第2話 鬼神降臨

■帝国歴 345年 ヴィンヘルト帝国辺境 白狐族の隠れ里


 血の匂いが鼻につき、オレは目を覚ました。


「生きて……いる?」


 周囲を見ると金髪碧眼の男が耳と尻尾の生えた男女を殺している姿が目に入る。

 そして、自分に伸びる男の手が……。


〔転生完了。スキル〈工廠〉の獲得を確認。初期起動特典として、武器を高速自動生産します〕


 謎の声がオレのみみに聞こえ、空だった手のあたりが光ったかと思うと”相棒”が現れていた。

 【四式自動小銃】である。


「な、なんだ! 何をした、貴様ぁ!」


 目の前の男の話している内容が分かる。

 わかるからこそ、オレを蔑んでいる感情が見えた。


「黙れ、鬼畜がぁぁ!」


 オレは声を発するが、いつもの声ではない高い女の様な声な気がする。

 しかし、それを気にするのは先だ。

 四式自動小銃についている銃剣で手を伸ばしてきた男の喉を突いた。

 肉が裂かれ骨をも貫く感覚が腕を伝ってくる。


「死んではいないようだが、ここはどこだ?」


 目を白黒させて絶命した目の前の男を蹴り飛ばして、俺はボロボロの籠の中から立ち上がった。

 獣のような男女も、剣を持った金髪碧眼の男達も動きを止めている。

 戦場で立ち止まるとは、よほどオレが地面に転がっている男を殺したのが意外だったのか?


「だが、木偶の坊は的だ」


 四式自動小銃を金髪野郎に向けて、引き金を引く。

 放たれた銃弾が金髪野郎の頭を撃ち抜き、倒れた。


「な、なんだ!? 魔法なのか?」

「隙だらけだ」


 驚いて動揺を隠せない男も撃ち殺し、俺は周囲の状況を確認ていると仲間がやられたのを見た金髪男が武器を捨てて逃げ始める。

 逃げるのはイイ判断だが、いかんせん判断が遅すぎる。

 オレは膝をついて地面にしゃがみ、四式自動小銃を脇で固定しながら逃げる男を狙った。

 照準にとらた男の背中を容赦なく撃ち抜く。

 

「敵影無し、状況確認」


 何百回と繰り返してきた言葉を口から出すと、犬の様な耳と尻尾の生えた若い女の方に近づいた。


「ここはどこだ? 今の鬼畜どものはなんだ?」

「ひめ……さま?」

「姫? な、なんだ……この姿は!」


 姫と呼ばれた俺は改めて自分の姿を確認すると、華奢な白い手足に巫女服のような白い衣装を着た胸のあたりに膨らみがある。

 これは女の体だ。


「伝え聞いていた〈神降ろし〉が成功したのでしょうか……村人を集めてお話しますので一緒に来てください」


 黒い髪をした日本人に近い目鼻立ちをした少女に連れられてオレは村を歩き回る。

 風が血の匂いを運び、ここが戦場であることを物語っていた。


「ここも戦場であり、地獄か……人殺しの鬼神にはお似合いの場所だな……」

「姫様! 村長の家でお話していきますので、来てください」


 自嘲を浮かべつつ、オレは子犬の様な少女に従って家に入った。

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