童貞オタク君とヤリチンTSギャル

夏海ナギ

童貞オタク君とヤリチンTSギャル

「なあ及川、少し近くないか」

 及川と言われた金髪の女の子は、そう言い放った本人に対して不思議そうな顔をした。


 少し散らかった部屋。床にはペットボトルや漫画本などが散乱している。部屋もどこか埃っぽく、定期的に掃除していないのだろう。

 壁には二次元の女の子のイラストが飾ってある。

 その部屋の中、二人の男女はモニターに向かってテレビゲームに興じている。

 

「え、オタク君、別に近くないっしょ?」

「いや、絶対に近いって」


 オタク君は目で自分と及川の体を見やる。しかし実際に距離は1メートルほど離れている。どう見ても適正距離である。


「オタク君って、女の子と同じ空間にいたことないっしょ?だから近く感じるんじゃね?」

「・・・まず、僕のことをオタク君って呼ぶのをやめてくれよ」

「君の名前なんだっけ?」

「大谷拓也!名前くらい覚えておいてくれよ!同じクラスだろ!」


 及川はそれを言われても、この影の薄い男の名前を絶対に覚えられる気がしなかった。そもそもクラスにこんなやついたっけと、及川は思った。


「ああ、大谷くん、じゃあオタク君で合ってんじゃん」

「なんでよりにもよってその略し方なんだよ!普通にやだよ!」


 及川はオタク君の言葉を受け流し、テレビゲームの画面に集中する。

 それはいわゆる格ゲーであり、一対一で対戦するものであった。


「あ、やった。俺の勝ちー。オタク君ってゲームも弱いのな」

「え、あ、ちょ。人の話を聞いとけよ!」


 オタク君が怒るのをよそに、及川はコントローラーを置きふーっと深く息を吐いた。スマホを見ると5時10分である。

 そして通知欄には友達の女子からメッセージがズラッと表示される。及川は深くため息をつく。


「あー、返すのめんどいなー」

「何がだよ。つーか、早く帰ってくれよ」

「なんだよつれねーなー、せっかく友達のいないオタク君のために、美少女になった俺がプリント持ってきてやったのに」

 

オタク君はゴホゴホと咳をした。彼は今風邪を引いているのである。


「・・・だけど、中身はヤリチン野郎じゃねえか」


 オタク君の嫌味を及川は軽く受け流しながら、及川は女子たちにメッセージを返し始める。




TS風邪。それは最近日本で流行り始めた風邪である。症状として男が女の見た目になる。ただし、風邪が治るとすぐ男に戻れるらしい。




「あー今日は夏美ちゃんとヤろうかなー。でもなー今股間に何もねーしなー」

「お前そんな下品なことを口に出して言うなよ」

「えーいいじゃん別に。ここには男しかいねーんだし、あ、俺女だったわ」


 及川はそう言うとくつくつと笑い出す。及川はいわゆるヤリチンである。とにかく女とヤることが大好きで、毎日盛りあっているらしい。そのため及川のいる高校の女子生徒の大半は及川と肉体関係を持っているのだ。


「ああ、でも今日は葵ちゃんがいいなー。あの子のでかおっぱいに挟んでやると気持ちいいんだよなー」

 

 楽しそうに話す及川に、オタク君は軽蔑の表情を浮かべる。


「本当に下品だ。なんでこいつが女になってんだよ」


 オタク君は及川を見ながら呟く。


 及川の見た目は一言で言うとギャルである。ポニテの金髪に黒い肌。唇はピンクで、ぱっちりお目々である。

 胸も大きく、着ているセーラー服が張った感じになっており、へそが見えていた。

 オタク君はいつの間にか女の子の体を嘗め回すように見つめてしまっていた。その目つきは少しやらしいものであった。


「あのさあ、オタク君、一応俺見られてるの気づいてるからなー」

「・・・!」


 及川はスマホで女の子に返信をしながら何気なく言う。オタク君はびくっとなりすぐに及川の体から目をそらした。


「あはは、オタク君の反応おもろ」

「・・・うるさい」

 

 オタク君は不機嫌になってしまった。彼は完全に及川に対して背を向けてしまう。

 及川はその様子を見て、にやにやし始めた。


「オタク君、もしかして怒った?」

「別に怒ってないし」

「じゃあなんで背を向けてんの」

「そういう気分になっただけだし」

「そういう気分ってどういう気分?」

「・・・」


 及川がオタク君のことをからかっていると完全に黙ってしまった。二人だけの空間に重苦しい雰囲気が流れる。だが、それを作り出した及川は全く気にしていなかった。


「おーい、オタク君返事してくれよ」

「・・・うるさい、早く帰れ」

「なんでそんなつれないこと言うんだよー」

「・・・」


 オタク君は完全に黙ってしまった。もう返事してくれそうにない。及川は一瞬こまったような顔をしたものの、あることをしてやろうと思いついて、口角が一瞬吊り上がった。


「なーあ、オタク君、そんなに俺のこと嫌いか?」

 

 唐突に及川はオタク君の耳元でささやきだした。それは甘い声だった。

オタク君の体が一瞬びくっと跳ね上がる。


「及川、やめろよ」

「なんでだよ、俺、お前のこと結構好きなのに・・・」

「はあ?名前すら覚えられないやつが何言ってんだよ」

「本当だって、俺さオタク君のこと結構面白いやつだと思ってんだぜ」

「何をいきなり・・・!」

 

 その時、オタク君は背中にやわらかいものが当てられているのを感じた。及川は自分のおっぱいをオタク君の背中に当て始めたのである。


「ちょ、及川、なんのつもりだよ」

「なんのつもりだって?オタク君。ちゃんと言ってくれねーとわからねーよ」

「や、やめろって」

「ねーえ、オタク君。どうしてそんなに顔真っ赤なんだい?」

 

 ふーっとオタク君の耳元に息を吹きかける。オタク君の耳は真っ赤である。


「俺、女になってさ、1つ気づいたことがあってさ。男に犯されてみたいんだよね」

「はあ、何を言って」

「ずっと女とばっかしヤッててさ、最近退屈してたんだよ。それで思ったんだ。ヤられる側になったらどんなに気持ちいいんだろうってさ」

「それって・・・!」


 オタク君の心臓が爆発しそうなほどに鼓動を早める。今まで体験したことのない高まりにオタク君は体がおかしくなりそうだった。


「なあ、もしかしてお前期待してんじゃないの?ここもこんなんだし」


 すりすりと、オタク君の股間部分をさすり始めた。彼のそこははちきれんほどに隆起している。


「ああ、だめだ、及川・・・やめてくれ・・・」

「なあ、オタク君。どうしてほしい?」

「及川、ダメだって俺たち、男同士だ・・・」

「えーどう見たって男女じゃん」

 

 オタク君は理性が飛びそうだった。女性特有のいい匂いが頭の中を支配し、背中にはどれだけ願っても触ることがかなわないおっぱいが押し付けられている。今まで女の子と縁がないオタク君にとっては刺激が強すぎるのである。


「及川、俺・・・もう」

「んー、どうしてほしいか言ってみ」

「俺、俺・・・!」

 

 オタク君が及川へ振り向いて、唇を近づけようとしたその時。


「はい、おしまーい!」


 及川がオタク君から体を離し、いきなりそう言った。


「な、え・・・?」

「オタク君、やっぱ俺のこと好きなんじゃん。どう考えても本気にしてたっしょ」


 急なテンションの切り替えにオタク君は呆気にとられてしまう。


「にしてもさっきのよかったな、なんだっけ。だめだ及川!俺たち男同士だから!って!ドラマでも聞いたことねーよ!マジ受けんだけど!」


 腹を抱えて笑い出す及川。オタク君はその様子を見て、自分がからかわれていたことを思い出し怒りに震える。


「及川、お前・・・!」

「なんだよ、勝手に期待したのはそっちだろー!いいじゃん、オタク君は女の子とこんな雰囲気になるの今後ないだろうし、むしろ感謝してほしいけどなー」

「あんなことしといてよく言えるな・・・!」


 オタク君は完全に怒りに震え始めていた。一瞬本気にしそうになった自分を殴ってやりたいとまで思った。


「にしてもオタク君も男なんだな。普段、アニメとかゲームの女子にしか欲情しないんだと思ってたわ。やっぱお前面白いな」

「・・・もう帰ってくれ!」

「にしてもさっきは何してほしかったんだ?そういえば聞きそびれたぜ」


 及川にそれを言われたオタク君は自分が言おうとしたことを思い出した時、とんでもない恥ずかしさに襲われた。


「・・・別に何でもない!」

「そうか?ちょっとからかいすぎたお詫びに、多少のお願いなら聞いてやろうと思ったんだけどな」


 オタク君はその言葉に一瞬ぴくっとなる。


「どうせ嘘のくせに」

「いやいや、嘘じゃないって。一応オタク君には申し訳ないと思ってんだからさ」

「・・・本当か」

「本当本当」

「・・・」


 オタク君は真剣な顔になった。腕を口に当て、何かを考えている。及川は、どうせこいつ俺のおっぱいもみたいんだろうなー、とか考えながらオタク君のことを見つめていた。


「オタク君、そんなに真剣に考えてどうしたの?」

「本当にお願い聞いてくれるんだよな?」


 念を押すように聞いてくるオタク君。及川はその様子に少し恐怖を覚えた。


「ちょ、言っとくけどオタク君、俺そんな過激なプレイは嫌だからな。別におっぱい触らせるぐらいならいいけどさ」

「・・・チューしたい」

「え?」


 オタク君の声が小さくて及川は聞き返す。


「・・・俺、及川とベロチューしたい!」


 オタク君は恥ずかしそうに叫ぶ。及川は一瞬目を丸くした。


「ははは!オタク君、それマジ!?めっちゃ面白いんですけど!」

 

 及川はまたも腹を抱えて笑い出した。


「おっぱい触らせろとか見せろってのは想像してたけどさ、まさかベロチューって、オタク君も結構やってんな!」

 及川はオタク君のことを本当に面白いやつだと思い始めた。


「いやー、まさかベロチューだなんてー、普通段階踏んでもできるもんじゃねえのに、マジ面白え!」

「・・・やっぱからかってるだけじゃないか!」

「いやー、ごめんごめん。まさか君からベロチューって言葉が飛び出すなんてなー」


 及川はまだツボに入っているのかヒーヒー言っている。


「お前に言ったの間違いだった!もういいから帰ってくれ!」

「いいよ」

「え」

 

 及川は何の気なしに言う。


「だからベロチューしてもいいって言ってんの」


 オタク君は及川の衝撃的な言葉に固まる。


「・・・本当か、及川」

「ただし、俺にさっきの格ゲーで一回でも勝てたらだけどな」

「う・・・」

  

 そう来たか、オタク君は苦虫を噛み潰したような表情になる。


「そんなの無理だって」

「分かんないじゃん、何かの間違いで俺が負けるかもしれないだろ?」


 先程まで2人で格ゲーをしていたが、オタク君は1回も勝てなかったのだ。そのため彼は弱気になっていた。

 しかし、オタク君は考えた。夢にまで見た女子とのベロチューができるチャンスなのだ。これを逃したら、もう機会はないかもしれない。

 オタク君の中では熱い何かが燃え上がっていた。


「どーよ、オタク君、俺みたいな激エロギャルとエッチなことをするチャンスだぞー」


 くねくねと及川は体を動かし、大きな胸をさらに強調した。


 オタク君はそれを見て1つの覚悟をきめた。


「よし、やる」

「そうこなくっちゃ」


 夢にまで見た、クラスの女子(?)とベロチューをするために。



・・・数十分後


「はーい、また俺の勝ちー」

「うう、やっぱ勝てないよ・・・」


 喜ぶ及川の横でオタク君は肩をガックシ落とす。結局、対戦はオタク君の全戦全敗であった。


「オタク君、本当によえーなー」

「くそう、これだから陽キャはなんでもできて嫌いだ・・・」


 恨めしそうな顔で及川を見るオタク君。彼の先程までの気合いはどこに行ったのか、完全に心が折れていた。 


「ああ、俺のベロチューが、ベロチューが・・・」

「オタク君の素ってそんな感じなんだな」


 及川はその様子を見て思わず苦笑する。さっきまでの突っ張った態度は完全にどこかへ行き、及川の目の前にいるのは同級生に欲情するエロ男子である。

 ブルル。及川のスマホが震えた。見るとバイト先からの連絡が来ていた、


「やべ、そろそらバイト行かなきゃ。そんじゃな、オタク君。今日は結構楽しかったよ」

「う、うん・・・」 

 

 オタク君は泣きそうな声色でそう言った。それを見た及川は少し気の毒に思った。


「おいおい、死ぬわけじゃないのに深刻すぎでしょ」

「だって、だってよお、このチャンス逃したら俺は一生女の子とベロチューできねえんだあ・・・」

「大丈夫だって、きっとこの先オタク君にベロチューさせてくれる女の子現れるって・・・多分」


 及川が慰めてもオタク君はメソメソしている。なんだか本当に可哀想になってきた。


 (しょーがねーなー)


 及川は心の中でつぶやくと、オタク君の顔に自分の顔を近づける。


「な、なんだよ」

「ちょっとだけだからな」


 そう言って及川は、半開きのオタク君の口へ自分の舌を突っ込んだ。


「んぶ!?」

「れろ♡、んちゅ♡、んあ♡」

 

 オタク君の舌に自分の舌を絡ませる。


「んちゅ♡れろお♡ほーらオタク君お前も舌絡ませろよお」


 心なしかとろけたような表情の及川を見て、オタク君は自分からも舌を絡ませに行く。


「んぶ、んちゅ、れろ」

「あはあ♡オタク君、それやべーな♡」


2人は熱中してお互いの舌を絡ませ続ける。部屋の中には唾液が絡まり合う音だけがしばらく響いていた。


「ぷはーあ♡オタク君、どうだった、現役JKのベロチューは♡」

「すごくいい、いいよお・・・」

 

どれくらいしただろうか。二人の顔をとろけきっている。これ以上やるとオタク君は本当に達しそうになっていた。


「やべーな♡ベロチューって♡思わず癖になりそう♡」


 及川はあまりの気持ちよさにベロチューの虜になりそうだった。

 ブーブー。またも及川のスマホが鳴る。今度はバイト先からの電話だっっ。


「やば、流石にそろそろ行かなきゃ怒られる!」


 そう言って及川はひらひらと手を振り、部屋の扉の前へと向かう。


「お、及川あ♡」


 オタク君の呼ぶ声に振り向くと、彼はまだ物欲しそうにしていた。


「じゃーな♡オタク君♡しばらくこれをおかずにヌキヌキしとけよ♡」

 

 及川はそう言って部屋を出て行った。


 オタク君は一人取り残され、しばらくボーっとしていた。そして、ズボンを脱ぎ始め、一人で致そうとした。






 (はーあ、さっきのマジやばかった♡)


 及川はバイト先へと走りながら先程の行為を思い出す。


 (ベロチューってあんなに気持ちいいのか)


 何故か下半身がキュンキュンするのを感じた。


 (また、オタク君とああいうことヤりてえな・・・)


 及川は次はどうやってオタク君の家に行く口実をつけようか考えるのであった。


 






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