第12章: 運命の収束と犠牲の意味
1. 政府の極秘プロジェクト
冬休みが明けた1月中旬、僕は千紗と佳奈を研究施設に案内していた。寒風が吹く中、3人で静かに歩を進める。
施設に到着すると、僕は深呼吸をして扉を開けた。
「ここが…」千紗が息を呑む声が聞こえた。
「ああ、ここが実際にシミュレーションを行う場所だ」僕は頷きながら答えた。
広い部屋の中央に鎮座する巨大な装置を見て、佳奈が目を丸くしているのがわかった。
「すごい…」佳奈の声に驚きが混じっている。「でも、どうしてこんな場所を使えるの?」
僕は少し躊躇した。真実を話すべきか迷ったが、彼女たちを信じることにした。
「実は…このプロジェクト、政府の極秘研究なんだ」
「え?」千紗と佳奈が驚いて声を上げるのを聞いて、僕は覚悟を決めた。
「俺の父が、このプロジェクトの責任者の一人なんだ」静かに続ける。「だから、特別に参加を許可してもらった」
千紗の複雑な表情を見て、僕は急いで付け加えた。「大丈夫。君たちの能力は認められているんだ。特に千紗さんの量子力学の理解度は、専門家レベルだって」
千紗が少し照れくさそうに俯くのを見て、僕は微かに安堵した。
中央の装置に近づきながら、僕は説明を続けた。「これが量子シミュレーターだ。これを使って、過去の出来事を再現し、そして…変更を加えることができる」
「浩介くんを…救えるの?」佳奈の小さな声に、僕の心が痛んだ。
真剣な表情で2人を見つめ、僕は重い事実を告げた。「理論上は可能だ。でも…犠牲が必要になる。誰かが…浩介くんの代わりに消えなければならない」
部屋に重い沈黙が流れる中、僕は川の流れのたとえ話を始めた。説明しながら、千紗と佳奈の表情の変化を注意深く観察した。
「別の船を沈めなければならない」千紗の小さな声を聞いて、僕の胸が締め付けられた。
「そう。それが、このプロジェクトが抱える最大の問題なんだ」僕は真剣な表情で答えた。
佳奈の不安そうな質問に、僕は慎重に言葉を選んだ。「だけど、まだまだ未知のことも多いし、乗り越えられる方法も見つかるかもしれない。だからこそ、研究するんだ」
「時間をかけて考えよう」僕は静かに言った。「誰も犠牲にならず、浩介を救う道を探すんだ」
2. 繰り返す失敗
1月下旬、厳しい寒さが続く中、僕は放課後ごとに研究施設に通い詰めていた。量子シミュレーターを使って、浩介の事故を再現し、それを回避する方法を探る日々が続いていた。
「今日こそは…」
僕は静かに呟きながら、コンソールの前に座った。複雑な操作を始めると、巨大なスクリーンには、文化祭当日の体育館の様子が映し出された。千紗と佳奈が隣で見守る中、僕は深呼吸をして、シミュレーションを開始した。
画面上で、浩介が千紗を守るように押しのける。そして、照明器具が落下する瞬間――。
「ストップ!」千紗が叫んだ。
僕は素早くキーボードを操作し、シミュレーションを一時停止した。千紗の声に、僕の心臓が早鐘を打つ。彼女の必死の様子に、胸が痛んだ。
「今度は…私がこーちゃんに告白するのを止めてみよう」千紗が提案した。
僕は黙って頷き、シミュレーションを再開した。千紗が浩介に声をかけず、浩介は体育館に向かわない。しかし…。
「だめだ」僕は呟いた。「この場合、浩介は別の場所で事故に遭ってしまう」
千紗は唇を噛んだ。その表情に、僕は言葉をかけたくなったが、ぐっと我慢した。
「じゃあ、別のパターンで…」
そうして、僕たちは何度も何度もシミュレーションを繰り返した。千紗が浩介を引き止める、佳奈が浩介に話しかける、僕が助けに入る…。しかし、結果は常に同じだった。どのようなシナリオでも、浩介は何らかの形で事故に遭うのだ。
「なぜ…」千紗が悔しさを隠せない様子で呟いた。「どうして上手くいかないの…」
僕は深いため息をついた。大城戸の記憶を持つ僕にも、この状況を打開する方法が見つからない。それが、何よりも辛かった。
「これが現実を変えることの難しさだ」僕は静かに説明した。「一つの要素を変えると、他の要素も連鎖的に変化してしまう」
佳奈は疲れた様子で椅子に座り込んだ。「もう何回シミュレーションしたんだろう…1000回?2000回?」
「正確には101286回目だ」僕は静かに答えた。その数字を口にしながら、僕自身も驚いていた。これほどまでに多くの試行を重ねても、まだ解決策が見つからないことに、焦りを感じていた。
千紗は決意の表情で言った。「まだよ。まだ諦めるわけにはいかない。こーちゃんを救う方法は、きっとある」
彼女の言葉に、僕は胸が締め付けられる思いがした。千紗の強い意志を感じつつも、その目に疲労の色が濃く現れているのが見て取れた。
「千紗さん」僕は静かに呼びかけた。「少し休憩しよう。無理は良くない」
千紗は抵抗しようとしたが、最終的には頷いた。
僕たちは施設の休憩室に移動した。窓の外では、雪が静かに降り始めていた。
「ねえ」佳奈が小さな声で言った。「私たち、本当にこれを続けていいのかな…」
僕は黙ったまま、佳奈の言葉に耳を傾けた。彼女の不安な表情を見て、僕自身も同じような思いを抱いていることに気づいた。
「浩介くんを救いたい。でも…誰かを犠牲にしてまで…それって、浩介くんが望むことなのかな」
千紗は窓の外を見つめながら、静かに答えた。「わからない…でも、私は…こーちゃんに会いたい」
僕は二人を見つめ、複雑な表情を浮かべた。千紗の強い思いと、佳奈の不安。そして、自分自身の中にある葛藤。全てが交錯して、胸の奥がざわついた。
「まだ結論を急ぐ必要はない」僕は慎重に言葉を選んだ。「もう少し時間をかけて考えよう」
3人は静かに頷いた。雪は降り続け、研究施設の窓を白く染めていった。
僕は窓の外を見つめながら、思いを巡らせた。このまま続けていいのか。本当に浩介を救う方法はあるのか。そして、もしあったとして、それは正しい選択なのか。
答えは見つからないまま、僕の心は重くのしかかっていた。唯一、浩介が助かるシミュレーション結果――誰かが身代わりになる場合――の重みが、僕の心に重くのしかかっていた。
3. 衝撃のシミュレーション結果
2月上旬、厳しい寒さが続く中、僕たちの研究は新たな局面を迎えていた。何百回ものシミュレーションを繰り返す中で、千紗が一つの可能性に気づき始めたようだった。その日、僕は研究施設の中央にある量子シミュレーターの前で、千紗の様子を注意深く観察していた。
「ねえ、気づいたんだけど…」千紗が突然口を開いた。
「何に?」佳奈が身を乗り出して尋ねた。
千紗は深呼吸をして、言葉を続けた。「私たちがやってきたシミュレーション、全部失敗に終わっているってわけじゃない」
僕は息を呑んだ。千紗の言葉の意味を察し、胸が締め付けられる思いがした。
「どういうこと?」佳奈が眉をひそめた。
千紗は決意と恐れが混ざった声で説明を始めた。「唯一成功したパターンがある。私たちの誰かが…こーちゃんの代わりになる時」
部屋に重い沈黙が流れた。僕は千紗と佳奈の表情の変化を注意深く観察した。
「まさか…」佳奈が小さな声で呟いた。
僕は真剣な表情で二人を見つめた。「つまり、僕たちのうちの誰かが犠牲になれば、浩介くんは助かるということか」
千紗はゆっくりと頷いた。「そう…でも、それは…」
「誰かの命と引き換えってことだよね」佳奈が震える声で言った。
千紗は窓の外を見つめながら、静かに語り始めた。「私たちがやってきたシミュレーション、全て失敗したわけじゃない。ただ、私たちが無意識のうちに、その可能性を避けていただけ」
僕は深くため息をついた。「確かに…その通りだ。でも、それはだめだ。僕たちの誰かが欠けたら意味はない」
「でも、それしか方法がないなら…」千紗の声が途切れた。
佳奈が千紗の手を握った。「千紗ちゃん、まさか…」
千紗は佳奈をまっすぐ見つめた。「私が…こーちゃんの代わりになればいい」
「ダメだ!」佳奈が叫んだ。「そんなの…絶対にダメだよ!」
僕も厳しい表情で言った。「千紗さん、そんな選択は許されない」
千紗は涙をこらえながら言った。「でも、それしかこーちゃんを救う方法がないなら…」
「他の方法を探そう」僕が決意を込めて言った。「まだ諦めるには早い」
佳奈も頷いた。「そうだよ。私たち、一緒に頑張ってきたんだから」
千紗は二人の言葉に、少し安心したような表情を浮かべた。しかし、その目には決意の色が宿っていた。
「わかった…でも、もし本当にそれしか方法がなかったら…」
「その時は、また一緒に考えよう」僕が優しく言った。
3人は互いを見つめ、静かに頷き合った。窓の外では、雪が静かに降り続いていた。
僕は千紗の決意を感じ取りながら、心の中で葛藤していた。僕には、この状況の重大さがよくわかる。しかし、だからこそ千紗の選択を阻止しなければならない。
(千紗さんを見守り、彼女の生をサポートするのが僕の役目だ。彼女の強い意志を無視することもできない…)
いっそ僕が、とも思ったが、それもまた、千紗を悲しませることになる。大城戸と同じ過ちを僕が犯すわけにもいかない。
千紗の犠牲を避けつつ、浩介を救う方法を見つけ出す。絶対に。
窓の外では、雪が静かに降り続けていた。その白い光景を見つめながら、僕は新たな解決策を模索する決意を胸に刻んだ。
4. 生命の重み
2月中旬、寒さが少しずつ和らぎ始めた頃、僕は研究室で量子コンピューティングの新しい理論について、深夜まで没頭していた。窓の外では、月明かりに照らされた雪景色が広がっている。
ふと、スマートフォンの画面が明るくなった。佳奈からのメッセージだった。
「将人くん、明日の昼休み、千紗ちゃんと屋上で話をするの。心配だから…」
僕は一瞬、躊躇した。千紗と佳奈の二人きりの会話。それは重要な意味を持つかもしれない。
「わかった。気をつけて。何かあったら連絡して」
返信を送った後、僕は窓の外を眺めていた。月光に照らされた雪の結晶が、儚げに輝いている。
翌日、昼休みになった。僕は研究室で一人、量子コンピューターのデータを分析しながら、千紗と佳奈の会話を想像していた。屋上での二人の姿が、頭の中で鮮明に浮かぶ。
(佳奈さん、千紗さんを説得できるだろうか)
時間が経つにつれ、僕の心配は大きくなっていった。千紗の決意の強さを知っている僕には、この会話がどのような結果になるか、予想がついていた。
昼休みが終わり、午後の授業が始まった。教室に戻ると、千紗と佳奈の様子が気になった。二人とも、何か思いつめたような表情をしている。
放課後、佳奈が僕に近づいてきた。
「将人くん、ちょっと話があるの」
僕は頷き、二人で静かな場所に移動した。
「千紗ちゃんと話してきたの」佳奈の声が震えていた。
「どうだった?」僕は静かに尋ねた。
佳奈は深呼吸をして、話し始めた。「千紗ちゃん、また言ってたの。こーちゃんを救うために、自分が…て」
僕は息を呑んだ。心配していた通りだった。
「でも、私は反対したの」佳奈が続けた。「生命って…かけがえのないものだよ。浩介くんも、きっとそんな犠牲は望まないと思う」
僕は静かに頷いた。「そうだね。僕たちの誰も、犠牲になるべきじゃない」
「でも、千紗ちゃんの気持ちもわかるの」佳奈の目に涙が光った。「だから、私…どうしたらいいかわからなくて」
僕は佳奈の肩に手を置いた。「佳奈さん、よく頑張ったね。千紗さんの気持ちを受け止めつつ、でも正しいことを伝えられた。それは本当に大切なことだよ」
佳奈は小さく頷いた。「将人くん、私たちで千紗ちゃんを止めようね。千紗ちゃんまでいなくなったら、私…」
「その通りだ。絶対4人で未来を迎えよう」
何だを流して感情的になっている佳奈に、僕は静かに答えた。
「誰も欠けることなく、幸せな未来をつかむんだ」
それこそが、大城戸の後悔であり、彼の願いの根幹にあるものだ。
その夜、僕は研究室で遅くまで作業を続けていた。千紗の決意と、佳奈の言葉。そして、自分の立場。全てが頭の中で渦を巻いていた。
僕は深く息を吐き、再び量子コンピューターのデータに目を向けた。必ず、千紗の犠牲なしで浩介を救う方法を見つけ出す。そう心に誓いながら、僕は研究に没頭した。
データの中に、今まで見逃していた微小な変化を発見する。それは新たな可能性を示唆しているのかもしれない。僕は眉間にしわを寄せ、さらに深く分析を進めた。
僕は静かに誓った。この難題を解決し、みんなの願った幸せな未来を実現すること。それこそが、僕が背負うべき使命なのだと。
5. 決断の葛藤
2月下旬、春の気配が少しずつ感じられ始めた頃、僕は研究施設に向かっていた。心の中では、千紗の決意をどう受け止めるべきか、激しい葛藤が渦巻いていた。
施設に入ると、すでに千紗が来ていた。彼女の表情には、何か強い決意が宿っているのが見て取れた。
「千紗さん、おはよう」僕は静かに挨拶した。
「おはよう、将人くん」千紗は少し疲れた様子で返事をした。
僕は彼女の表情を見て、心配そうに尋ねた。「何か悩んでいるの?」
千紗は深く息を吐き、ゆっくりと口を開いた。「将人くん、私…決心がついたの」
僕は真剣な表情で千紗を見つめた。「どんな決心?」
「私が…こーちゃんの代わりになる」千紗の声は小さかったが、決意に満ちていた。
僕の表情が一瞬凍りついた。「千紗さん、それは…」
「わかってる」千紗が僕の言葉を遮った。「でも、これしか方法がないなら…私はやるわ」
僕は深いため息をついた。
「千紗さん」僕は静かに、しかし強い口調で言った。「君の命は、決して軽いものじゃない。浩介くんだって、君にこんな選択をしてほしいとは思わないはずだ」
千紗の目に涙が浮かんだ。「でも…こーちゃんを助けられるなら…」
「そうやって誰かを犠牲にすることが、本当に正しいことなのか」僕は真剣な眼差しで千紗を見つめた。「それに、君がいなくなったら、今度は佳奈さんや僕が悲しむことになる」
千紗は黙ったまま、僕の言葉を聞いていた。
「千紗さん」僕が優しく続けた。「君の気持ちはわかる。でも、もう少し時間をかけて考えよう。他の方法がないか、もっと探してみよう」
千紗はゆっくりと頷いた。「わかった…でも、私の気持ちは変わらない」
僕は静かに千紗の肩に手を置いた。「君の気持ちは尊重する。でも、最後の最後まで、他の方法を探そう。約束してくれる?」
千紗は小さく頷いた。「うん…約束する」
二人は黙ったまま、窓の外を見つめた。施設の外では、雪解けの水が小さな流れとなって、春の訪れを告げていた。
僕の心の中では、大城戸の記憶と自分の意志が激しくぶつかり合っていた。千紗を守りたい。でも、彼女の意志も尊重したい。そして、浩介を救う方法も見つけたい。全てを叶えることはできないのか。
(きっと、まだ他の方法がある。僕が見つけ出さなければ)
この日以降、僕たちの研究はさらに熱を帯びていった。浩介を救う方法を見つけるため、そして千紗の犠牲を避けるため、僕は必死に新たな可能性を探り続けた。ほとんど泊まり込む形で研究施設で試していない可能性をシミュレートし、一人で大城戸の遺した理論と研究結果を読み漁った。
考えてみれば当たり前だ。世紀の大天才である大城戸将人でさえ、世界を変えるのに犠牲を避けられなかったのだ。その中で、誰の犠牲も伴わない方法を探るということは、彼を超えるということでもあるのだ。
(だけど…絶対に見つけてみせる)
そう心に誓いながら、僕は研究に没頭した。窓の外では、春の訪れを告げる風が、静かに吹き始めていた。
6. 明かされる秘密
3月上旬、桜のつぼみがほころび始めた頃、僕は研究施設で一人、量子シミュレーターのデータを分析していた。千紗が両親と重要な話し合いをするという連絡を受け、彼女の帰りを待っている状態だった。
窓の外では、春の風が静かに吹いていた。僕は思わずため息をついた。これまでの研究の成果と、まだ見つからない解決策への焦りが、胸の中で渦を巻いていた。
(なんとか、別の未来を...)
その時、携帯が鳴った。千紗からだった。
「将人くん、今から施設に行くわ。話したいことがあるの」
千紗の声には、何か重大な決意が感じられた。僕は胸の高鳴りを抑えながら返事をした。
「わかった。待ってるよ」
しばらくして、千紗が研究施設に到着した。彼女の表情には、複雑な感情が混ざっているようだった。
「千紗さん、どうしたの?」僕は心配そうに尋ねた。
千紗は深呼吸をして、ゆっくりと話し始めた。
「将人くん...私たち、本当の人間じゃないの」
僕は息を呑んだ。
「どういうこと?」僕は慎重に聞いた。
千紗は両親から聞いた話を詳しく説明し始めた。試験管ベビーとして生まれ、AIに育てられたこと。人類が直面していた問題を解決するための選択だったこと。そして、浩介も同じ状況だということ。
僕は静かに聞きながら、彼女の言葉を首肯し、そっと口を開いた。
「そうか...」僕はゆっくりと言葉を選んだ。「千紗さん、僕も...実は大城戸将人のクローンなんだ」
千紗は驚いた表情を浮かべた。「え?」
「大城戸も、かつて君のように大切な人を失った。そして...君と同じように、大切な人を救うために自分を犠牲にしたんだ」
千紗の目に涙が光った。「そんな...」
僕は続けた。「このプロジェクトは、君たちが幸せになるためにあるんだ。もし君にとっての幸せがそうであるなら...その気持ちを尊重したい。でも、僕としては絶対嫌だ。最後まで他の方法を探すことは諦めない」
千紗は黙ってうなずいた。彼女の目には、決意と迷いが混ざっているように見えた。
「将人くん...ありがとう。でも、私...」
「わかってる」僕は千紗の言葉を遮った。「でも、約束してくれ。最後の最後まで他の方法を探し続ける。自分のことを犠牲にするようなことは、もう、言わないでくれ」
千紗は感謝の笑顔を向けた。「ありがとう、将人くん。大丈夫、私も最後まで諦めないから」
大城戸のクローンだからこそ、この状況の重大さがよくわかる。しかし、だからこそ千紗の選択を阻止しなければならない。
窓の外では、桜のつぼみが少しずつ膨らみ始めていた。新しい季節の訪れと共に、僕たちの物語も新たな局面を迎えようとしていた。僕は静かに決意を固めた。
(必ず、みんなを救う方法を見つけ出す。それが、大城戸の遺志を受け継ぐ僕の使命だ)
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