第4話

「…で?」


「それで、あの、あと一歩のところで焼きそばパンが売切れてしまいまして…」


「ふーん…」




走って、走って、運動音痴の私なりに猛ダッシュで教室に戻ってきました。


私が恐る恐る自白すれば、隣に座る白咲くんの顔には青筋が立ち始めます。


具が焼きそばからコロッケに変わったことに、酷くご立腹しているようです。




「今日は焼きそばの口だったのに、どうしてくれるわけ?」


「す、すみませ…」


「この愚図、ノロマ、役立たず」


「ううっ」



悪口三連発はさすがにこたえますが、そんなこと知るかよとでも言うように怒り心頭の様子でコーヒー牛乳のパックにストローを刺した白咲くんは一気にズゴーーーッと飲み干しました。

相当イラついているのが見て取れます。




「白咲くぅん、一緒にランチしよー」


「いいよ」



けれど不思議なことに、白咲くんが毒を吐くのは何故か私に対してだけです。他の人の前では別人のように優しくなります。それこそ、優しい白咲くんは本当に真っ白なお花みたい。




「おい、黒美」


「は、はい…」


「今日、待ってるから来いよ」


「……」


「返事」


「は、はいっ!」




真っ白なお花とは程遠い、鋭い目つきを向けられると拒否することは不可能でした。


実は…白咲くんに振り回されるのは、学校内だけではないのです。

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