第5話

海水が足首まで敷き詰められているこの不思議な部屋でサンゴちゃんは楽しそうに泳ぎながら僕に問いかけた。


「ここの海水って、外と繋がっているのよね、?」


彼女の口からは、明るくも儚さのある言葉がこぼれ落ちた。


「...?」


僕には彼女の狙いが分かり得ない。


「ふふっ。逃げ出さないわ。だって未来はきっと変わらないんだもの。」


彼女が二つ目のドーナツに手を伸ばしながら、いつも通りの声色でそう言った。

彼女は逃げ出したら捕まると思っているのだろうか?それともまた別の“未来“の話だろうか?


「それじゃあ、サンゴちゃんまた明日。」


彼女は目線だけを軽くこちらに向けた。


「.....。えぇ。」


足首まで浸かっている海水を踏みしめながら、僕はドアの方まで向かった。


「また、“明日“。」

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