意見


 生徒会室を出て、今日もコンピュータ室に向かう。

 部屋に入ると、香織が飛んできた。



「紗奈、総会お疲れだったね!! 結局、セッティングとかしたのは誰だったの?」

「あれね、長谷田先生だった」

「マジで?」



 香織に話していると、また自然と1年生と3年生も近付いてくる。



「しかし、あの会長挨拶無いよね。いっぱい準備をしましたぁって、お前何もしていないの知ってんだぞ!! ってなった」

「わかる。私も度胸があれば野次でも飛ばすレベルだった」

「度胸が無いね」

「そうそう、残念ながら」



 先輩たちは思い思いに話す。



 はぁ……何故かなぁ。

 情研部の先輩と生徒会の先輩。

 同じ3年生なのに、どうしてこんなにも違うのだろうか。



「お、渡里。今日はお疲れさん」

「峯本先生……」



 コンピュータ室に入ってきた先生は、真っ直ぐ私の方に向かってきた。



「朝、詳しく話せなかったけどさ。昨日俺が長谷田のところに行った時、既に総会のセッティングをしていたんだよ。全部1人で。だけど、それはそれだから。喝は入れておいた。その言葉がどのくらい響いたかは分からないけどね」

「先生……ありがとうございます」

「繰り返すけど、響いたかどうかは分からないよ。さて、今日の勉強を始めようか~」



 そう言いながら峯本先生は教壇の方に向かって歩き始めた。



 まぁ、そうね。

 さっきの生徒会室での様子を思い返す限り……。残念だけど、峯本先生の言葉は響いていない。


 私に対して態度が悪いとか言うけれど、そんなの先生もだよ。



「……紗奈、大丈夫?」

「……あぁ、ごめん。大丈夫!」



 先生から今日の課題が配られていた。


 プログラミング言語の穴埋め問題。

 言語は……自由選択か。



「この問題、解ける気がしないんだけど」



 ボソッと呟く香織。

 それを聞いた先生から言葉が飛んできた。



「白石、解く前から諦めるなよ~。やればできる。No problemだ」

「先生! アイ ドント ノーです」

「違う。I don't knowなぁ」

「何その発音。ノープロブレム!!」

「No problem」



 ギャグみたいな会話を小耳に挟みつつ。

 問題を解きながら考えた。


 生徒総会の議事録をまとめなきゃ。

 花壇の草抜きもしなきゃ。

 もうすぐ挨拶週間だし。

 いつ立哨をするかも考えなきゃ。


 生徒会って、やることてんこ盛り。



 ――……辛い。



 本音は、辞めたい。

 だけど、辞められない……。




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