第8話「救い(?)」
「一緒に入りましょうね?」
ナギサがうまく聞き取れなかったと思ったのか、シャーリーはニコニコの笑顔で再度誘ってきた。
見惚れてしまいそうなほどかわいらしくて美しい笑顔なのだが、今のナギサにはその笑顔が悪魔のようにしか見えなかった。
(詰んだ……どう答えても、生き残る道がない……)
誘いに頷けば、毎日シャーリーと一緒にお風呂に入らなければならない。
それは、男からすれば誰もが羨ましがる状況だろう。
しかしナギサは頷くわけにはいかない。
なんせ、男だとバレる確率がグンッと上がってしまう行為なのだから。
ましてや、一緒に入るとなれば脱衣所に向かうところから一緒になる可能性が高く、服を脱ぐところを見られれば一発アウトなので、誘いには乗れないのだ。
となれば、残された選択肢は二つ。
断るか、誘いに乗って約束を破るかだ。
前者は、シャーリーの
どれを選んでも、ナギサの今後に影響するだろう。
「えっと――」
――ナギサがどう答えるか迷っている時だった。
爆発音が聞こえてきたのは。
「「――っ!?」」
突如として聞こえてきた爆発音に、ナギサとシャーリーは一瞬身を固くし、その後お互いの顔を見合う。
「今のって……?」
「爆発音、ですね……。ごめんなさい、私行ってきます」
シャーリーはそう言いながら勢いよく立ち上がった。
それにより、彼女の顔を見ていたナギサの目線には、彼女の大切な部分が来てしまい――ナギサは、別の意味で固まってしまった。
「危険なので、ナギサちゃんは来ては駄目ですよ?」
爆発音のことで頭がいっぱいになっているのか、シャーリーはナギサの様子には気が付いてないようで、彼が付いてこないように優しい笑顔で言い、すぐに大浴場を出て行った。
残されたナギサは――
(助かったけど……今度こそバレたら終わりだ……)
――至近距離からシャーリーの大切な部分を見てしまい、男だとバレた時にもう言い逃れができないとナギサは悟った。
……いや、元々とっくに詰んではいるのだが。
「シャーリーさんが出ていったら、僕も行かないと……」
罪が積み重なっていくことに対して心が痛みながらも、ナギサは状況を頭の中で整理する。
現在脱衣所でシャーリーが着替えているので、今飛び出せば自ら男だと白状しにいくものだ。
しかし、このまま彼女含め学園の人たちに任せておくわけにもいかない。
普通に考えて爆発音が聞こえてくるはずがなく、組織がこの学園を狙っていると知っているナギサからすれば、奴らが仕掛けてきたと考えるのが当然。
となれば、放っておくわけにはいかないのだ。
「――よし、行こう……!」
シャーリーの気配が脱衣所からなくなったのを確認して、ナギサは脱衣所へと出る。
そしてタオルを使って高速で水気を拭き取っていき、髪は風魔法で乾かしながらすぐに着替え、騒ぎの場所――の逆側のほうへと向かった。
そこには――仮面を被り、黒い布で身体を隠す身長180cmほどの人影が、スヤスヤと眠る桃色髪の少女を抱きかかえて、窓から飛び出してきていた。
ナギサはその人影に向け、氷魔法を放つ。
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