生徒総会


 ショートホームルームが終わり、体育館へ向かう。

 体育館には、既に3年生のメンバーが揃っていた。



「凄い!! 何もしなくてもセッティングが完了してある!」

「ヤバーい! 議長のカンペもあるよ」

「うちら何もせず当日生徒会として参加するだけとか、こんな美味い話ある?」

「履歴書にも活動実績で書けるしね」



 アハハと笑っている3年生6人。



 こんな先輩にはなりたくない。

 そう思わせてくれる、最悪な会話。



 ところで、会長は大丈夫なのかな。

 生徒総会の開始時に会長挨拶があるけれど。



 ……まぁ、私の知ったことでは無い。



「あ、渡里さーん。いつもありがとうね? 水やりとか行事のこととか。何やかんやフォローしてくれるから助かっているよ。ねーみんな?」

「うんうん、ごめんねぇ何か。全部やってもらって」



 各々が心にも思っていないことを次々と口にする。


 この人たちは、どこまで私をバカにすれば気が済むのか。



「……別に、生徒会の仕事を楽しんでやっていますから。何も問題ありません」



 そう言い残して、体育館のステージ裏に回る。

 先輩たちは、眉間に皺を寄せて私を睨んでいた。



 ところで、長谷田先生はどこにいるの。

 全然姿が見えない。


 体育館内を探し回っても見つからないまま、生徒総会が始まった。



「これから本年度の生徒総会を開会します。最初に、生徒会長の挨拶です。3年の梁瀬さんお願いします」

「はーい」



 結局、誰が準備したか分からないままだ。



「えー、生徒会長の梁瀬でーす。今日の総会に向けて……いっぱい準備をしましたぁ。全校生徒で有意義な話し合いができればと思いますので……えっと、お願いしま~す!」




 なんて中身の無い挨拶なのだろう。

 あなたは何もしていないし。



 そう思いながら私は冷たい視線を向けるが、他の生徒たちは違うみたい。

 挨拶が終わると、盛大な拍手が鳴り響いた。



「ははっ! 私くらいになると挨拶も適当にできるよ。出任せ上等!」

「さすがすぎる!」

「でしょう!?」



 こんな人が生徒会長なんて、この生徒会に未来は無い。



「生徒会の皆さん、さすがだね。こんなにも意見を綺麗に纏めてくれて、誇らしいよ」

「いえいえー、教頭先生に喜んで貰えて嬉しい限りです!」

「今後も期待しているよ」

「はーい!」




 開始から1時間。

 生徒総会は無事に終わった。



 日頃本当に何もしないのに、こういう時だけ勘で動く8人。


 外見だけは良いから……。

 生徒会としての評判は上がる一方だ。



 私個人としては、すっごく複雑だけれども。




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