はゲームをプレイするだけではなく、この動きはどういう構文を書いているのかとか、そこも考えてみなよ。それが大会に繋がるから」

「えぇー無理です!!!!」



 そう言いながらもゲームをしながら、使用していると思われる構文を書き出す香織。真面目か。



「おぉ、白石は良い線行ってるねぇ」



 香織が書き出した構文は3分の1が正解していた。


 私も書き出したものの、全部間違い。

 勉強頑張らないとなぁ……。


 そう強く思った時間だった。




 *




 部活が終わり、帰り際『商高花壇』に寄った。



「もうおしまいかな……」



 向日葵は枯れて茶色くなっている。

 抜いて片付けなきゃ。


 そんなこと考えていると、背後から声がかかった。



「………撤去だな」

「……え?」



 低く小さな声。

 振り返ると、長谷田先生が鞄を持って立っていた。


 帰る時間が被ってしまったのか……。



「…………」



 私は視線を先生から外し、歩き始める。



「あ。おい、渡里」

「……」

「……渡里。次の花、考えとけよ」

「……」


 次の花なんて、知らないし。

 先生の言葉を無視して、校門に向かって走った。




 そう言えば。

 思い出したことがある。


 向日葵を植えようと決めたのは、現生徒会の9人だった。


 年度末の3月。新生徒会メンバーとして顔合わせをした時に、何を植えるか話し合った。


 会長の梁瀬先輩が、向日葵が良いと言い出し…みんなが賛同して決まった。


 そして、4月中旬。

 9人総出で種まきをしたんだ。


 あの時は間違いなく、生徒会として機能していた。


 生徒会はいつ、崩壊したのだろう……。





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