SMILE A GO GO!!

重伍

第1話 スマイル神

夕暮れの薄暗い公園。

まっすんは会社帰りにフラフラとベンチに座り、ため息をついた。


「もう限界だ…。仕事はうまくいかないし、上司はうるさいし、なんで俺だけこんなにツイてないんだよ…。くっそ…」


仕事のストレスで心身ともに疲れ切ったまっすんは肩を落としながら独り言をこぼす。 懐も寒いのに明日は別れた妻へ養育費12万円を振り込まなければならない。


まっすんが頭を抱えていると突然、どこからともなく軽快な足音が近づいてきた。

驚いて顔を上げると、派手でゴリゴリに筋肉質の男がニヤニヤしながら目の前に立っている。キラキラしたサングラスをかけ、明るい黄色のスーツが目にまぶしく映る。


「おう、元気ないな、まっすん!どうしたんだ?そんなに落ち込んでちゃ、面白い人生なんてやって来ないぞ!」


スーツにはカラフルな星や音符の模様が散りばめられていて、大きな白いサスペンダーが彼のユーモアを強調している。そして、フサフサでボリュームのある金色のカールした髪。時折、風に揺れる様子がアメリカのトランプ元大統領のようだ。


「えっ!?誰だよお前!?なんで俺の名前知ってんだ!?」


男の陽気な風貌と無遠慮な言葉に苛立ちを募らせたまっすんは詰め寄った。


「俺か?俺はスマイル神だよ。お前みたいに人生に笑いを忘れたやつの前に現れる、特別な神様さ!」


「スマイル神?…なんだよそれ。ますます怪しいぞ。どうせ宗教かなんかの勧誘だろ?」まっすんは呆れたように言った。


「いやいや、宗教とかそんなんじゃないって!俺はお前をただ笑わせたいだけなんだよ。お前、最近全然笑ってないだろ?」


スマイル神と名乗る男はおどけた仕草で手を振りながら答える。


「そりゃ笑ってねぇよ。毎日仕事に追われて、上司に怒られて、何が楽しいんだっての」まっすんはため息をつく。


男はまっすんの隣に座り、親しげに肩を叩く。


「分かるよ、人生は大変だ。でもな、まっすん。笑いってのは、そんな時こそ必要なんだ。笑えない時ほど、笑うべきなんだぜ?」


「笑えって?そんな簡単に言うけど、こっちは本気でしんどいんだよ。笑って解決するなら、誰だって苦労しないって。」


まっすんは少しムッとして言うと、男はすっと立ち上がった。


「まぁまぁ、ちょっと見てろよ。俺がどうやって笑わせるか、体験させてやる。これが、スマイル神の力だ!」


男が天に手を振りかざすと、突然、空から風船やカラフルな紙吹雪が降ってくる。まっすんの周りに明るい色が広がり、宵闇と相まってまるでお祭りのような雰囲気になる。まっすんは目を丸くし、戸惑いながらその光景を見つめる。


「なんだよこれ!?おい、何してんだ!?俺、祭りに参加した覚えなんてないぞ!」


「これが俺の力さ!人生を少しでも明るくするのが俺の仕事。お前が笑わないと、俺も困るんだよ!」男はニヤリと笑った。


まっすんは男のハチャメチャな行動に困惑しながらも、少し表情が緩む。

そして、ついに小さく笑い始める。


「お前、なんだかバカバカしいけど…ちょっと面白いじゃねぇか」


まっすんがそう言うと、男は満足そうにうなずく。


「だろ?笑うってのは、思ったより簡単なんだよ。これからは俺がちょっとだけ手を貸してやる。お前がもっと笑って、楽しく生きられるようにな!」


「いやいや、やっぱりお前、わけのわからねえコンサルじゃねえよな。俺から金をむしり取ろうって算段かよ?」


「何言ってんだ、俺はただの神様だ。心配すんな、俺に任せとけ!笑いはお前の人生を変える鍵だ、間違いないって!」

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