如何わしいタイトルの本に挟まっていたメモ

第42話 如何わしいタイトルの本に挟まっていたメモ


砂漠を散策している時にふと考えついたのだが、どうやら我が子は意識せずとも砂漠を自由に扱っているのではないか。


最近学んだ本に砂漠が出て来て、その描写にサボテンとラクダが出て来たのだが、それらがいつの間にか砂漠に生息していた。


当たり前の様に砂漠というものはこういう物があると想像した通りに生み出されていた。


図書館のそう遠くない所にはオアシスもあり、そこには綺麗な水がふんだんに溜まっている。

これからは交易の拠点となるだろう。

何故なら、オアシスが交易の拠点となることをあの子は知ったからだ。


もう一つ気がついたのは、図書館へ辿り着くにはかなりわかりにくい流砂の流れを避けていかなくてはいけないということだ。


確実な場所を知っていれば別だが、陸路で行くことは困難だろう。

来館数はかなり少なくなるだろう。


空から見ればそこに何かあるのがわかるが、今回の事故の影響で、ここは普通の空路からは外れるだろうし、呪われた地として伝えられていくだろうから、空からも来るものがいるとは限らないが。


あの子がそう考えているとは考えにくいので、太陽の石の意志なのだろう。

家族を一度離れ離れにされたのだ。

人が嫌いになってしまったのかもしれない。


それでもあの子はいつか寂しさを感じるだろう。

その時に石はどう考えるのだろうかわからないが、末っ子の気持ちを無碍にはしない気がするがどうだろうか。



太陽の石の考察

フリオのメモに私見を添えて


・石はエネルギーを内包している


現在の科学力で利用できるのは、規則的な振動と熱、光になる。

この石を制御できる機械が完成したならば、飛行船どころか、国、もしかしたら世界すらもカバーしてエネルギーを供給できる可能性がある。

しかしながら現在は不可能だ。

エネルギーが増幅するタイミングがあることは分かるが、かなりのランダム性があり、規則性が分からない。

基本的には安定し過ぎていると言って良いもので、それも利点と言える。


・後に足された汚い字のメモ

ランダム性に言い訳をしないで欲しいが、確かにぜーんぜん分からないね。

フリオ君は相当腰を据えてデータを取ったらしいけど、そんな事考えても仕方ないと思うけど。

だってさ、もう確信と言って良い確率でコイツは宇宙人だよ?

そんな文化も生態も違うやつの考えを知ろうなんて無駄無駄。

かなりの長寿で、家族思い。

僕にはそれしか分からないね。

家族が頼めばやってくれるんじゃないかな、分からないけれども。


・石に分割された形跡がある件について


調べて分かったのだが、一見傷のない表面には薄っすら傷がある部分があり、周りと比べると2%ほど凹んでいる。

何度も分割しようと試したが不可能で、力で傷がつく様なものでは無さそうなのだが、事実そうなっている。

不思議とかけらなどはどこにもなく、空から落ちて来た目撃情報があるので、考えもつかないダメージを何処かで受けた可能性もあるだろう。


・赤い色のインクで書かれたメモ

ごめんよフリオ君、僕がガメてしまったんだよ。

拾った農夫を金で口を閉じてもらってさ、知らないと分からないよね。

しかしアレだね。

大きさから考えると、かなりの凹みでいいと思うんだけど、その程度だったのか。

なら修復するということかね。

雌雄も無さそうだし、哺乳類の僕らからしたら本当に異質だね。


・あの人の嫌がらせを趣味とするクソ学者の定説する太陽の石、生物説について。


偶然だが、太陽の石と相性の良い人間というのは存在するのが分かった。


エネルギー量と熱量を常に測定しているのだが、ある掃除婦が清掃中のみ微量だが数値が上がる。


とくになんの変哲もなく、特殊な血筋というわけではないその女性だが、話を詳しく集めると、彼女が清掃する日は清潔で、親切な女性らしい。

中年より壮年といった年の私の母と同じくらいの年齢で、私も柔らかな雰囲気にもちろん不快感など一つも湧くことはないが、石もそう感じるのだろうか。


ならば、なんらかの器官で研究所とそこに出入りする人物を見ていて、それに対して考え、好みを決める感情があるということだろうか。


しかし数値上は人が人に思う程激しく動いてはおらず、パターンを詳しく調べる様な自分の様な人間がいない限り気が付かなかったレベルだ。


あのクソ学者は、何かを取り入れない限り何かを産むことは出来ず、エネルギーを取り入れて、自身のエネルギーにする物質は生物と考えるべきだろうと言っていた。

なんらかの感情や目的を感じると、そう言うのだ。


正直一理あると思うが、あの偏屈なやつに感情だなんだと解説されるのは腹が立つ。

そんな機微に敏感なのならば、人間に優しくしたまえ。


・馬鹿みたいな花丸を描いた下に書かれたメモ


人の嫌がらせを趣味とするクソ学者?

酷い人がいるものだね。



どのくらいかは分からないが、あと1、2年、もしかしたら今年中に自分の寿命は尽きてしまう気がするね。


生きているうちにどうしてもしなくてはならないことがある。


彼に名前を付けてあげる事だ。


もし彼が友人を砂漠から招いた場合に、名乗る名前がないと不便だろうからね。


…今だに迷うよ。

サイェスが君の名前だと伝えるかどうかをね。

厳密に言えば違うのだけれど、広義では彼はサイェスという個人だからね。


違うといえば違う。


だけれど彼と毎日接する内に、彼の中にサイェス君の気配を感じられるんだから参るよ。


こんなに迷うことなんて無かったんだけどね、やっぱり、大切な事だろう?


でもね、名付け自体も迷っているのさ。


縛り付けてしまう気がしてね。


でも、僕が名付けたいという気持ちもあるんだよねぇ、不思議と。


出来ることなら、僕の死後になんかスッキリする形で僕が名付けたことにしたいな。

そんな都合のいい話は難しいか。


あぁ、一つ忘れ物を思い出した。

彼のネクタイに付いているタイピンはフリオ君の物だった。

返しに行くのは不可能だろうが、いつかここにあの子の友人がやって来て、旅立つ時に託してはくれないだろうか。


なんてね。


この本を読んだ君は、とてもスケベなんだから、そのまま生きて行ってくれたまえ。


男はみんなそんなものだよ。


恥ずかしいかい?


友人の父親にエロ本を読んだことがバレるなんて思わなかっただろう?


ふふ。


まぁ、息子と仲良くやってくれよ。

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