最終話 銃剣戦姫
■ヴィンヘルト帝国辺境 白狐族の隠れ里 村長の家
オレが連れて来た少年兵に対し、村人たちの視線は冷たく鋭かった。
自分たちの仲間が大量に殺されたのだ。
敵に対して冷静になれとは言えない。
「コイツは捕虜だ。連れ出された獣人達の情報、この地の領主の情報などを聞いたり人間とのやりとりの代表になってもらう。文句のあるやつはオレの前に出てこい!」
オレは仁王立ちで少年兵の前に立ち、村人達に向けて声を荒げた。
ここは利用価値のある人間であることを示し、捕虜として扱わせるしかない。
「姫様がおっしゃられるのであれば……」
「苛立つのもわかる、悔しいのもわかる。だが、オマエ達が手を上げればオマエ達が否定している人間と同じになる。体が痛めつけられても心まで腐るな!」
「は、はい!」
村人たちがおとなしくなったところでオレは少年兵とコリーを同席させて話を行う。
その他のものは後処理を命じて動いてもらっていた。
死体の埋葬や家をどうするかなど考えることは多い。
「さて、オマエのことを教えてもらう。名前は?」
「あっ、はい……あの……少し、足を閉じてもらっても……」
おどおどとしている少年の視線を辿ると、オレが片膝を立てているので下着が見えていた。
ウブな奴だと思いつつ、話を進めるためにもオレは居住まいをただす。
「あらためて、名前をを教えてもらおうか?」
「僕はアレクセイ・シュトラウス。16歳です。先代の子爵様に仕えていた軍師の家柄ですが、ラインハルト様に代替わりして苦言を呈していたところ反逆罪ということで家を潰されました。戦いは苦手で、作戦を考えたりする方が好きです」
「軍師か……オレは一兵士でしかないので、軍師がいるのは助かる。しばらく行動の制限をつけさせてもらうが、働き次第では自由もあるだろう」
「オーガ様、いいんですか!? そんなに簡単に決めてしまって……」
オレがアレクセイの扱いについて決めると、コリーが反対を示す。
「この細い体で何ができる? それにこれから連れ出された獣人を助けにいくならば人間側の情報源がないのは困るだろ?」
「そういわれてしまうと、断ることができませんが……」
だが、オレが縛られているアレクセイの姿をみせて納得してもらった。
「現状は先ほどのラインハルトから聞いたように獣人が不平等に扱われているのが分かった。だから、オレは獣人達を解放していく。この四式にかけて」
壊れた四式を〈工廠〉で売り払って、作り直したオレは銃剣のついたそれを掲げて宣言する。
「銃剣戦姫……バヨネットプリンセスですね」
アレクセイがつぶやいた言葉をオレは気に入り微笑んだ。
銃剣戦姫~狐獣人の姫に転生した戦闘工兵は「工廠」スキルで獣人達の旗じるしとなる~ 完
【完結】銃剣戦姫~狐獣人の姫に転生した戦闘工兵は「工廠」スキルで獣人達の旗じるしとなる~ 橘まさと @masato_tachibana
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