嘘はやがて、花を咲かせる。

海月いおり

生徒会


 最近、思うんだ。

 生徒会……入らなきゃ良かったって。



 全部押し付けられて。



 心が、折れそう。




 *




 私、渡里紗奈わたりさな

 県立さだはら商業高校の2年生。


 生徒会の……会計をやっている。



「渡里さん、ごめん! 今日も習い事があって帰らないといけないから……花壇の水やり、やっといて?」

「……はい。分かりました」

「ごめんね〜ありがとう!! じゃ、またね!!」

「……さようなら」


 去って行った先輩は、ハハッと大きな声で笑いながら生徒会室から去っていく。


「はっはーマジでちょろい! カラオケ行こうや!!」

「……」


 先輩、声が響いていますよ。

 だけどこれも、日常茶飯事だった。



 ――……本当、こんなのばかり。



 生徒会の仕事の1つである、花壇の水やり。

 朝と夕方の2回ほど水をやらなければならない。


 メンバー9人でローテーションなのに。

 みんな私に押し付けてきた。



「……別に良いけどさ。お花、好きだし」



 今日も私は、ジョウロを持って生徒会室から出る。


 廊下の窓からは夕日が差し込んでいた。




 *




 クラスでは地味な方だが、生徒会活動に興味があった。


 人前で話すことはできるし、企画を考えることも好き。

 パソコンを使った文書作成もできる。


 ……お花も、好き。


 だから……やっていける。そう思っていた。




 それなのに……。

 集まった生徒会メンバーは、みんな不真面目だった。



 というか。

 やる気が無い?



 明るさだけが取り柄の生徒会長。

 友達がめちゃくちゃ多いだけの副生徒会長。


 この2人を始め……本当にみんなやる気がない。




 新生徒会が発足した時はこんな感じでは無かったんだけどね。

 いつの間にか、みんな理由をつけて生徒会室に来なくなった。


 会長も副会長も当然、生徒会選挙で選ばれているけれども。

 こんなの……もはや、人気投票。



 この2人よりも良い公約を述べていた真面目な立候補者は、人気投票で落選した。





「……はぁ」





 この2人が当選した時に気付いていれば良かった。

 ここで生徒会メンバーになっても、やりづらいだけだよ~って。




 なんて。……今更、何を言っても過去に戻れないけれど。






 私はジョウロに水を入れて、校舎横の花壇に向かった。

 『商高花壇』と書かれた長い花壇には、向日葵ひまわりが植えられている。



「大きくなってね」



 小さな双葉。

 元気に育って欲しいと願う。



 水やりを押し付けられているという事実は、向日葵には関係無いからね。




 誰も面倒を見ないなら。

 この向日葵を育て上げるのは、私の役目だ。





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