不思議話
@Nantouka
携帯
「何が一番怖いかって?、それは実害が及んだものだよ」
そう言って、彼は諦める様に両手を広げた。
隣で大学生グループが騒がしく、何処何処の心霊スポットで公衆電話の話で盛り上がっていた。
俺は会社の同僚と共にチェーン店の居酒屋で飲んでいる
そして彼は「そういえば」と言う
俺は聞く「何かあるんですか」
「・・・あぁ、不思議な出来事はあったな」
彼曰く、霊能力は無いらしい、でも時々何処かを見ている瞬間がある
これはそんな人から聞いた話
俺が学生の頃、初めて携帯電話を持った時。
それは俗にいうガラケーで、黒色一色。
閉じた時、装飾はドレープの文様をしていた。
今まで欲しかった携帯、長期連休の最初の日に買ってもらって、
その次の日から母方の実家の田舎に帰省する予定だった。
次の日、俺は携帯を買ってもらってウキウキのまま、母方の山中にあるの田舎の実家についた。
テレビも2チャンネルしか映らず、片方はNHK、子供なら分かると思うが、
幼い時分のNHKほどつまらないものはない
当時はネットも無く、夜、風呂上り後の寝るまでの間、畳の上で花札で遊んでいた。
爺さんは何年も前に亡くなっていて、俺と妹と母親と母方の婆さんの四人で遊んでいた。
その時、携帯が鳴った。
みんな突然の異音に驚いて一瞬止まった。
その中、俺は自分の携帯が鳴っていると分かり、畳の上に放り出した携帯を手に取って折り重なった携帯を開く
画面には公衆電話の文字と全く知らない電話番号、
俺はそれを見て出ようとは思わなかった。
そもそもその時間に公衆電話から電話してくる相手が誰か分からなかった。
当時の俺の実家(母方の実家ではない、当時の俺が住んでいた所)は母親の実家程ではないが田舎であり、
公衆電話は駅付近しかない、そして駅までも車で20分はかかる。
連絡は固定電話が基本だった、携帯電話が普及し始めた頃相、
友人は居たが、そいつがわざわざ公衆電話から連絡をしてきた?
そんな可能性がふと浮かんだが、そいつの家は俺よりも田舎の山の中にあり、
そもそも俺が携帯を持っている事を伝えていない。
そして俺の手の中で音を出して震える携帯が動きを止めた。
「出なくてよかったの?」
母親が聞いてくる。
俺は淡々と「公衆電話から」と答えた。
俺のその言葉に全員が、電話をする時のあの独特の張り詰めた空気から解放されるのがわかった。
そして再び花札に戻った。
その遊びの途中、母親が何かを思い出したかのようにポケットにしまっていた携帯を取り出して言ってきた
「そういえば、まだ私の番号、登録してなかったよね」
俺もそれを思い出し、自分の携帯を取り出して画面を開く、
そして慣れない手つきで母親に教えられながら電話帳を開いたときにふと思った。
俺はこの時、初めてアドレス帳に電話番号とその人物を登録する。
初めての登録相手が母親だった。
父親や、その他友人の名前などこの白紙のアドレス帳にはどこにもない
そして、俺は母親の電話番号を登録して、そして確認の為に母親からのワンギリが行われる。
電話が鳴り、その相手が母親である事を確認をし、そのまま通話履歴を見てみる。
そこには2行の通話相手の情報。
下はさっき登録した母親という文字とその電話番号、そして上にはその前の公衆電話の文字と知らない電話番号、
「俺の携帯に掛かってきた始めの相手は、公衆電話からだったんだ」
実に不思議な話だと当事者の彼は笑いながら言った。
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