第36話 実家へ
海藍様の宮から帰る直前。お土産として豪華な箱を渡された。
中に入っていたのは……梅の枝を模したお菓子。いわゆる。
大華国の伝統的なお菓子であり、私もお土産で貰ったものを何度か食べたことがある。一般庶民にはあまり馴染みがないお菓子――というか、お菓子自体あまり馴染みがないかもしれない。裕福な商家とかならともかく。
一応鑑定してみるけど、毒はなし。
これは一応友好の証なのか。あるいは四夫人としてはお土産を渡すのが当然なのか。もしくは「あなたのような庶民ではこんなお菓子は食べられないでしょう! 感謝することね!」と煽られているのか……。
海藍様はどういうつもりか知らないけど、貰えるものは貰っておくことにする私であった。商家の娘の意地汚さを舐めないでいただきたい。
◇
後宮というか宮廷は毒殺が怖すぎる。なにせ初めて招かれた宴の席で侍女が毒を食べたほどだ。いや私なら自分で自分に術を掛けて回復すればいいんだけど、梓宸や他の人がねぇ。私が実家に帰ったあとにねぇ。海藍様はともかく、瑾曦様や雪花が毒で苦しむのは可哀想だ。海藍様はともかく。
というわけでアレ――毒検知の魔導具を作ってしまいましょう。
神仙術にも『
今まで入手した欧羅の魔術本や、この前購入した『最新版 回復魔法大全』にも毒検知の魔導具の作り方が書いてあったので、作ってみましょうか。
以前作ったものは家族や取引先に配ってしまったし、『最新版 回復魔法大全』には新しい魔導具の製法も記述されていたので試してみたいというのもある。
まずは原料を入手しなくちゃね。
ちょうどよく心当たりがあったので、私は縮地で後宮から実家へと転移した。目的の人物――欧羅商人のディックさんが商取引で実家にやって来ていたためだ。
『――凜風ぁあああぁああっ!』
私が戻ったのを察知したのか、義理の息子兼護衛役の
『どういうことだ!? なぜ後宮に泊まっているんだ!? あの男がやりやがったのか!? 油断したらすぐこれだ!』
私の肩を両手で掴み、前後に揺さぶってくる浄。
「ちょっと治療が必要な子が出ちゃってね~。大丈夫よ、梓宸に手を出してくる勇気なんかないから」
『まったく以て甘い! 甘すぎる!』
むがーっと頭をかきむしる浄だった。大丈夫? 義理の息子の情緒が心配よ私?
「ま、それはとにかく。ちょっとディックさんに用事があるのよ」
『今度はディックか!? ディックの野郎か!?』
野郎ってあなた。
「……少し頭を冷やしなさい」
『むがぁあぁああああ!?』
話にならなさそうだったので、浄の頭の上から水をぶっかけた私だった。神仙術で。ちょっとやりすぎてそのまま流されていったけど、些細な問題でしょう。
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